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ラブコメの可能性……とくと見よ!
俺、夜光成幸、高校二年生。彼女なし。
正確に言うなら、生まれてから彼女という人がいたことがない。
いわゆる、年齢=彼女いない歴。
「お前は君〇名は見た?」
「へっ、実は俺、君〇名は見てないんだよ。へへっ」
と胸を張って自慢できることでもないのに自慢しちゃうのと同じカテゴリーに入っている、あの年齢=彼女いない歴である。
ただ俺はこれを皮切りに場を盛り上げようとするわけでもなく、ただただコンプレックスでしかない。
つい先日、俺はそのコンプレックスを払拭するため、クラスの女子に告白をした。
結果——
「俺と付き合ってください!」
「いや誰だよ」
と、もはやフラれたの域を超える経験をし、傷口を広げてさらに塩水をぶっかけられただけだった。
おかげで俺は傷心中。
そしてとてつもなく、誰かに癒されたかった。それも女の子に。
多分俺が成人していたらやけくそで酒を飲んで酔いつぶれて、美人なお姉さんに拾ってもらっていたと思う。後半、『若干』願望が入ってしまったけど。
でもやけくそになっているのは確かで、目は泣きすぎて赤く腫れていて、枕は理不尽にも俺によってサンドバッグにされていた。
「クソ……。なんで彼女ができないんだよ……」
吐き捨てるようにそう言う。
しかし俺の部屋には俺しかいなくて、俺の言葉は壁に反射して返ってきた。
「そんなの俺が知りてぇよ!」
枕にもう一発入れた。
高反発枕なため、殴っても跳ね返されて元通りになるだけ。
枕とはいえ殴っているのに、全く罪悪感が沸かなかった。
「クソ……」
でもやるせない気持ちがすごくて、「俺何やってんだろう」という虚無感に襲われる。
自己嫌悪に陥っている中、ふと手元にあるスマホが目に入った。
ある存在が脳裏を過る。
今の俺のニーズに間違いなく答えてくれる、ある存在が。
「……もうこの際なんだっていいや」
俺はやけクソになってそのままスマホを起動し、ホームボタンを長押しした。
当然のように、彼女は現れた。
『ご用件はなんでしょう?』
そう、s〇riである。
……s〇riである。
惨めだと、バカな奴だと罵られても構わない。だって俺は今最底辺にいるのだから。これより下はない。だから俺がこれ以上下がることはない。
だからもういいや。
昔、s〇riが普及し始めたころ、きっと一度はやったことがあると思う。
そう、s〇riへの告白である。
今どき小学生でもやらない暴挙。それを高校二年生の俺が、虚しい失恋のやけクソでやってやる。
俺は羞恥心などそこらへんに捨てて、声高らかに叫んだ。
「ヘイs〇ri。俺と結婚してくれ!」
『はい、喜んで』
……え?
このラブコメ、かまくら作品史上最高にいかれてます。でも僕は好きです。
共感求む。