異世界人に買われた奴隷の気持ち
また連載をサボってこんなものを書いてしまいました。かなり昔に考えたアイデアを、いまさらになって書き起こしたら、こんなひどい物語が生まれてしまいました。ほとんど勢いだけで、展開もごたごたなので、起承転結とかもありませんね。
もう、オワタ\(^o^)/
私の人生、オワタ\(^o^)/
今日も紐みたいな服を着せられ、お店に立たされる。腰をくねらせ、来る客にサービスをしながら、私の腐った一日は始まる。
仲間の連帯保証人になったのが運の尽き。経営していた酒場をほっぽり出して、一家で夜逃げしやがった。私を裏切って、逃げやがったんだ!
当たり前のように借金取りが私に押し寄せ、結果、奴隷落ち。
「誰か助けてくれ」
役所での手続きは高速で受理され、すぐに高級娼館へ売り飛ばされた。それからはあっという間で、気づけばスケベな格好をして豚のような貴族に腰を振る毎日だ。
ほとんど裸同然の格好をして、豚貴族に笑顔を振りまいてサービスしなければならない。場合によってはそのまま豚貴族とベッドイン! 絶望を通り越して、自殺したい気分だ。といっても、自殺禁止の呪いをかけられていて、自殺すらできないけどね。
あぁ。なぜこんなことになってしまったのか。私の冒険者人生はこれからだったのだ。ダンジョンでの血沸き肉躍る冒険と、心ときめくイケメン騎士との出会い。すべてはこれからだったのに、奴隷落ち。しかも娼館で豚貴族の相手だ。
私の運の無さはすでにカンストし、人生はルナティックモードに突入している。
※ちなみにルナティックとは、キチガイ、狂った、などという意味である。
「だ、だれか、……た、………たす、け……」
そうつぶやいた時、一人の少年が娼館に現れた。
その少年は真っ黒い髪に、真っ黒い瞳、東洋風の顔をしていたが、かなりの美少年。
彼はまだ13か14歳くらいの子供に見えたが、私を見てにっこりほほ笑んだことから、世界は一変した。
彼は私を見るなり、「あの子が欲しいです。これが王様からの特赦状です」と言った。
★★★
少年が娼館に乱入してから一時間。
たった一時間で、私は娼館から追い出された。
そして、いつのまにか奴隷紋は書き換わり、私は少年の奴隷になっていた。
「ボク、愛川空って言います」
「アイカワソラ?」
「ソラって呼んでくださいね!」
にっこりとほほ笑んだソラ君は、天使のよう。あんまりにも突然すぎて分からないが、ソラ君は私を買ってくれたご主人様らしい。聞けばソラ君は冒険者ランクSSSで、最高ランクの超人らしい。今回、邪悪なら始祖竜を倒した褒美として、王様から爵位と領地、お金をたくさんもらったようだ。それ以外にもいろんな褒美をもらい、最後に奴隷の私を買ったというわけだ。
「お名前を聞いてもよろしいですか?」
「あ、えっと、リーナって言うんだ。いや、言います」
敬語は慣れていないので、素で返事をしてしまった。娼館で働いていても治らなかった、私の悪い癖だ。
「あぁ、いいんです。敬語じゃなくて大丈夫ですよ」
「そ、そう? でも、どうして私を?」
「理由は無いですね」
「え? ない?」
娼館には私よりも綺麗で、頭が良い子はたくさんいた。私みたいな女冒険者をやっていて、体に切り傷や火傷を残している女は少ない方だ。聖女様のような美しいエルフだっていたんだ。それなのに体の大きくて無骨な私を、どうして?
