99.シロカに黒い瓶について聞いてみました
俺は地上に降り、そして落とした瓶を拾い上げる。
うん。
傷一つついてない。
本当にとんでもない素材なんだな、この瓶は。
持った感じだと普通に固いし、何の変哲もない瓶のようにしか見えないんだけどな。
こんなにスゴい瓶なら、さぞ高く売れるんだろうな。
ちょっと売却を試してみるか。
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”白い瓶”を売却しますか?
売却額 0B
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あれっ、0Bなの?
というかこの”白い瓶”という表記、どこかで見た事があるぞ……
あっ、そうだ、思い出した!
俺がまだトカゲだった頃に見かけた謎の瓶があったけど、それで見た事があるんだ!
確か最初見かけた時は黒い瓶だったけど、俺の体が瓶に触れて、瓶が白くなったら売却出来るようになったんだっけ。
あれは結局何だったんだろうな?
「なあ、シロカ。ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」
「あらっ、何かしら? もしかして瓶の素材についてもっと知りたくなっちゃった感じですこと? 聞かれてもわたくし分からないですわよ?」
「いや、それも気になってはいるけどもっと聞きたい事が他にあるんだ」
瓶の素材がどういう素材で出来ているか。
それが分かれば色んな道具に応用できそうで便利そうだが、今回の主題はそれじゃないんだよな。
まあ、どちらにしろシロカは知らないみたいだから聞きようがないんだが。
「もっと聞きたいこと? 詳しくお聞かせ頂いてもよろしくて?」
「この瓶って基本的に白いよな? これが黒くなる事ってあるのか?」
「瓶が黒くなる現象……よくご存知ですわね。確かに黒くなる事はありますわよ?」
「そうなのか。どういう時に黒くなるのか教えてくれないか?」
あの黒い瓶からは何も出てこなかった。
つまり中身は何もなさそうだから、形がないものがあの中に入っていたのではないかと思うのだ。
その推測は果たして合っているのか……
「分かりましたわ。実は魔力の入ったものを瓶の中に入れると変色するんですのよ」
「魔力の入ったもの? それってどういう……」
「言葉だけじゃちょっと分かりにくいかもしれないですわね。試しにエンラさんの瓶をお借りしてもよろしいかしら?」
「ああ、構わないが……」
そう言葉を交わした後、俺はシロカに白い瓶を渡す。
それからシロカは地面に生えている草を引っこ抜き、その草に対して緑色の光をあてる。
そしてその草を白い瓶の中に入れて蓋をした。
すると……
「今わたくしは魔力を含ませた草を瓶の中に入れましたわ。その後どうなるか、よくご覧になって下さいね」
そう言うとシロカは瓶を地面に置き、そしてその場で座ってくつろぎ始めた。
多分変化がでるまでに時間かかるんだろうと察した俺も、シロカと同様、その場でくつろぐ事に。
うん、草原に座ってくつろぐのって結構気持ち良い。
暖かい日差しと穏やかな風をあびているとだんだん眠くなって――
「エンラさん、エンラさん。瓶が変化しましたわよ!」
あっ、ついつい寝てしまったみたいだ。
時計を見れば14時17分。
確か寝る前は13時位だったから一時間ほど寝ていた事になるな。
果たして一時間かけるとどう変化しているのか……
俺は目をこすってから、瓶の様子を見てみた。
するとそこには薄く黒みを帯びた瓶の姿が!
って、あれ?
