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【よる】⑫
二つ目の理由。それは、あさひがどことなく彼女に似ているから。
名前も覚えていない、ぼんやりとした記憶の中にいる彼女。けれど、何よりも大切に想っていたことだけは覚えている。
その彼女に、目の前の少女は似ている気がする。
眠っている時の顔。俯いた顔。仕草や雰囲気が、どことなく。
滾るような情欲を、振り払う。
そんなことを考えてしまう自分が、どうしようもなく汚らわしい。
あさひが彼女に似ているから、何だ。これはただの偶然だ。奇妙で、残酷な偶然だ。
頭を冷やそうとビルの外に出た。湿った空気。朝焼けが見える。
あさひと暮らし始めて、どれくらい経ったのだろう。
思い思いに目覚め、話をし、眠るだけ。それなのにずいぶんと情が移ったようだ。
目が覚めてあさひの姿があると、安心する。
声が聞きたいが為に、他愛もない話をしてしまう。
抱きしめて、その温もりと柔さを感じたくなる。
誰かと一緒にいることが幸せだと感じるのは、孤独ではないという安心感からだろうか。
それとも、一緒にいるのがあさひだから。なのだろうか。




