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【よる】⑪
「私のこと……見えるんですか?」
辺りを見回し、少女の問いが自分に向けられていると確信して、大きく頷いた。
いつまでも見下ろした体勢ではいけないと思い、腰を屈めた。
少女の瞳には混乱と焦燥の色が浮かんでいたが、徐々に安堵の色が広がる。
僕の胸にも自分の姿が見え、会話ができる人間がいたことに対する嬉しさが満ちていく。
そして、堪えきれず抱きしめていた。
少女の身体は冷えていたけれど、どくどくと心音が響き、少しずつ温まっていった。
あの時見つめた瞳には、少女の心が映っていた。喜びと安堵。それは、少女が無意識のうちに見せた隙のような気がした。
だから……というだけでは無い。二つ目の理由の方が本音だ。