「そうですね。奴隷なら、誰でも良かったんです。最初に目にあったのがあなただったからに過ぎません」
ロマンティックな言葉を期待したが、当てが外れた。王子様が駆け付けたわけではなかったのだ。
「邪竜、いや、厄災の始祖竜を倒したので、王様から褒美をたくさんもらったんです。それで奴隷を買うことになりまして」
「え? あの、それで私を買って何をするつもりなの?」
「なにって言われても、考えてませんね。王様が僕に、「奴隷を買って体面を整えろ」と言われたので、買っただけです。とりあえずは、僕のそばにいてくれればそれで構いませんよ」
貴族のステータスは、奴隷の多さで財力を示す節がある。私が買われたのは、そんな単純な理由らしかった。
「とにかく、これからよろしくお願いしますね、リーナさん」
すっと差し出された手は、小さかったが、ゴツゴツしていた。剣を握りこんでいる男の手をしていた。腰に差しているショートソードも、普通の剣じゃなさそうだ。
この子、見た目通りの少年じゃない。本当に強い奴だ。
「はい。よろしくお願いします。ソラ。いや、ソラ様」
「ソラでいいですよ」
「は、はいソラ君」
娼館で豚貴族の相手はしないで済んだが、不安しかない生活が始まった瞬間だった。
(´・ω・`)ショボーン。
★★★
私の激動の人生は始まったばかりだった。
ソラ君という異国の少年に連れられ、向かった先は、巨大な屋敷。大貴族が住むような屋敷だった。
「王様が、ここに住めってうるさくて。本当は2LDKのマンションが良かったんですけどね」
「つーえるでぃーけー?」
「あぁ、気にしないで下さい。生まれ故郷の話です」
なんだかよく分からない単語を使う少年である。体は小さいし、筋肉もない。本当に子どもみたいだけど、聞けば21歳だという。私と同い年ではないか。信じられない。
髪はサラサラ、中性的な顔つきの美少年だ。女装でもさせれば男どもが黙っていないほどの少女に変わるだろう。それくらいの少年だ。
とはいえ、豚貴族の相手ではなく、美少年の相手なら、私も願ったりかなったりだ。宝くじの一等賞を引き当てたと言っていい。ただの偶然で私が選ばれたのなら、最高だ。
この後この美しいショタっ子を私好みに改造して、私がいなければ生きていけないような体にしてやる。そうだ。そしてこのショタっ子を使って……
「それじゃ、僕はこれで」
「え!?」
私のショタ改造計画が一瞬で崩壊。しかも、屋敷の前で放置!! どうやって門をくぐって、中に入れというのか。
「これがカギです。好きなように使ってください」
「え!?」
もはや意味が分からない。
「ボクは倉庫を借りていまして、そこで寝泊まりしているんですよ。この屋敷は昼間にしか使いません。なので、どうぞお好きな部屋を好きなだけ使ってください。食べ物や着るものは用意してあるはずです。王様も褒美の屋敷を誰かが使っていると分かれば、安心するはずです」
「…………」
これはむしろ、奴隷っていうよりも、愛人か何かを金で買っただけなのでは?
いや、嬉しいというよりも、困惑しかない。今までは安宿の貧乏生活だったのだ。娼館でも、ネズミがうろつく汚い部屋を使っていた。それなのに、こんな庭付きのお屋敷を与えられても困る。しかも使用者は私だけ。掃除は一体だれがやるんだ。
「あの、その、夜伽とかはどうするの? やらなくていいの?」
「夜伽? あぁ、夜のお世話ですか? 確かに奴隷にはそう言ったものもあるんですね。うーん。そうですね。気が向いたら頼みます」
え? 気が向いたら? 21歳って、盛りの付いた年齢じゃないのか? 男だったら、毎日発情状態ではないのか? まさか、私は好みではないとか?
「リーナさんは美人ですけど、出来れば僕は好きな人としかしたくないんですよね。だから、リーナさんと夜を一緒にするのは気が引けるというか」
どうやら、清純なオトコのコらしい。今時珍しい人物である。男なのに、ガードは固い。私の股間のガードはすでにないというのに、これはひどい差別だ。
「いや、でも、困る。こんなところで一人にされても、こんなお屋敷、一人では使えない」
「えぇ。やっぱり駄目ですか? どうしようかな。使用人を雇うのも面倒くさいしなぁ。かといって、王様に屋敷を返品するわけにもいかないし」
ソラ君は腕を組んで悩んでいるが、仕方ないとあきらめた。
「今日は僕の借りている倉庫に来てください。そこで考えましょう。一応、ベッドとお風呂、トイレは完備していますんで、大丈夫です」
「あ、ありがとう」
なんで礼を言わなければならないのか不明だが、とにかくソラ君の借りている倉庫に行くことになった。
そこがまたすごかった。
倉庫は、埠頭にある、34番倉庫っていう、どこにでもある倉庫だった。湾内に面した、埠頭の倉庫だ。業者の貸倉庫が並んでいて、ソラ君はそこの倉庫を一つ借りたと言っていた。
中に入ると、倉庫には大型のランドビークルが駐車してあった。ランドビークルとは、魔力で動く自動車のことで、世界各国で流通している自動車のことだ。少しお金を持っているならば、一般人でも手に入る代物だ。
一般的に普及しているビークルではあるが、ここにあるのはけた違い。大金持ちでも買えそうにない、装甲車のような超大型ランドビークルがあったのだ。
「僕はこのビークルの中で寝泊まりしています。キャンピングカーは老後の夢だったんで、本当にうれしかったですよ。王様には感謝ですね」
