初の共同戦線
レティシアは小さくなりつつも不安そうに続ける。
「そもそもこの力がバレたことだって、これまでありませんでしたし……あの人たち、いったい何なんでしょう」
「じゃあ、心当たりがないんだ」
「はい……」
「ふん。所属が分からずとも、万象紋をくらっても動けるカラクリは読める」
ダリオは辟易としたように鼻を鳴らす。
「あいつらも理に反する力を身につけた者だ。おそらく裏社会に通じて……おっと?」
「へっ、きゃあ!?」
ダリオがひょいっと軽く後ろに跳んだその瞬間、屋根に街灯が突き刺さった。
悲鳴を上げるレティシアを抱き上げて、シオンもそこから飛び降りる。大通りに降り立てば、あのゴルディスという男が立っていた。
整備された歩道から軽々と街灯を引っこ抜き、槍のように振り回しながら獰猛に笑う。
「はっ、まだお仲間がいたとは。しかもそこのガキ同様、万象紋の影響外とは……おもしろいじゃねえか」
「噂をすれば、か。もうひとりの方もやる気のようだな」
ダリオはわずかに眉をひそめて、大通りの向こうを睨む。
あたりに満ちていたはずの深い静寂が、微少な足音の連続によって上書きされていく。
やがてその方角に大勢の人影が見えてきて――ダリオはシオンの肩をばしっと叩き、ゴルディスを指し示す。
「よし、シオン。これも修行の一環だ。その娘を守り、あっちのゴツい方を倒せ」
「ま、守るって……! ダメです、おふたりは逃げてください! あの人たちの狙いは私だけのはずで……!」
「そうは言ってもなあ。汝、ほとんど戦闘能力は皆無だろ。すべての神紋の力を有しているとはいえ、まともに使いこなせるのは白神紋の力だけ。万象紋自体もきちんと制御できずにいる。違うか?」
「なっ……どうしてそれを……!?」
「経験に基づく勘だな。というわけだ、シオン。いけるな?」
「もちろんですよ、師匠」
慌てふためくレティシアをよそに、シオンもまたあっさりと返す。しかし気がかりがあって、少し声を潜めて師に問うた。
「師匠はもう片方をやるおつもりですか? その体、どれだけ戦えるんです? 気配から察するに絶好調ってわけでもないですよね」
「ふん、お見通しか。なあに、力は全盛期の一億分の一といったところか。羽虫を払うには十分だろう」
「……分かりました。無茶だけはしないでくださいね」
「かかか、我を誰と心得る。汝の師だぞ、心配は無用だ」
「いや、師匠の心配っていうより、街とか建物の心配っていうか……まあいいか」
からからと笑うダリオに、シオンは苦笑するしかない。
レティシアの力、師の正体、謎の敵――様々な事態が起きて混乱する一方ではあるものの、自分のやるべきことははっきりしていた。レティシアを抱えたまま、片手で拳を作ってダリオに向ける。
「それじゃあやりますか、師匠! はじめての共同戦線ですね」
「かはは、良き響きだな! 終わったら軽く一杯付き合えよな!」
「ジュースで良ければよろこんで。それじゃ!」
「っ、待ちやがれ!」
師弟は拳を打ちつけ合うなり逆方向へと駆け出して、ゴルディスがシオンの方を追いかけた。
続きは明日更新します。
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