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【あさ】③
「何、これ」
かすれた声がして、それが自分の声だと気づくのに数秒かかった。私の声に反応する人はいない。
まるでここには、私なんていないとでも言うように。
「え、何これ? どうなってるの」
答えの期待できない問いかけ。何故か私の口元は笑みの形に歪んでいる。
視界に、こっくりこっくりと頭を揺らすサヤの姿が映った。
私は思わず、カバンを放り捨て、サヤの元へと駆け寄った。
その肩を掴もうとして、私の手はするりと抜ける。
驚いて自分の手を見つめた。今、何が起こったの……?
握り締めた。肉の感触がする。
なのに幾ら掴もうとしても、サヤの肩は掴めない。
お願いだから当たって、とめちゃくちゃに手を振り回した。
「サヤ、サヤ! 聞こえてるでしょ? 見えてるでしょ? こっちを向いて……無視しないでよ、サヤ!」
サヤはすやすやと眠っている。暴れても叫んでも、誰も私を見ていない。
教壇に駆け上って
「みんな、私を見て! お願いだから!」
大声を張り上げた。しかし、滞りなく授業は進む。
喉が痛くなるほど叫んでいるのに、誰も私を見ていない。視線は私をすり抜けて、先生と黒板に注がれている。
元来目立ちたい方ではないけれど、こんな仕打ちはさすがに辛い。
私は、ここにいるのに。




