魔力調律師
主人公は喋れません。
作者はヴァイオリンの事はよくは知らないので何となくです。
『レイ、この世界には魔力が乱れる事がある。お前はその魔力の乱れを調整しなければいけないよ』
ある時、師匠は私にこう言った。
その時まだ私は幼かったから師匠の言葉を殆ど理解していなかった。
その言葉の意味を知ったのはもう少し後だ。
ガタゴトと馬車が揺れる。
(早く着かないかな...)
かれこれ数刻も馬車に乗っていると身体のあっちこっちが辛くなってきた。
「ほら、お嬢ちゃん着いたよ」
その言葉と共に馬車が止まるのが分かった。
私は荷物を持ち馬車を降りる。そこは森だった。私はその事には気にせず乗せてくれたおじさんにお金を渡す。
「にしてもお嬢ちゃん、こんな森で良いのかい?」
私は縦に首を振る。何せこの森でやる事があるのだから此処で降りなければいけない。
「そうかい...しかし気をつけるんだよ」
私は縦に首を振って馬車を見送る。
見送った後、私は下ろしていたローブを深く被り森に足を踏み入れた。ざくざくと草木を掻き分けながら森の奥に進む。
(...もう少し奥かな)
奥に進めば進む程、魔力が薄くなっていくのが分かった。そしてそれに伴う様に森に生えている草木が枯れている。
(んー、ここら辺かなぁ)
私は立ち止まり辺りを見渡す。
そこは魔力ががかなり薄く植物も枯れてしまっていた。恐らく此処が乱れの中心だろう。
(さっさと調律しちゃいましょう)
私はそう結論付けると左手に自分の魔力を集める。すると硝子の様に透明な美しいヴァイオリンが姿を現した。そして同じ様に右手に魔力集めるとヴァイオリンを弾くための透明な弓が現れた。
(今回は早めに終わりそうですね)
そんな事を考えながら私はヴァイオリンを構える。
そして弓でヴァイオリンの弦を弾き美しい旋律を奏で始めた。
すると薄れていた魔力が少しずつ濃くなっていく。演奏を続けると枯れていた草木が若々しく色を取り戻していく。
(...これぐらいで良いでしょう)
調律を終えるとそこには枯れた草木はなく普通の森と変わらなかった。
(ふーっ終わったー)
滞る事無く終わった事に一息つく。
(やっぱり調律した後は怠いなぁ)
私は近くにあった切り株に腰掛けた。
私はレイ
魔力調律師だ。