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完全無欠の美少女英雄

【まさかこの娘、あの力を有しているのか……っ!?】


 ダリオが大きく息をのむ。

 それとほぼ同時に、レティシアの体を覆っていた神紋は何事もなかったかのようにすっと消えてしまう。しかし彼女は意識を失ってしまって――。


「レティシア! しっかりして! レティシア!?」


 倒れたレティシアを抱き留めて揺さぶるものの、目を覚ます気配はない。

 それでもシオンは彼女の名前を呼び続けた。その背後では――。


「くっ、はは……話に聞いちゃいたが、やっぱりキツいもんだなあ……処置を受けてなきゃ、俺らも目覚めなかっただろうな」

「ああ。だが……どうやら当たりだったようだ」


 ゴルディスとテルギアのふたりが、ゆっくり立ち上がろうとしていた。

 他の面々や通行人たちは依然として眠り続けている。しかし、そんなことはシオンにはどうでもよかった。


「師匠! レティシアが大変です……! どうしたらいいんですか!?」

【……うろたえるな。力を使って疲れただけだろう。じきに目を覚ますはずだ】

「っ、師匠は何かご存じなんですか!? いったい今のは何なんです!? レティシアは大丈夫なんですか!」

【ええい、落ち着け! 命に別状はないというに!】


 うろたえるシオンに、ダリオが一喝を飛ばす。

 そんな様子を眺めていたゴルディスたちは怪訝そうに顔を見合わせた。


「なんだ、あいつ。いったい誰としゃべってるんだ……?」

「わからん。だが、仕掛けるなら……今だろう」


 テルギアが右手をかざすと、広場に倒れていた全員が一斉に立ち上がる。それは彼らの手下たちばかりでなく、一般市民も大勢混じっていて――。


【ちっ……無関係の人間を巻き込むのもお構いなしか。かくなる上は……シオン! 剣をかざせ! 早く!】

「は、はい!」


 逼迫した声に突き動かされるままに、シオンは剣を頭上にかざす。

 ダリオは素早く呪文を紡いだ。それはシオンの全く知らない言語であり、一音一音発するごとに魔剣がまばゆい光を放ち始める。

 ゴルディスたちがどよめくが、そちらが仕掛ける前にダリオの呪文が完成したようだった。


【冥府の王よ! また我にボコされたくなければ……今ふたたび完全無欠の玉体を与えん!】

「うわっ!?」


 光が弾け、あらゆる景色を塗りつぶす。

 ゴルディスたちが驚愕の声を上げ、シオンもまたレティシアを抱きしめて光をやり過ごそうとするのだが――誰かにぐいっと襟首を捕まれたかと思えば、レティシアともども高々と宙を舞っていた。


「へっ、なに――ぎゃあ!?」


 そのまま、どこかの建物の屋根にぽいっと投げ出されて悲鳴を上げてしまう。

 シオンは腰を強く打ってしまったが、しっかり抱きしめていたおかげでレティシアは無事である。


 そこは広場からそれなりに離れた場所だった。

 三階建ての屋根はとても高く、地表が遠くて月が近い。そこから街を見下ろせば、一帯を濃い霧が覆っているのが確認できた。あたりは不気味なほどに静まりかえっている。


 シオンは打ち据えた腰をさすりつつ首をかしげる。


「いったた……今の、師匠の仕業ですか……?」

「当然だろう。他に誰がいるというのだ」

「……うん?」


 いつものように横柄に答えた声が、いつもとかなり違って聞こえた。

 シオンはゆっくりと背後を振り返る。

 すると、そこには見知らぬ人物が立っていた。

 

「まったく。戦場で取り乱すでないわ。汝がいくら力を付けたとはいえ、油断は命取りになるぞ。肝に銘じるがいい」


 軽やかな甘い声で苦言をこぼし、肩をすくめる人物。

 それはシオンが見たこともないような、非常に美しい少女だった。


 銀糸と見まがうような白い髪を腰まで伸ばし、大きなリボンを頭頂に飾っている。

 華奢な体にまとうのはやけに露出の多い出で立ちで、スタイルの良さがとても際立っている。胸はかなり大きくて、顔立ちもたいへんかわいらしい。

 黙ってにっこりと微笑めば、たいていの男は手玉に取れそうだが――残念なことに、人形のように整った顔に浮かんでいるのは百年の恋も一瞬で冷めそうな底意地の悪いニヤニヤ笑いだ。


 シオンは目を瞬かせるしかない。


「えっと……どちら様ですか?」

「くくく、ずいぶんな間抜け面だな。術の完成を急いだ甲斐があったというものよ」


 美少女は粘着質にくつくつと笑う。

 その笑い方には嫌というほどに覚えがあったものの、シオンはその可能性から目を背けるしかなかった。

 しかし美少女は残酷にも、胸に手を当ててやけに堂々と名乗ってみせる。


「よくその目に焼き付けるがいい、シオン! 我が真名はダンダリオン・カンパネラ。最強にして完全無欠の美少女英雄……そして、汝の師であるぞ!」

「お、お……女の子ぉおおおおおおおお!?」

「うむ。気安く、ダリオちゃんとでも呼ぶがいい。呼んだら呼んだでぶっ飛ばすがな! わはははは!」


 ばちんとウィンクして、ダリオはからからといつもと同じ調子で笑ってみせた。

続きは明日更新します。

ようやく新ヒロイン登場です。まあ実際のところずっと出てたわけですが。

明日からは次章突入です。応援くださるのであれば、ブクマや評価をポチッとよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり、前の話からして女性だったのか! 先入観的に私も男性だと思ってた。
[一言] >【冥府の王よ! また我にボコされたくなければ……今ふたたび完全無欠の玉体を与えん!】 冥府の王もダリオさんに… 冥府の王「お願いですからこちらに来ないでください(涙)」
[一言] 師匠が女だから女とHなことして子供が出来るわけないって言ってたのかすごい伏線だな
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