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堂々たる宣戦布告

本日ラストの更新です。本日は三本更新しております。

(えっ、なんでだ? 軽く振り払っただけなのに……?)


 事態が飲み込めず、シオンは自分の手をじっと見つめる。


 力なんて全く込めなかったし、相手を刺激しないように、ちょっと加減したくらいだ。

 それなのにラギは十数メートルもの距離を吹っ飛んだ。

 まるで――物理法則がその瞬間だけ狂ってしまったかのように。


 ぽかんとするシオンだが、周囲の喧噪はより一層激しくなる。

 ラギが倒れたテーブルを蹴り飛ばし、よろよろと立ち上がったからだ。

 ギラつく目でシオンをしかと見据え、腰の剣を抜き放つ。


「てめえ……よくもやりやがったな!?」

「何の騒ぎだ!」


 そのまま駆け出そうとするラギに向けて、怒声が飛ぶ。

 職員カウンターから現れるのはフレイである。

 いかにラギとはいえギルド支部長に楯突く度胸はないのか、ぐっと息を詰まらせて足を止める。そんなラギへ、フレイは淡々と告げた。


「ラギ。おまえも知っての通り、ギルド内での私闘は禁じられている。やるなら外でやれ」

「ちっ……だったらシオン! 表に出ろ! おまえが仕掛けた喧嘩だぞ!」

「なに……? まさか、相手はシオンなのか」

「は、はい」


 眉をひそめるフレイに、シオンはぎこちなく応えてみせた。

 自覚はないが、どうやら先に手を出してしまった形になるようだ。


(これまでデタラメな師匠とばっかり戦ってきたから、力加減がバカになってるのか……? いや、そもそも俺ってどれくらい強くなったんだ?)


 ゴブリンには逃げられてしまったし、ステータスは見てもらえないまま。

 具体的な実力は依然として謎に包まれている。


(待てよ……これはチャンスなんじゃないか?)


 シオンはふと考えこむ。


「フレイさん、たしかギルドって……決闘の立会人も請け負っていますよね?」

「たしかに仕事の内だが……それがどうした?」


 ギルドでは日々揉め事が多い。その白黒を付ける方法は様々だ。


 金で解決する者もいれば、裁判に持って行く者もいる。

 しかしもっとも多いのは、決闘による勝負の付け方だろう。ギルド職員立ち会いのもと行われる決闘は、冒険者たちにとって法より重いものとなる。


 これまでのシオンにとっては縁遠い話だった。

 だがしかし、今はまさにそれが必要な時だ。


「ラギ。勝負しよう。ギルド職員立ち会いの、公式な試合だ」

「……ああ?」


 自分の力を確かめ、そしてレティシアを救う。

 そのためには……ラギを真っ向から打ち破る。これしかない。


「俺が勝ったらレティシアを諦めてもらう。俺が負けたら……そうだな、おまえの奴隷にでもなんでもなる。どうだ?」

「シオンくん!?」

「待て、シオン。無茶はよせ」


 レティシアの悲鳴が上がり、フレイもまたうろたえる。

 周囲で見守っていた者達も、話がおかしな方向に進み始めたことを察したのか怪訝な顔を見合わせた。

 一方、ラギは顔をしかめて悪態をつく。

 

「はあ? 無能のてめえなんざ奴隷にしたって何の役にも……いや」


 ふいにその目がすがめられる。

 ラギの視線は、シオンの腰に下がる魔剣に注がれていた。


「おまえ、その剣どうした。ずいぶんな年代物のようだがよ」

「これは……《終わりの洞》で拾ったんだ」

「ふうん、いいじゃねえか」


 ラギは歪んだ笑みを浮かべて、高圧的に告げた。


「俺が勝ったらそいつをよこせ。ギルドに売れば、いくらかの金になるだろ」

「なっ……!」


 それにシオンは息を呑むしかない。

 この魔剣は師から受け継いだ大切なものだ。

 そんな剣を、私闘の担保にすることなどできるはずもなく――。


【我は一向にかまわんぞ?】

「っ……!?」


 しかし、その師からあっさり許可が下りてしまった。おかげでシオンは真っ青になりながらも小声でダリオに話しかける。


(師匠、本気ですか……!? 俺が負けたら、あの賢者ダリオが質流れの憂き目に合うんですよ!? それでもいいんですか!?)

【なあに、汝が勝てばいいだけの話だろう。我の身一つで弟子が好きに戦えるのなら安いものだ】


 慌てるシオンとは対照的に、ダリオは飄々と笑うだけだ。

 そうしてすっと声を落とし、挑発するように告げる。


【それとも何か? ここで尻尾を巻いて逃げるのか、我が弟子よ】

(……いいえ)


 それだけは出来なかった。

 シオンは覚悟を決めて、魔剣をかざしてみせる。


「……わかった。俺が負けたらこの剣を譲る。おまえとレティシアのことも二度と口出ししない。それでいいな?」

「上等だ。公式の場でお前を半殺しにできる上に、オマケもついてくる。最高の条件じゃねえか」


 ラギはせせら笑って決闘を承諾した。

 これで交渉成立だ。


「い、いけません! シオンくん!」


 しかし、そこでレティシアがシオンの腕にすがりついてくる。目の端に涙を浮かべ、顔色は今にも卒倒しそうなほどに青白い。彼女は唇を震わせて叫ぶ。


「ラギくんと戦うなんて無茶です! 私なんかのために、そこまでする必要ありません!」

「大丈夫だよ、レティシア」


 そんな彼女に、シオンは勇気付けるようにして笑う。


「俺を信じて、見ていてほしい」

「シオンくん……」


 レティシアは真っ青な顔のままで押し黙る。シオンの決意が固いことを察したようだった。

 こうしてシオンは因縁の相手――ラギと一対一での勝負をすることとなった。

明日はまた複数回更新予定です。シオンVSラギ!

お暇つぶしになりましたら嬉しいです。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「俺が勝ったらレティシアを諦めてもらう。俺が負けたら…… レティシアの脱退は彼女の意志次第と言ったばかりなのに……。主人公が勝手に賭けの対象にしてるし。  しかし、 >それにシオ…
[良い点] もう☆も五個入れたしブクマもしたんだよなぁ...もう一回できないかなぁ...
[一言] 本気の全力でやると殺しかねないので軽い肩慣らしレベルで十分すぎるかと
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