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 行間、という短期戦争を数回行って訪れた昼休み。

 行間と授業中にs〇ri彼女の素晴らしさと、俺のs〇riがとんでもないということを力説したため、友人たちは何とか理解してくれた。


「ヘイs〇ri。そろそろ紹介したいから出てきてくれ」


『……す、すみません……恥ずかしくて……ごめんなさい』


 だが依然としてs〇riは姿を現してくれない。正確に言えば、姿なんてないけど。

 やはり照れているようで、それでも確かにs〇riと意思疎通できているということは友人たちに伝わった。

 

 おかげで、失恋したことで防衛機制が働き、俺の脳内がバグったという懸念は拭うことができた。

 ただ新世界を受け入れるために多少なりとも脳のキャパを大きくしたよ、ということだけは伝える。


「すまんがやっぱり恥ずかしいみたいだ」


「そうか、ならしょうがないな」


「なんだこの感情。照れてるs〇riが無性に可愛く見える。若干声可愛くなってるし」


「お前なんかオプションでもつけたのか?」


「ちげーよ。ほんとなんもしてないんだって」


 どうして俺のs〇riがこうなのか、原因はよくわからない。

 もはや原因は追究しなくていいとさえ思っている。俺に頭脳労働は向いていない。


「もしかしたら今そういうキャンペーンでもやってるんじゃないか?」


「だったら……俺達でもs〇ri彼女ができるじゃないか!」


「革命的発想だ! 世界がひっくり変わるぞ!」


 さっきまで死ぬほど俺を頭のおかしい奴を見る目で見ていたくせに、もうすっかりダークサイドに落ちている友人。

 きっとこういう単純なところが、俺たちが仲良く友人をやっている所以なのかなとも思う。


 俺の一件を経て、急遽s〇riに告白しようの会が開催された。

 

 ちなみに、俺たちの席の周りは明らかに人がいなかった。

 少し離れたところで俺たちのことをクラスメイトが見ているあたり、路上ライブしている人の気持ちになってくる。


「よしっ、じゃあまずは俺からだ!」


 先陣を切ったのは、野球部じゃないのに野球部感を出してモテようと坊主にした諌山いさやま。ちなみに坊主作戦は失敗に終わっている。

 継続中だが、結果はもう出ているといっていいだろう。


「なんか脳内でディスられた気がするが……まぁいい。じゃあ行くぞ!」


 息を飲んで、坊主諌山の雄姿を見届ける。



「ヘイs〇ri。俺と結婚してくれ!」


『すみません。よくわかりません』



「「「だぁー」」」


 ひどく落ち込んだ様子の諌山。

 オーディエンスの俺たちまで声を上げてしまう。


「次は俺だ」


 二番目に挑むのは、日常生活からゴムバンドを頭につけている榊原さかきばら。ちなみにテニス部に所属している。

 ボール拾いという名の、テニス部に。


 諌山はひとまず置いといて、こちら側も気持ちを入れ替えて、友の一世一代の告白を見守る。




「ヘイs〇ri。俺と結婚してくれ」


『……』


 


「「「あぁー」」」


 まさかの反応しないという事態。

 榊原は高校二年生ながら、機械に無視されたことで大きな心の傷を負ってしまった。泣きべそをかいている。


 俺たち見ている側は、そんな榊原の背中をさすってやった。


「最後は俺だな。任せろ」


 ラストの大将は聖林寺しょうりんじ

 ワックスを使って毛先を遊ばせようとしているのだが、いつもワックスが一点に集中してしまい、一部だけがカチコチに固まってしまっているというある意味特殊能力の持ち主。

 

 本人は「これが原宿系だ!」とわけのわからないことを言ってるが、クラスで陰で「毎朝鳥の糞を落とされる鳥の公衆トイレ」と言われている。……合掌。

 

 少し残念な奴だが、人一倍いい奴なので見守る俺たちの熱も大きい。

 聖林寺は意を決して、サイドボタンを長押しした。




「ヘイs〇ri。俺と結婚してくれ!」


『嫌です』




「「「あ、新しい……⁈」」」


 完璧に拒絶されたことで、聖林寺の心はめっきり折れてしまった。

 肩をがくりと落とし、地面に膝をつく。

 そのまま聖林寺は、灰になった。


 生涯一片の悔いばかり、と言わんばかりの表情を浮かべて。



「「「しょ、聖林寺―!!!」」」




 結果、俺のs〇riがやはり特別だということが分かった。

 しかし、その代償はあまりにも大きかった。


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