異世界からの一時帰還、下校時間
とても豪華な夕食を終えた俺達は、再び最初に立ち寄った応接室へと戻る。
「いやぁ〜食べた、食べた!ちょっと食べすぎたわね〜。」
「うん…どの料理も…美味しかった…」
「そう!気に入ってもらえたようで良かったわ!さぁ明日からは冒険の旅に出るけど、流石に家の人が心配するといけないから、一旦学校に戻ろうかしら?」
「まぁ、魔法の力で、向こうの世界の時間は止めてあるから、そんな心配はすることはないが、一度、整理のために戻っておいたほうがいいと思うんだが、皆はどうかね?」
と、先生と先輩からの意見を聞いた俺たちは、
「確かに、一旦家には帰りたいかなぁ、でも帰りたくないってもの多少あります。」
「私は、ちょっと戻りたいなぁ~。」
「どっちでも…いい…」
意見は皆それぞれ出た。確かに、こんな非日常な出来事は滅多にないし、正直楽しいが、一旦帰っておいたほうがいいかもしれない、後みたい番組があるし…
「じゃ、一旦帰ることで決定な。学校に戻ったら、時間は下校時間に合わせておくように魔法をかけておいたから、皆忘れ物はない?」
「はい、大丈夫です。」
「うん…大丈夫…」
「俺もいつでも大丈夫です。」
「じゃあ、決まりね。クラリッサ。いるかしら。」
先輩はクラリッサさんを呼んだ。
するとすぐにドアをノックする音が、
「お嬢様、失礼します。」
「今から、地球に戻るから、後のことは任せていいかしら、緊急の時は連絡を頂戴ね。」
「かしこまりました、お嬢様、ユウナ様、ご友人方もお気をつけてお戻り下さい。」
「じゃあ、帰るとしますか、皆、私の近くに。」
先生が転移魔法の準備に入る。
「準備はいいか?」
「はい!」
「えぇ。」
「うん…」
「いつでも大丈夫です。」
皆の準備完了を確認した先生が呪文を唱える。
「我、聖霊の導きに集いし、数多の者を彼の地で導きたまえ!領域転移!」
先生が呪文を唱えると、最初の時と同じように床が光りだす。
「じゃ、行ってくるわね。」
「行ってらっしゃいませ。お気をつけて。」
クラリッサさんが深くお辞儀をする。
すると間もなく周りが光のベールに包まれる。
そして、気が付いた時には…
「着いた…」
「凄い、本当に、先生が言っていた下校時間になっている。」
俺は部屋にある掛け時計を見た。記憶違いでなければ、俺がこの部屋に着いたのは15時30分を指していた。そこから異世界ではかなり長いこといたはずなのに現実世界では、約2時間ほどしかたっていなかった。
「嘘ではなかったんですね。」
「ま、最初はみんなそんな反応するだろう、先生も最初、ユリアにあった時もそうだったしなぁ~」
「もう、先生ったら」
「でも、本当に部活動やっている時間で終わるのなら、親も心配しないかな?多分だけど。」
「うん…私も…そう思う。」
「その辺は、先生に任せなさい、なんたって顧問なんだから、皆を不安にさせないために何でもやるわよ。だから安心してね。」
「はい!」
「うん…」
「えぇ。」
先生の言葉を聞いた俺たちは、安心した。まさか入学式早々にこんな事に巻き込まれてどうなるかと思ったら、そうマンガやアニメみたいな展開に、突然、現実世界に帰れなくなるとかゆう事にならないなら、この一味違う学校生活をするもの悪くないと。
「ふふ、安心したのならうれしいわ。改めて皆7、ありがとう、ちょっとしたハプニングはあるけど、私や先生、クラリッサが、援護するので、皆に危害を加えないようにするわ。」
「おう、大船に乗ったつもりでいてくれ!アァ、ハッ、ハッ、ハッ!」
(なんかフラグみたいなセリフだなぁ)
恐らくこの場に居た全員が思っただろう…
(心の声)「「「あ、なんか嫌な予感がする」」」
流石に先生に言ってしまうのはまずいと思い心の中に留めた。
「さ、さて、今日はもう帰りましょう。皆、初日から大変で、疲れたでしょう?ゆっくりやすんで、本番は明日からだからしっかり備えてね。」
そう先輩が言うと、各々に帰る準備を始める。
「最後は先生が閉めるから、先に帰りな。五条、皆と一緒に帰れよ、帰り道何があるか分からないし、親睦深める意味でもな。」
「ちょ、先生〜!」
先生がまた茶化して来た。
「私も…良かったら…一緒に…」
アリスはモジモジしながら言った。
(マジか!?まさかの展開!?バチでも当たらないかな?)
「あ、私は、駅の方で逆方向になるから、中津さんをしっかり送っていくのよ!」
アカネも先生みたいにニヤニヤしながら言った。(恐らくアカネもせんせいとおなじように考えているのかも?)
