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【のみこむ】④
私は、満面の笑みで言った。
「うん。好きだよ、夜」
固まったよるの顔が、大げさに倒れ込んだ。
「よる!」
「その笑顔反則……僕としては、嫌そうな顔で言ってもらえるだけで良かったのに……」
「はぁ」
よるは上半身を起こした。その表情は、満足げな笑み。
「でも、笑顔が見れて嬉しい。君ってこう……能面みたいなところがあるから」
「え!」
今さらっと悪口を言われたような。
「無表情なところもいいんだけど、もっと色々な表情を見てみたいんだよね」
「私、無表情?」
「うん。って、気づいてないの?」
気づいてない。というか
「鏡に映らないから、自分の表情が分からなくて。顔を合わせるのはよるだけだし」
「あーそっか……じゃあ認識されなくなってから表情が死んじゃったのかな。もしかして、僕も?」
「ううん。よるは、終始張り付いたような笑顔だよ」
「んん……ってほら。今、無表情だよ」
「え。私、微笑んでるよ? 最近よるの表情が移ったみたいで、つい微笑んじゃうんだから」
「いや、全然笑ってない」
そう言うと、よるは私の頬をつまんだ。そのままぐいっと上に引き上げる。
「ぬぁにすふぅん! (何するの!)」




