この世界と魔法適正
ユリア先輩の屋敷で、絶賛迷子になってしまった、俺とアリスは赤い壺を頼りに屋敷内を歩き回っていた。
「まさか、来て早々、迷子になるとはなぁ。」
「うん...本当に...マンガみたい。」
屋敷内はとても広く似たような景色が続き、壺に関しても赤以外の壺も、そして、問題の赤い壺だが、歩いている間に2つ見つけてしまったので、余計に分らなくなってしまった。
数分後、転移後から休んでなかったこともあり、少し疲れたので、廊下にある小部屋?みたいな所の椅子を発見し、
「ちょっと少し休もうか?ちょうど椅子もあるし。」
「うん...そうしよう。まだ合流出来ていない...けど...一休みもしたい。」
「少し休んだらまた探そう。」
そういうと、早速椅子に腰掛ける。
「さすがに屋敷が広くて、何か疲れるぜ。」
「うん...確かに...学校より広い?」
「多分な。まるで迷路みたいだぜ。」
異世界に来て、なおかつ、初めての場所で迷子、何かお決まりの展開が続いている感じ...
と、そこへ、
「お、いたいた。探しに来て正解だったな。」
先生が俺たちを探しに来てくれたみたい。
「先生!良かった~。このまま屋敷で彷徨うかと思いましたよ。」
「んな、大げさな事を。まぁ、確かに初めてなら迷っても仕方がないわな。中津も大丈夫だったか。襲われていないか?」
先生が茶化してきた。
「ちょ、先生!なんつうこと言ってるんですか!」
「大丈夫...です。色々お話...してたから、不安はなかった。}
「ほぅ~、中々興味深いな~。詳しく聞きたいとこでもあるが、皆のところへ向かうぞ。改めて話すこともあるしな。」
(この2人、中々いいコンビになるかもな。)
先生はそう言い、俺たちは、先輩や仲澤のいる部屋へと向かう。
(そういえば、先生、俺たちをどうやって見つけたんだ?気になるな、こんな広い屋敷でどうやって...)
「先生?」
「ん?どうした、中津?」
「私たちを...どうやって見つけたの?」
(ナイス、アリス!早速聞いてくれるとは。)
「どうやって見つけたか、それはここに来る前に見せた魔法で見つけたのだよ。探知能力を使ってな。」
「探知能力...なるほど...」
「先生、他に魔法使えるのですか?」
「私は一様支援担当だが、炎、水系の魔法が使えるかな、そう遠くない内に見せれると思うが。いつかお前たちにも魔法が使える時が来るかもしれないしな。」
(先生は、もしかしたら、かなり凄い人なのでは...?)
「さて、着いたぞ。この中にいるぞ。」
色々寄り道したりも?したが、やっと、休憩ができる所に到着した。ここまでなんか長い道のりのような感じがした。ふと外を見たがまだ明るいみたい、まだ昼ぐらいのような明るさだ。放課後の時は、入学式とHRだけだったし、14時位だったかな?異世界に来てだいぶたったかと思ったが、思っていたほど時間もたっていないのかもな。
「お、ようやく来た、遅~い。」
「お待ちしてました、大丈夫でしたか?」
「はい、大丈夫です。途中迷子になりそうな所、先生が見つけてくれました。」
「そうでしたか、先生ありがとうございます。」
「いやいや、なんの、さて全員揃った所で、話を始めようか。」
そう先生が言うと、ユリア先輩が立ち上がり、窓辺へと歩きながら、皆の方へ向き、
「色々、ありましたが、改めて、異世界へようこそ。私はあなたたちを歓迎します。ここからは、この世界について補足を入れながら説明していきます。」
先輩が、息を大きく吸い、何か視線や空気が変わった感じがした。嘘を言いそうな空気もなく、とても真剣な表情だと俺でも分かるくらいだ。
「私たちのいる世界、この国《フェーイリア共和国》は、山と海がある自然豊かな国で、資源も豊富で、周りの国とも貿易が盛んに行われている。なおこの世界は地球で言う中世くらいで、飛行機みたいなものはなく、馬車や鉄道が主な移動手段だ。そして何より魔法が使えるわ。魔法については、全員使えるが適正があり、火、水、風、雷、土、光、闇と7つあり、その昔、7つ全て使えた大賢者もいたそうよ。」