「分かってるよ!しっかり送るから。(帰る方向も一緒か…)」
「じゃあ、今日はこの辺で、お開きにしましょう。また明日の放課後に、ここに集まってください。明日は部室にも案内しますので、今日はゆっくり休んでください。」
と、ユリア先輩が言い、皆、部屋から出た。
俺たち3人は先生達と別れた後、昇降口に向かう。
「今日は疲れたわね〜。入学式早々、色々起こりすぎて」
「うん…でも…楽しかった!」
「まさかアニメや小説みたいな事が起こるとは思わなかった。今日はもうヘトヘトだぜ。」
「もう〜、男子なんだから、期待してるわよ、私たちをしっかり守ってね!」
「ナツメ、頑張って…」
アカネはからかいながら、アリスはモジモジしながら俺に言う。
「まぁ、任せておけとは言えないが最善は尽くす、何せ初めてだからな。」
「確かにね、私も足引っ張らないように頑張るわ、アリスは…大丈夫ね、守ってくれる人がいるし。」
「も、もぅ…アリスったら…」
アリスは顔真っ赤でアカネにポンポン叩く。
(なんて可愛い光景なんだ…)
なんだか話していると校門まで来ていた。
「じゃあ、私はこっちだから、2人とも気をつけて帰ってね!また明日!」
と、ニコニコしながらアカネと別れた。
「じゃあ、俺たちも帰りますかぁ〜」
「う、うん…」
俺たち2人もアカネとは逆方向に家路に着こうとすると、後ろから呼ぶ声が…
「アリス~」
「あ、キョウコちゃん…」
声の主は、同じクラスの仲澤だった。
「やっときたね、アリス。今まで何をしてたの?」
「ちょっと先生に呼ばれていて…五条君と一緒に…」
「ふーん、初対面の割には随分打ち解けているようねぇ~」
「そ、そんなこと…ない…キョウコちゃんの意地悪…」
「あはは、ごめんね、ついからかっちゃって。五条君だね、私は仲澤キョウコ、よろしくね。」
「こちらこそ、五条ナツメです。」
「アリスとは中学からの同級生でね、今日、良かったら一緒に帰ろうかなと、思ったんでけど、五条君も良かったら、途中まで一緒に帰る?」
「まぁ、せっかく同じクラスなんだし、お邪魔でなければ…」
「別にお邪魔じゃないよ、同じクラス同士、それに、アリスもその方がよさそうだし…」
ふとアリスの方を見ると顔を赤らめていた。
「も、もう、キョウコちゃん、また…」
「おっと、からかうのもこの辺にして、帰りましょうか。」
合流した仲澤も加わり3人で、帰路に着く。
学校を出て、何があったかを、仲澤に聞かれたので、ここは当り障りのないように答える、あくまでも異世界のとこは他言不要だと先生に口止めされている。
「先生の手伝いを、中津さんと一緒にお願いされてね、その時に、上級生と一緒だったんだけど、上級生の部活が廃部寸前で、先生にお願いされて、さっきまで部活のデモンストレーションをしていたんだ。」
因みに、異世界研究という部活は存在しない、学校の中では、怪しまれないように「文芸部」として、活動すること、と先輩い言われた。
「へぇー。2人とも、初日から大変だったわね。」
「キョウコちゃんは、部活どうするの?陸上?」
「まだ考え中、一先ず部活動見学で一通り見てから決めようかな?」
「この学校は、部活動さかんだからなぁ、あと、強制でないところもうれしいし、自由な所もこの学校の特徴だしな。」
「確かに、これだけ部活が盛んで、強制でない、それはとてもありがたい、アルバイトも基本OKだしね、申請が必要ではあるけど。」
「でも、初日に色々な人と話せたから、これから楽しい高校生活送れそうだ!」
「ふふ、そうね、私も新たな友達ができて嬉しいわ。ねぇーアリス?」
「う、うん、そう…だね…」
話が盛り上がっていると、
「と、じゃ、俺んちは、ここだから、2人とも気を付けてな。」
「うん、ありがとう、あの、ナツメ君って呼んでもいい?私の事もキョウコって、呼んでいいから。」
「お、おう、キョウコ(ヤバイ、改まってい言うと照れる…)」
「ほらほら、もう一人にも~」
(もう一人って、そうだよなぁ~)
アリスはまたモジモジしている、さっきのキョウコと同じように呼んでほしいみたいだが、
知り合いがいる手前、中々勇気が出ないみたいで、
(なんか、初めて会った時みたいだな。)
このままじゃ良くないなと思い、こっちから声をかけることにした。
「ア、アリス、また明日な…」
凄い恥ずかしいが、何とか声をかけた(異世界では気軽に言えたのになんでなんだ)
「う、うん、またね、ナツメ君…」
俺は2人と別れ、2人が曲がり角を曲がったのを確認して、家の玄関に入った。