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【すき】⑥
「意地悪」
呟いた。
「でも、私は怒れる立場じゃない。その言葉を、はっきりと否定できる自信がないから」
引いていた涙が、また滲みだす。
「ちょっと一緒にいたから。ちょっと優しくされたから。嬉しかった……自分は一人じゃないんだって……近くに誰かがいることが、嬉しかったの」
あさひはゆるゆると身体を起こし、立ち上がった。
「ごめんなさい。さっきの言葉なんて、忘れてね」
そう言って、涙で滲んだ無理やりな笑みを残して、歩いていく。
このまま引き止めなかったら、消えてしまいそう。
「待って!」
僕は叫んだ。飛び起きて、足を止めない少女の身体を、後ろから抱きしめた。
「よる」
「ごめん。忘れて欲しいのは、僕の言葉のほうだ。本当に、ごめん」
逃げようともがく少女。僕は逃がさまいと腕の力を強める。
「よる……よる!」
「ごめん、本当にごめん!」
あさひは僕を弱弱しく睨んだ。
「分かったからもう、離して。じゃないと私、絞め殺される……」
加減を忘れていた。
「ごめん!」
腕を離すと、あさひはぐったりと倒れ込んだ。