「魔法にも色々あるのね。ちなみに私たちはどうなんですか。」
「うん...気になる...」
「まぁ、焦るな、魔法適正を図るにはこいつを使うんだ。」
そういうと先生が、部屋の棚にあった水晶玉を持って、俺たちの座っているテーブルに置く。
占いで使うような水晶玉だが、透き通るような透明で、ガラスのように綺麗なものだった。
「綺麗...宝石みたい...」
「それで適性を見るんですか?」
「そうだ、この水晶に手をかざして、思いを込めるとその人の魔法適正がわかる仕組みになっている。」
「それでわかるのね。じゃ、あたしからでいいよね。」
「お、赤崎、威勢がいいな!じゃ、初めは赤崎だ。ユリア、頼むぞ!」
「はい、先生。赤崎さん、いえ、アカネさんて呼んでいいかしら?」
「はい、構いません。こちらもユリア先輩と呼んでいいですか?」
「えぇ~、構いませんよ。では、アカネさん、この水晶に手をかざしてください。」
そういわれて、アカネは水晶に手をかざすと水晶が七色に光りだす。その後、赤や青、黄色に変わる。
すると先輩が
「アカネさん、魔法適正はあります。そして、火、水、雷に適性があります。アタッカー向きと出ています。」
「凄い!そんなにわかるんですね。」
「そうよ。では次は、どうする?」
「俺がやるぜ。」
次は俺の番。
「じゃ、ナツメ君、手をかざしてね。」
「はい。よろしくお願いします。」
俺はドキドキしながら、水晶に手をかざす。
(さて、俺は一体どんな適性があるかな?楽しみだぜ!)
先ほど同様、水晶が七色に光る。そして、それぞれの色が出るはず...
「え、嘘?」
先輩の表情がちょっと曇る。
「先生、こんなことってあります?」
「どれどれ、おっ。こりゃ、面白い適性が出たな。」
「一体何ですか?先輩、俺に適性はどうなんですか?」
「大丈夫よ。魔法適正はある、けれど...」
「けれど...?」
「不明なの。魔法適正以外の情報が。」
「そ、そんなぁ~~~。」
俺は落ち込んだ、すると、アリスが、
「ナツメ...大丈夫?」
「あ、あぁ、大丈夫。ありがとうな、アリス」
「ちょっと、ちょっと、あなたたちいつの間に親しくなってるのよ?」
俺とアリスが下の名前で呼んでいるのを見て、キョウコが冷やかす。
「あなたたちは仲良しなんですんね。」
先輩も茶化しに入る。
「い、いえ!そんなことは...」
(やっぱり、さっきなんかあったのね?これは楽しみね。)
「先輩...最後は私...」
「あ、そうね、ナツメ君については後で話すとして、最後は、中津さん、アリスさんと呼んでいいかしら?」
「うん...大丈夫です...先輩。」
そういうと、アリスは水晶に手をかざす。
「じゃ、始めるわね。」
アリスも俺たち同様に七色に光りだす、しかし、またも先輩の表情が曇る。
「こ、これは、先生。こんなことってあるんですかね?」
「ん、ほぅ~。これはこれは、神の導きか、それとも運命か。」
(しかし、こうも連続で起こるのは、ちょっと気になるな?これはこの二人一緒にしておいたほうがいいのかもな。)
「ユリア、ちょっと、耳を貸せ。」
「えぇ。」
先生と先輩が、こそこそ話をし始める。さっきとは雰囲気が違い、何か重要そうだ。
(先生、本当ですか?)
(あぁ、確かめてみたいこともあるし、しばらく様子を見る点では理にかなっていると思うが。)
(わかりました。それでいきましょう。)
コソコソ話が終わると、先輩が、
「アリスさん、魔法適正はありますが、やはりそれ以外が不明ですね。」
「そうですか...」
「でね、これは、相談なんだけど、ナツメ君とペアで行動してもらうのはどう?」
先輩からとんでも発言が飛び出した。
「え、えぇ~~~~~~~~~。」
「これは、面白いことが起こりそうだな。」
「ちょ、どうゆう事よ、いきなり!」
「...(飛んでも発言を聞いて思考停止している。)」
「この先、どんな展開になることやら。」
先生はニヤニヤし、キョウコは発言から俺に質問攻め、アリスは当然の発言に思考停止し、ユリア先輩は、何か楽しそうな?表情で、俺はというと、色々混乱していた。