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いないないふたり  作者: 本間えるは
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【あさとよる】④

 人々は私をすり抜けていく。私を見ているが、見えてはいない。

 逃げ場はどこにも無かった。すり抜けていくから触れられていないはずなのに、押し潰される息苦しさを感じる。

 溺れるってこんな感じなのかな。苦しいのに、手を伸ばせない。引きずり込まれる。

 身体の力が一気に抜けて、私は地面にへたり込んだ。

「大丈夫?」

 唐突に声が降ってきた。

 私のことなんて見えるはずもないから、この近くで子供が転んだのだろう。辺りを見回す。しかし、見えるのは不規則な人の足並みだけだ。

 目の前に剥き出しの足が見える。

 まさか、と頭を上げると、男性が一人、私を見下ろすように立っていた。

 この人、私に声を掛けた……? 男性は何故か、顔を両手で覆ってしまった。

「またやっちゃったよ……僕の声なんか、聞こえるはずがないのに……!」

 ぶつぶつと呟く声が聞こえた。そうしている間にもたくさんの人が「私たち」をすり抜けていく。

「あの」

 恐る恐る声を掛けると、男性は「ん?」と返してきた。

 開いた指の隙間からこちらを覗く瞳がある。視線が重なった。

「私のこと……」「僕のこと……」

 お互いに発した声が重なってしまい、お先にどうぞ、と促される。

「私のこと……見えるんですか?」



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