何か俺が想像した黒さと違うんだが。
「あんまり黒くならないんだな、この瓶。まだ変化途中か?」
「いえ、これが最大限変化した様子ですわよ。まだ黒くなるって一体どれ位の黒さを想像されていらっしゃったんですの!?」
「えっと、これ位かな」
俺はフライパンを女神倉庫から取り出し、フライパンの黒い部分を指差した。
「この黒さって……真っ黒じゃないですの!?」
「やっぱりそんな瓶はありえないものなのか?」
「そうですわね……確かに魔力が濃ければ濃いほど黒くはなっていきますわ。ですけど、そこまで黒い瓶をわたくしは見た事がないですわね。エンラさんにはそういう瓶に何か心当たりがあるのかしら?」
「ああ。実はな――」
俺は黒い瓶と白い瓶について話す事にした。
歩いている時に黒い瓶を見つけたこと。
黒い瓶を避けて歩いたはずなのに黒い瓶に触れる事になり、その直後に白い瓶に変わったことを。
俺の話を聞いたシロカは首をかしげていた。
やっぱりこんな話を聞いてもピンとこないよな……
だいぶ前の出来事という事もあって、俺も本当に起きた事なのかどうか自信がないしさ。
「その変化した後の白い瓶は残っておりますの?」
「いや、気味が悪いから捨てちまった。悪いな」
「まあ無理もないですわよね。わたくしも正直気味が悪いと思いますもの。話を聞いているとまるで瓶が独りでに動いたように感じますし」
「そうなんだよな。まさかカモメ達の瓶にはそんな機能も……!?」
「ないですわよ。もしそんな機能があったらわたくしもビックリですわ」
「ですよねー。うーん、そうなるとあれはただの勘違いだったんだろうか?」
「そうですわね。色々と不可解な事が多すぎますし、よく分からないですわよね。何かその後おかしな事は起きたのかしら?」
「いや、特には……いつものんびり気ままに過ごせているぞ」
「なら、あまり気にしなくてもいいのではないかしら? 分からない事を考え続けて悩むのは体に毒ですわよ?」
「そうだよな。やっぱりそれが一番かもしれないな」
別に今の所、その出来事があってから特に体に異変は起こっていないし、健康そのものである。
鑑定鏡で見ても正常だし、キュビカから特に何か言われた事もないから、多分大丈夫なんだろう。
一応念の為キュビカにもこの事は相談してみるか。
万が一キュビカも分からないのなら、もうこの件は気にしないようにしよう。
瓶の実験が終わった後、俺はシロカにカモメの集落を一通り案内してもらった。
あと、手紙入りの瓶を配達する郵便局みたいな施設とかも見学してみた。
どうやら配達してほしい瓶は直接その施設までみんな持ってくるらしく、後はそれを届けるだけのようだ。
ちなみに宛先は風の魔法を刻んでいるのだとか。
風の魔法って色々と使い方があって便利なんだと思う俺なのであった。
そして気付けば日も暮れようとしていた。
時刻は午後5時12分。
そろそろ帰らないとキュビカがうるさそうだな。
「シロカ。そろそろ日も暮れるから俺はもう帰るわ」
「あら、残念ですわ。もうそんな時間なんですのね。本当は一泊して頂けると嬉しいのですけれど、キュビカさんが怖いですものね……また是非いらっしゃって。いつでもわたくし達は歓迎致しますわよ」
「ああ、そうさせてもらうよ。今日は色々と案内してくれてありがとな、シロカ」
そう言葉を交わして俺は南の方向へ飛んで行って、シロカのエリアをあとにした。
高速飛翔を使ってささっとイタチのエリアを通り過ぎ、キュビカのエリアへと突入。
そこからは数分だけ通常飛行すれば、いつもの薬草の匂いが漂ってくる。
どうやら着いたみたいだな。
俺は高度を落として着陸する。
「エンラ、帰ったか! 早く夕食を寄越すのじゃ! 腹が減ってわらわは死にそうなんじゃー!?」
うん、いつものキュビカだ。
この騒がしい声を聞くと何故か安心感を覚えるんだよな。
俺の家に帰ってきたって感じがするんだ、不思議とな。
「はいはい。今から夕食を出すからみんな一列に並んでくれー!」
お腹を空かせた仲間達がぞろぞろと列を作っていく様子を俺は微笑ましく眺めるのだった。
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七十一日目:残金5349550B
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支出:なし
収支;+0B
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