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【あさとよる】⑤
一瞬の間。
意を決して絞り出した問いは、大きな頷きで肯定された。
男性は静かに腰を屈める。
綺麗な顔立ちだ。少し高い位置で私を見つめる瞳は、青みがかっているように見える。
細まる瞳にうっすらと涙の膜。
突然ぎゅっと抱きしめられた。あまりにも突然で、それもかなりの強さで私はびっくりする。
「よかった……僕は一人じゃなかったんだ……!」
その呟きに安堵と喜びを感じて、私も同じ気持ちになった。
「あ、ごめん! 痛かった? ずっと他人の身体なんて触らなかったから、加減が分からなくて」
ゆっくりと身体が離れていく。
名残惜しそうにその手は私の頭を撫でている。どうしようもなく恥ずかしくなった。
抱きしめられた時はそこまで恥ずかしくなかったのに。
「とりあえず、ここから離れようか」
人の波はまばらになっていたが、それでも無くなったというわけではなく。
こんな所で話をするのは……と思った私は、男性の提案を受け入れることにした。
男性が立ち上がり、目の前に手が差し出される。細い指だけど、大きな手だ。
私は気恥ずかしく思いながらも、その手を取った。ひんやりと心地いい冷たさだった。




