11/49
【あさとよる】④
人々は私をすり抜けていく。私を見ているが、見えてはいない。
逃げ場はどこにも無かった。すり抜けていくから触れられていないはずなのに、押し潰される息苦しさを感じる。
溺れるってこんな感じなのかな。苦しいのに、手を伸ばせない。引きずり込まれる。
身体の力が一気に抜けて、私は地面にへたり込んだ。
「大丈夫?」
唐突に声が降ってきた。
私のことなんて見えるはずもないから、この近くで子供が転んだのだろう。辺りを見回す。しかし、見えるのは不規則な人の足並みだけだ。
目の前に剥き出しの足が見える。
まさか、と頭を上げると、男性が一人、私を見下ろすように立っていた。
この人、私に声を掛けた……? 男性は何故か、顔を両手で覆ってしまった。
「またやっちゃったよ……僕の声なんか、聞こえるはずがないのに……!」
ぶつぶつと呟く声が聞こえた。そうしている間にもたくさんの人が「私たち」をすり抜けていく。
「あの」
恐る恐る声を掛けると、男性は「ん?」と返してきた。
開いた指の隙間からこちらを覗く瞳がある。視線が重なった。
「私のこと……」「僕のこと……」
お互いに発した声が重なってしまい、お先にどうぞ、と促される。
「私のこと……見えるんですか?」




