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【すき】⑦
「よるがあんなに力が強いとは思わなかった」
あさひは笑いながら、僕を見つめた。
「ごめんね」
謝るしかない。
「だって離したら、いなくなっちゃいそうで」
「それは、私も同感。目を離したら、よるがいなくなるんじゃないかって思う」
「僕はいなくなったりしないよ!」
「私だって、いなくなったりしない!」
お互いに胸を張って顔を見合わせた。どちらともなく笑いが起こる。
「何を怖がってんだろうね、僕たち」
「本当だね。お互いに、いなくなったりしないって分かってるのに」
頬に手を伸ばしていた。そっと撫でる。
「さっきはごめんね。あんな意地悪言って」
「気にしてから。大丈夫」
そう言うけれど。
「うそ。傷つけたって分かるよ」
あさひは静かに顔を伏せた。
「何かね、悔しかったんだ。先を越されたみたいで」
「え?」
僕の言葉に、あさひが首を傾げた。
笑ってしまう。僕は君に、嫉妬したんだ。
「男のつまらないプライドっていうのかな。僕は絶対に無いとおもってたんだけど。好きな子には自分から告白したかったって、思っちゃったんだ」
あさひが目を丸くして僕を見つめた。
「あの言葉はね、僕自身への疑問でもあったんだ。ここにいたのが君以外の誰かでも、僕は好きになっていたか、ってね」
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