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【よる】③
「って、いい加減に毛布よこしなさいよ! 寒いって言ってるでしょ!」
沸点に達した彼女をはいはい、となだめながら毛布を広げた。
彼女は寒い寒いと言いながら潜り込んできて、猫のように丸くなった。
「はぁ、あったかい。人の温もりって心地いいね」
籠もった熱で温まるのはいいが、抱きついてきた時はびっくりした。
「冷たっ」
「言ったでしょ? 毛布を取られて一晩中震えてたって」
仕返しとばかりに冷たい指先を這わせ、腕や足を絡めてくる。長い髪も擦れて、くすぐったい。
しばらくじゃれ合っていると、彼女の身体が温まっていく。抱きついたまま、彼女は動きを止めた。
「ねぇ、よる?」
「ん?」
「しばらくこうしてていい?」
「うん」
静寂が室内に満ちる。彼女の呼吸と自分の呼吸、二人分の心音が重なって。
ベッドの上の小さな世界で、僕らは二人きりだった。




