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【あさ】⑦
私は酷く後悔した。
学校から帰ってくる途中で気づけたはずだ。
クラスメイトや先生に認識されなかった時点で、分かっていたはずだ。
なのに。
家に帰って来れば、何もかも解決するような。そんな、根拠もない期待があった。
だって、少なくとも今朝、この家を出るまではいつも通りだったから。
気怠い朝。母の叱咤。寝起きの父の顔。
何ら特別なことはない、いつも通りの一日が始まったはずだった。
それなのに、今は。
父も母もいない。住んでいた家は何年も空き家であるかのようで。
親友も、クラスメイトも、先生も、誰も私のことを認識してくれない。
「……うぅ」
大粒の涙が頬を伝い、首筋から垂れて、胸元を冷たく濡らす。耳障りな咽び声が家中に響く。
氾濫する川のように溢れ出す感情とは裏腹に、脳だけが冷静に状況を整理している。
それが私をどうしようもなく苛立たせ、全身が痒い。
腕を掻きむしる。肌が裂けてつ、と血が滴る。
同時に、渇いた呟きが落ちた。
「私、何かしたっけ……」