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決闘開始

本日はあと三回更新します。

 こうしてシオンはラギと決闘を行うこととなった。


 場所はギルドの裏にある広場だ。

 怪我をしてもギルド職員がすぐに治療(有料)してくれるため、そうした用途に利用する者が多い。そして、その戦いは他の冒険者たちにとって格好の酒の肴となる。


 ギルド内で注目を集めたおかげか、このときも多くの冒険者が見物に来ていた。

 だが、彼らがシオンに向けるのは、呆れとも嘲りともつかない苦笑ばかりだ。

 

「マジでやるのかよ……あいつ、半年前にうちを追い出された無神紋のシオンだろ」

「新手の自殺だよなあ。しかも相手はラギときたし」

「何秒持つか見物だねえ」

 

 これまで数々の冒険者パーティから追放されてきたため、シオンが神紋を持たないことはこの地方のギルドに属する者なら誰もが知っていた。

 それがルーキー冒険者の有望株、ラギに勝負を挑むなどさぞかし噴飯ものだろう。


「ラギくーん! 弱っちいシオンなんて思いっきりボコボコにしちゃってよー!」


 かつてのパーティメンバーの女子までも、ニヤニヤ笑って見守るばかり。

 ほとんどの者が、シオンの無様な敗北を確信していた。


「それでは私が審判を引き受けよう。だが、その前に……」


 広場中央。向かい合うシオンとラギに、立会人となったフレイが声をかける。


「本当に構わないんだな、シオン」

「はい。もちろんです」

「……そうか」


 シオンがうなずくと、フレイの眉根にしわが寄った。


 本心では決闘を思い直させたいところだが、支部長としての立場があるため一個人に肩入れすることは好ましくない……そんな葛藤が手に取るようにわかった。

 日ごろ世話になっている彼を心配させることに、シオンは胸が痛んだ。


 しかし、フレイはふと思い出したとばかりに指を鳴らす。


「ふむ……《ジャッジ》」

「は、はい?」


 先ほど何度も使って、調子が悪いと言っていた鑑定魔法だ。

 光を帯びた双眸でじーっとシオンを見つめて、フレイは神妙な面持ちで顎を撫でる。


「やはり結果は変わらない、か……まあ、この勝負でハッキリするだろう」

「な、なんですか?」

「こちらの話だ。それより、ラギも勝負に異論はないな」

「当たり前だ。いつでも始めてもらってかまわねえぜ、フレイさん」


 ラギは唇を舐めて冷笑を浮かべる。


「俺は弱い者いじめが大好きなんでねえ。これだけ多くの面前で無能を痛めつけられるなんて、またとない機会だ」

「……口を慎め。公式の試合だぞ」

「おっと失礼。俺ってば正直者でしてね」


 せせら笑うラギに、フレイは顔をしかめてみせた。

 その背後、ずっと向こうの観客の中には祈るように十指を組んだレティシアの姿がある。

 相変わらずその顔色は悪いままだが、シオンの言葉を守るため立ち会うことを決めたようだった。


 そんな彼女へ向けて、シオンは硬い面持ちでうなずいてみせる。


(大丈夫。あれだけ修行したんだ。必ず勝ってみせる……!)


 そうしてフレイがゆっくりと距離を取って――戦いの幕が切って落とされた。


「それでは……始め!」

「死ねえっ!」

「っ……!」


 案の定、ラギが素早く距離を詰めた。

 繰り出すのは首元を狙った鋭い刺突だ。

 太い血管を少しでもかすめれば致命傷となる。


 しかしシオンがとっさに半歩身を引いたため、ギリギリのところで回避できた。剣を翻して、ラギはなおも踏み込んでくる。

 

「ちっ、運のいい奴め……だが、いつまで逃げ続けられるかねえ!」


 矢継ぎ早に繰り出されるのはどれも急所を狙った一撃だ。

 一切の躊躇がないそれらの猛攻を、シオンはどれも紙一重で回避していく。

 だが、それだけだ。剣を抜くこともない。


 それを見ていたダリオから、叱咤するような声が飛ぶ。

 

【どうした、シオン! なぜ反撃に出ない!】

(お、おかしいんです! 師匠!)


 シオンはごくりと喉を震わせる。

 ラギに勝ちたいという思いに嘘はない。闘志も本物だ。


 だがしかし、いざ試合が始まってみて……予想外の現象がシオンの身に降りかかっていた。


(ラギの動きが……止まって見えるんです!)

【……はあ?】

本日はあと三回更新予定。


【さめからのお願い】

現在、ハイファンタジーのランキングに入っております!

まだまだ盛り上げていきますので、この話が少しでも『面白い!』『続きが気になる!』と思っていただけたのでしたら、ブクマや評価をよろしくお願いいたします。


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