「きゃんぴんぐかー? 老後の夢?」
「あぁ、こちらの話です。さぁ中にどうぞ」
案内されて入った車内は、豪華そのもの。ビークルの中とは思えないほど整った室内だった。高そうなソファに、大型の魔石冷蔵庫がずらりと並んでいる。流行の「オセロ」もあった。
「後で、オセロで遊びますか?」
「い、いいの? 私は奴隷だけど、遊んでいいの?」
「僕はリーナさんを奴隷扱いしませんよ。だから遊びましょう」
「あ、ありがとう」
オセロはギルドの奴らと賭けをして何度も遊んでいる。一年くらい前に王都で開発された玩具だが、すごく流行っている。異国の商人が開発したと言っていたが、まさか……。
「それじゃ、お風呂浴びてきてください。ご飯の用意をしておきます」
「え? お風呂まで使っていいの?」
「いいですよ。服はフリーサイズの浴衣があるんで、それを着てください」
「ゆかた?」
「脱衣所に用意しておきますんで、入ってきてください」
そう言って、ソラ君はキッチンに消えた。包丁を叩く音が聞こえたので、料理をしているようだ。
「一体。どうなってしまったんだ。さっきまで娼館にいたのに、どうしてこんなことに? 夢でも見ているんじゃないの?」
豚貴族の顔と汚いイチモツを見なくて済むのはうれしいが、現実に心が追いついてこない。
「まぁいいや。お風呂に入ろう」
★★★
それから私は風呂に入り、ゆかたを着て、ソラ君が作ってくれたチャーハンと漬物を食べた。涙が出るくらいうまくて、本気で泣いてしまった。
オセロもやったが、ソラ君には一回も勝てずに終わった。この子は強すぎた。
最後に、キングサイズのベッドに二人で寝ることになったが、何も間違いは起きなかった。彼は本当に寝るだけで、私に手を出してくることはなかった。
豚貴族の激しい劣情を真に受けてきた私にとって、これほどの肩透かしはない。こんなに淡白な男の子がいるとは思わなかった。
そして朝起きると、知らない天井が目に入る。昨日連れてこられた、巨大ランドビークルの天井だ。私がソラ君に買われたことは夢でもなく、現実であった。
「今日は王様との謁見があるから、ドレスを着てね」
「え!?」
もう、何度「えっ」と言ったか分からない。王様など雲の上の人だ。まさか生きているうちに謁見できるとは思わなかった。
「ドレスって言われても」
「屋敷にあるから、屋敷に行きましょう」
言われて、ランドビークルを発信させて屋敷に向かう。もちろん、ソラ君が運転する。
めちゃくちゃデカいランドビークルが街中を走行したので、ものすごい人に見られる。相当な人の目にさらされたが、運転席は高い位置にあるので、誰かに顔を見られることはない。
上から人を見下ろして、豪華なランドビークルで街中を走るので、すごい優越感が生まれる。それと同時に、このビークルなら、どこまででも行けそうな雰囲気になる。
なんだか、自分が奴隷ではなくなった気分になり、すごくウキウキしだす。過去、これだけウキウキしたことはない。
「どうです? 楽しいですか?」
「すごく楽しい!! このままどこかに行きたい!!」
私の冒険者魂がよみがえりそうだ。ダンジョンで一攫千金を当てるために、冒険者になったのだ。いつのまにやら奴隷落ちしていたが、本来の私は、女冒険者なのだ。
「僕と同じ気持ちを持ってくれる女性で助かりました。汚いダンジョンや、未踏の大地を目指すのは嫌いな女性が多くて、僕は辟易していたんです。夢を追い求める女性は、僕は好きですよ」
ソラ君が初めて私を褒めてくれた。なんだかちょっぴりうれしかった。
「でも、今は王様との謁見です。社会のしがらみは、ファンタジー世界にもあったんですね~」
ふぁんたじー世界? また変な言葉を言っている。ソラ君は会ってから不思議なことばかり言う。
「さ、屋敷に到着しますよ~」
窓の外を見ると、昨日見た巨大な屋敷が見えた。やはり夢ではなさそうだ。
★★★
屋敷についてドレスを着る。初めて着たので、いろいろとボタンを壊したが、気にしないでおく。
そのまま王様の所に行って、謁見開始。私はただソラ君の後ろで頭を下げているだけの存在。たくさんの騎士様に囲まれ、すごく息苦しい。過呼吸になりそうだ。
「ソラよ。今回のアルテーネ王国の動きをどう見る。やつらは和平に応じると思うか」
「応じると思いますよ。始祖竜を倒したことにより、こちらは莫大なアドバンテージがあります。お金にも、名声にも。勢いが乗った我が国を相手にするのは、アルテーネ王国にとってなんの利もないでしょう」
「確かにそうだが、アルテーネ王国は、エルフと同盟を結んでいる。我が国はエルフたちを奴隷にしている。そこが問題だ」
「なら、僕が直接エルフの国に言って、交渉をしてきましょう」
「どんな交渉をするつもりだ。勝手な行動はさすがに許可できんぞ」
「始祖竜の一部と、全エルフの奴隷解放。それを交渉材料にすればすぐに彼らは和平を申し出るでしょう」
「しかしエルフの奴隷解放は簡単にはいかんぞ。名だたる貴族がエルフを奴隷にしておる」
「そうですね。ではこんなのはどうでしょう……」
なんだか、謁見とは言いつつも、ものすごく混み合った話をしている。軍議でもないのに、軍を動かすかどうかまで話をしている。ソラ君は並みの冒険者でないことは、これで明らかだ。そして、ここにいる私は場違いすぎる。
すごく気まずい。どうして私はここにいるんだろう?
