【あさとよる】⑨
と言っても、人に認識されなくなってから食事を取る必要がなくなった。というか、したくてもできないので、思い思いに寝て起きて話す、というサイクルだ。
「制服かわいいね。夏のセーラー服もいいけど、僕は冬の方が好きだな」
「うん。スカーフが赤ってところが気に入ってる」
よるが、敬語は他人行儀な感じがして嫌だと言うのでやめた。
「あさひちゃんって、中学生? 高校生?」
「高校二年生……っていうか、だった?」
「若いっていいなぁ」
「そういうよる……は幾つなの? ん? 幾つだったの?」
「んー……幾つに見える?」
「二十、二とか、三?」
「じゃ、そういうことにしとこう」
こんな具合に他愛もないおしゃべり。
「よる」という人について、ほんの少しだが大体の年齢と性格は掴んだ。
年齢は多分、二十代前半。多分、というのはよる自身が正確な年齢を忘れてしまっているため、憶測でしか判断できないからだ。
身長は高く、身体は細い。冬に見る、枯れた街路樹みたいと言ったら、よるは怒るだろうか。
細いのだが、意外と力が強く、やっぱり男性なのだと感じる。
性格は穏やかで、いつも微笑んでいる。ニヤニヤとしたような不快な笑みではなく、自然な人当たりの良い笑み。でもどこか、仄暗さが見え隠れしていてそれが魅力的に見える。
人に認識されなくなる前は、色々な人に好かれていただろう。特に女の子とか。放っておかれなそうだ。




