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【あさとよる】⑪
ある夜。頬にひんやりとした感触を覚えて、目を開けた。
「ん……?」
よるがしゃがみ込んで、私を見下ろしている。頬に触れているのは、よるの手だった。
初めて出会った日、差し出された手と同じ温度。ひんやりと冷たい手。
決して不快ではなく、むしろ心地いい体温。
話し掛けたらいけないような気がして、黙っていた。
私が目を覚ましたことに気づいているはず。なのに、よるは手を離そうとしない。
「こうやって触れてるとね、あの夜のことを思い出すんだ」
ぽつり、とよるが呟いた。あの夜、というのは多分私たちが初めて出会った夜のことだろう。
「あの夜ね、何か予感がしたんだ」
「予感?」
「うん。ここに住み着いてから、外に出ることなんて滅多になかった。でもあの夜は、外に出なきゃって思ったんだ」
そういえば、と私も思い出す。
あの夜、耳鳴りがして駆けて行った先でよるに出会った。
「あの時君に話し掛けなかったら、僕は今でもひとりぼっちだったかも」
ひとりぼっち、という言葉に身体が震える。よると出会ってから、孤独を感じることは無い。
でもそれは、「あの夜」があったから。もしよるが話し掛けてくれなかったら、なんて考えたくない。




