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【のみこむ】⑦
夢を見た。とても、悲しい夢。
目覚めたのは、いつもの廃ビルの中。光が差し込む窓辺によるの姿はない。
外にいるのだろうか。私は立ち上がり、探しに出て行く。
ビルの周りを見てみても、よるの姿はない。諦めてビルの中に戻った。
どこかへふらっと行ってしまったのなら、すぐに帰ってくるだろう。
座り込んだ脳裏に、ジリ、と鈍い痛み。
「よるはもう、帰って来ないかもしれない」
痛みに導かれてビルを飛び出した。白昼の大通りは人で溢れ、私の心を折らんばかりに押し寄せる。 その中に目を凝らして、よるを探す。
「よる、よる!」
いた。その隣には、綺麗な女の人。駆け寄った私に、よるは目もくれない。
女の人と笑いながら、楽しそうに話している。
「よる! よる! 私が見えないの? ねえ、よる!」
叫んでも聞こえてない。腕を掴もうにも、私の手はすり抜けてしまう。
「ああ……」
へたり込んだ。
よるは遠ざかっていく。もう追いすがる気力は無い。
よる……よるがいなくなってしまったら、私はまたひとりぼっち……。
項垂れた目に、漆黒の穴が見える。大きな魚の口みたいな穴だ。
その中に幾つもの光が瞬いている。
私は気づいた。これは「夜」だ。「夜」の口だ。
「夜」に飲み込まれて、消化されていく。「夜」の一部になっていく。
「よる……っ」




