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初手

 小さな町の宿の前で、シオンの怒声が響き渡る。


「ちょっと師匠!? 朝帰りはやめてくださいって、いつも言ってますよね!?」

「ああん……?」


 怒鳴りつけられているのはもちろんダリオだ。

 通行人らはすわ痴話喧嘩かとハラハラと目を向けるのだが、肝心の美少女がまるで意に介さず横柄な態度のままだったので、最終的にはみな不思議そうな顔で通り過ぎるだけだった。

 ダリオは腕組みをしてふんぞり返ったまま、堂々と言う。


「我の帰りが遅くなったのは人助けのためだぞ。汝に責められる所以はないな」

「えっ、そうだったんですか……? だったら俺を呼んでくれてもよかったのに」

「バカを言え、未亡人が熟れた体を持て余していたのだぞ! 我ひとりで楽しむに決まっているだろうが!」

「やっぱりそういう理由ですか!? あちこちで現地妻を作るのやめましょうよ!?」


 シオンは頭を抱えて絶叫するが、ダリオは飄々としたままだ。

 そんなふたりを、レティシアはすぐ近くのベンチからのほほんと見守っていた。


「おふたりとも、今日も仲良しですねえ」


 この程度の言い争いはいつものことだったし、小一時間もすればシオンが説教を諦めて元通りのふたりに戻る。シオンがどうして怒っているのかはレティシアにはさっぱりだが……すっかり日常の一部として受け入れていた。


 だからこのときも、日向ぼっこをしながらほのぼのしていたのだが――。


「っ……?」


 ふと顔を上げ、あたりを見回す。

 どこからか視線を感じたのだ。

 だが何の変哲もない景色が広がるだけで、気になるものは見つからなかった。


「気のせい……ですかね?」


 レティシアは首をかしげる。

 すぐに意識はシオンらに戻り、あとはまたのほほんと見守りに徹した。



 しかし――気配の元は、たしかにそこにいた。


「……」


 その人物は、建物の陰からレティシアの様子をじっと窺っていた。

 頭の先からつま先までをすっぽりとローブで覆っており、年も性別も分からない。

 謎の人物はしばしレティシアを見つめて、小さくうなずいた。


「……そろそろね」


 そうして背後をちらりと振り返る。

 そこにはうつろな目をした男がいた。大きな荷物を背負っており、見るからに旅の行商人だ。


「それじゃ手はず通りに。頼んだわよ」

「……はい」


 男は短くそう応え、よろよろとした足取りで陰から出て行く。

 しかしレティシアに近付くにつれて次第にその歩調がはっきりしていった。

 ぴんと背筋を正した男はレティシアに目を留め、足を止める。

 そして、こう話しかけた。


「おや、お嬢ちゃん。ずいぶんと久しぶりだねえ。黄金郷からこっちに移ってきたのかい?」

「えっ……?」


 レティシアが大きく目をみはる。

 それを見て謎の人物は――。


「……ふ」


 薄く微笑み、そっとその場から姿を消した。

第三部更新開始いたします。

2/7に原作三巻&コミカライズ一巻が発売予定!是非ともよろしくお願いいたします。

また、今後の展開とそぐわなくなったため第一部の六十三話を削除いたしました。プリムラの姉、アスカのキャラクターに迷っていた頃の話なので、忘れていただけると助かります……!

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