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【のみこむ】⑤
「笑顔の練習。多分ね、あさひちゃんって表情の動きが小さいんだよ。自分では動かしてるつもりなんだろうけど、全然動いてない。だから、僕が動かしてあげる」
頬をぐいっと上げて、下げる。その動作をよるはニコニコしながら続けている。
「ふぁのひんれふぁい? (楽しんでない?)」
私の抗議にも、よるは手を止めない。
「そういえばさ、よるって呼んでくれるようになったね」
「ふぇ?(え?)」
今まで何て呼んでたっけ。
「よるさん、って呼ばれるのも良かったけど、呼び捨てにされるのもアリだな」
頷くよる。私は必死にもがく。
「はあひて! (離して!)」
よるが手を離して、私の頬は解放された。強く掴まれていたから、ひりひりする。
「あー、楽しかった。へへっ」
私は全然楽しくない。むっつりとよるを睨んだ。
よるの背後に見える夜空は、音も光も全て吸い込んでしまうように昏い。
よるの瞳は、夜空に似ていた。私の向ける感情を、全て吸い込んでしまいそうだ。
長く見続けていると、本当に吸い込まれてしまうかも。
私はそっと視線を逸らした。
「二つのものが、つかず離れずの距離でお互いを必要としてる関係っていいよね」
今夜のよるは、意味深な呟きが多い。
私はそっぽを向いたまま。




