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【のみこむ】⑥
「朝と夜。太陽と月。光と闇。男と女。それから」
強く顎を引かれる。
「君と僕とか」
よるの顔がすぐ近くにある。少しでも動いたら、触れてしまう。
顔の近さと耳元で囁かれた言葉に、心臓が慌て始めた。
「な、何言って……」
視線を逸らしたいのに、よるの目は私を捕らえて離さない。
「よ、よるっ」
それ以上近づいたら! 私は思わず目をつぶった。
「足が痺れちゃった」
私の身体の下からよるが足を引き抜いた。
「膝枕、良かったでしょ? 僕も今度してもらおうかな」
そう言い残して、よるは出て行った。私は一人、ぽつんと残される。
寝転がったまま頬に触れる。温かい。きっと真っ赤になっているんだろう。
「よる」
口に出してみる。なんてことはない。ただの名前だ。
私を唯一認識できる人の名前。一緒にいる人の名前。優しい人の名前。
よる。優しくしてくれるのは、私がよると同じ、認識されない子だからでしょう?
仮にここにいるのが私じゃなかったら、よるは変わらず接していた?
聞きたくても、聞けない。聞いたところで何にもならない。
私はしばらく頬に手を当てていた。
そしていつの間にか眠っていた。