あれ? 奴隷娼館にいたころよりも、心が苦しいな。大貴族たちの視線が、私に突き刺さっているぞ。あの女は誰だ? どこの貴族令嬢だと、そんな声が聞こえてくる。ただの奴隷なのに、勘弁してほしい。
奴隷娼館から抜け出したと思っていたのに、私の人生はルナティックモード爆進中だった。私は貴族の腹芸など出来ないし、頭の悪い冒険者あがりの女だ。剣や魔法そして、腰を振るしか能のない女だ。ここにいるべきではない。
そう思ったが。
「あ、王様。彼女が僕の大切な人です」
大切な人だって!? 奴隷でしょ! 言い替えないでよ!
「ほう。ついに良き相手を見つけたか」
「はい。これで僕は見合いをしませんよ。いいですね?」
「分かった。だが、彼女をきちんと守れよ。暗殺されるかもしれんぞ」
暗殺!? どうしてそんなことに!?
「そうですね。分かりました。気を付けましょう。では、私はエルフの国に行ってまいります」
「分かった。通行証は出しておく。気を付け行ってくれ」
「はい。では行ってきます社長」
「謁見の間で社長というのは止めろと言っただろ」
「いや、僕の生まれ故郷で王様に似た上司がいましてね。だからすごく会話しやすくて」
「うーむ。異世界の国か? なんだか、けなされているのか、褒められているのか分からんな。まぁいい。とにかく頼むぞ」
「了解しました、社長」
こうして、私はソラ君との旅が始まった。ほぼ無理やり、始まった。
多分、娼館でソラ君と目が合わなかったらこんなことにはならなかった。ずっと娼館暮らしで、豚貴族に腰を振って生きていた。腐って生きてた。だから、こんなことになるはずはなかったのに、今はソラ君とビークルに乗って、道なき道を走ってる。エルフのいる樹海目指して走っている。
ソラ君に出会って素晴らしいことはたくさんもらっているけど、やっぱり私の人生ルナティックモードは変わらない。むしろ彼のせいで、常に命が危険に晒されてる。
でも、すごく生きてるって感じがする。すごく、人生が充実している感じがする。
なんだか私だけ味わうのは嫌だから、娼館にいた子たちをランドビークルに乗せないかと言ったら、ソラ君はこう言った。
「いや、リーナさんを好きになったから、このビークルには乗せたくないな」
「え……好きになった?」
「うん。出来れば、今日から夜のお世話をお願いします」
「え!?」
いまさらベッドインですか!? しかもそんな言い方ってある!? こいつ、乙女心を分かってねぇ!
「そうだね。娼館にいた子たちが気になるなら、屋敷の使用人にしよう。それなら買い上げてもいいよ」
「…………」
なんだか、ソラ君の気持ちがよく分からない。
だけど、美少年ショタっ子のソラ君が私を好きになったのなら、ちょうどいい。真っ白なソラ君の体を真っ黒に染めてあげてやる。
私は、グッフッフッフと笑ったのだった。
ヽ(´∀`)人(・ω・)人(゜Д゜)人ワショーイ
中途半端だけどおしまい。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。顔文字は気にしないでください。誤字脱字、物語の展開、文章表現、目をつむってください。感想欄で叩かれた場合は作者は心を閉ざします。叩くくらいなら感想を書かないでください。気を付けてください。