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因縁の決着

本日ラスト!

 ダリオと戦っていた時は、ずっと高揚感を覚えていた。

 この戦いが永遠に続けばいいとさえ思った。


 だがしかし……ラギとの試合はその対極だった。

 あまりに退屈で、攻撃する度にやりすぎないかとヒヤヒヤする。相手に一撃与えても、嬉しくともなんともなかった。


「どうも、俺は強い人相手に必死で食らいつく方が性に合ってるみたいで……うん?」


 そこでふと、シオンは違和感に気付いてあたりを見回す。


 絶句。

 その場の空気を言い表すのに、それ以外の言葉は見つからなかった。


 ラギやフレイはもちろんのこと、レティシアなどの試合を見守っていたギャラリー達が、あんぐりと口を開けて固まっていたのだ。

 ゆるい風がその場を通り過ぎ、シオンはハッとする。


「ひょっとして今の……口に出しちゃってた?」

「て、めえ……!!」


 言葉を失っていたラギの顔が、あっという間に真っ赤に染まっていく。

 その目に宿るのはどす黒い憎悪の炎だ。

 彼の神紋はまばゆいほどの光を放ち始め、その身から火柱と見まがうほどの炎が吹き出していく。

 わかりやすくブチギレていた。


【ぷっ……だーっはっはっはっはっは! 因縁の相手をつかまえて、弱い者いじめときたか……! やはり汝は我の遺志を継ぐ者よなあ! そのキレッキレの煽りセンス、我も見習うとしよう! ぶはははは、ごほっ、がはごほげはっ……!】


 ダリオはよほどツボに入ったのか、笑いすぎてむせているし。

 盛大なその笑い声に、シオンは頬をかく。


「いや、別に煽ったつもりはないんですけど……結果的にそうなりましたね」

【くっ、くくく……ほれほれ、相手はやる気だ。汝もちょっとは本気を出してみるがよい】

「ダメですって。適当に終わらせますよ」


 たきつけてくるダリオに、シオンはきっぱりと言う。

 これ以上の試合は無意味だ。力の使い方もわかったところだし、この辺りが潮時だった。


 そう、思ったところ――。


「なにを……ぶつくさ言ってやがる!!」

「きゃあっ!?」

「っ……!」


 ラギの怒号とともに巨大な火球がいくつも放たれた。

 それは無差別にあたりへと襲いかかる。

 そのうちのひとつがレティシアの頭上へと降り注ぎ、彼女が身を縮めたその瞬間――。


 ザンッッッ!


 一陣の風があたりを薙ぎ払い、紅蓮の炎は千々に千切れて霧散した。他の火の玉も同様だ。すべて弾け飛ぶようにして消えてしまう。


「なっ……! どうし――!?」

「ダメだよ、ラギ」


 うろたえるラギへ、シオンは静かな声を向ける。


「それはダメだ。無関係の人を巻き込むのは、良くない」


 冷ややかなセリフと合わせて向けるのは、すでに抜き放った魔剣。

 シオンは一瞬でラギの懐に潜り込んでいた。


「ひっ……!?」


 ラギの顔が恐怖に歪む。

 それもそのはずだろう。きっと彼の目にはシオンの動きがまるで捉えられず、一瞬で目の前に現れたように映ったはずだ。


 それで彼は悟ったのだろう。

 この戦いの勝敗と――真の強者はいったい誰なのか。


 もはや彼の目から嘲りは完全に消え失せた。かわりにそこに浮かぶのは、純然たる恐怖の色。


「く、来るなああああああああ――ガッ!?」


 ざんっ……!


 ラギが吠えると同時、燃え盛る炎が壁となって立ちはだかる。

 だがしかしシオンはその壁ごと、彼を一太刀の元に斬り捨てた。

 短い悲鳴を上げてラギが地に倒れる。その瞬間に彼がまとっていた炎もぴたりと収まって、あたりは一気に静まりかえった。


「……ありがとう、ラギ。チュートリアルにはまずまずの相手だったよ」


 そんな彼を見下ろして、シオンは剣を鞘へと収める。

 ふう、とひと息ついてから――ハッとしてフレイを振り返った。


「あ、大丈夫です。峰打ちです。ちょっと肋骨が何本か折れてるかとは思いますけど……命に別状はないはずです」

「は…………あ、ああ、うむ……そうか……ちなみに、今の火球を防いだのもおまえか?」

「はい。レティシアが危ないと思って」


 シオンが右手をかざすと、虚空にいくつもの氷塊が現れる。

 こぶし大のそれらはシオンが軽く手を振るだけで勢いよく打ち出され、そばの木に大穴を穿った。


「こんな感じで、氷の魔法をぶつけて相殺しました」

「そうか……剣だけでなく魔法も使えるのか…………」


 フレイは顔を覆い、大きなため息をこぼす。

 そうして咳払いしたあと、淡々と告げた。


「ひとまず……勝者、シオン。誰かギルドに行って、治療のできる職員を呼んできてくれ」

「すみません、お手数おかけします」


 ぺこりと頭を下げたシオンに、ギャラリー達は歓声も野次も上げなかった。

 ただ全員が全員あんぐりと口を開けて固まったまま、予想外の勝者の姿をその目に焼き付けたという。


【くくく……さすがは我が弟子。胸のすくような勝利であったぞ!】


 ダリオの賞賛の言葉が、青空のもと高らかに響いたが――それはシオンの耳にしか届かなかった。

これにてチュートリアルは終了です。

明日も二回ほど更新します。お楽しみいただければ嬉しいです。


たくさんのブクマや評価での応援、まことにありがとうございます!

今後もこの話は続いていきます。凸凹師弟コンビの旅路を楽しんでいただければ幸いです。


この話が少しでも『面白い!』『続きが気になる!』と思っていただけたのでしたら、引き続きブクマや評価をよろしくお願いいたします。


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[良い点] あぁ...優しいシオンくんが...(性格の)悪い師匠に影響されて天然の煽り技を習得してる...そして剣なのに何でむせてるの?師匠は。気管どころか肉体すらないでしょ...
[良い点] 普通に面白い [気になる点] 女の子の出番がちょっと少なめかな。 [一言] もうちょいエッチっぽいシーンもあったら良いかも。
[一言] 面白かったです! とてもすっきりしまいた!今後の展開も期待します!!
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