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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
四章 ウィンターショッピング
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98.カモメ達が瓶を生産する所を見学してみました

「こちらで私達は瓶を生産しております」



 カモメに案内されたその場所には、大きな魔法陣みたいなものが描かれている。

 そしてその中心に向かって何十羽ものカモメが祈りを捧げている様子が見えた。


 そのままその様子を見ていると、一羽一羽のカモメ達から緑色のオーラっぽいものが流れ、それが魔法陣の中央に収束しているのが分かる。

 そしてしばらくすると、魔法陣の中央に集まった緑色のオーラの塊が瓶の形を成し、そして、白い瓶が一つ完成した。


 ……あれっ?

 俺が想像していた瓶の作り方と全然違うんですけど?

 瓶っていうのは、液体の金属を流し込んで瓶の形にして、それを冷やして云々みたいな、いかにも工場的な工程を期待していたんだけどなぁ。

 これじゃ全然工場見学ではないじゃないか。


 というか、よくよく考えれば、そもそも調理器具さえまともにない環境で工場の技術だけが発達していると思う方が無謀か。

 偏った発達を遂げる可能性はなくもないから絶対ないとは言い切れないんだけどさ。


 でもこれはこれでファンタジーっぽくて、どういう仕組みで瓶が作られているのか興味が湧くな。

 ちょっとシロカに聞いてみるか。



「シロカ、あの瓶って魔法で作っているのか? 魔法陣の上で瓶を作っているようだが……」

「はい、そうですわ。正確に言えばただの魔法ではなく、集団魔法"複製術"を発動させて作っておりますのよ?」

「複製術……つまり、何かをコピーしているという事か?」

「その通りですわ。実はわたくし、とある人間から手紙の入った瓶をもらった事がありまして。そしてそれをとても気に入ったわたくしは、他の方々にも同じ幸せを届けられたらと思ったのです。そのような経緯から、もらった瓶を複製しては、他の方々に瓶を届ける事をしていますの」



 へえ、そうだったのか。

 つまり、瓶は人間が製造したものって事だよな。

 この世界の人間には瓶を作る技術があるっていう事か。

 結構技術水準は高そうだな。



「複製し続けているという事は、どの瓶も全く同じものという認識でいいのか?」

「ええ、そうですわよ。何しろ集団魔法で作っているものですから、複製した瓶とオリジナルの瓶には性能差はほとんどありませんの。事実、今は複製した瓶を複製している状態ですわね」

「へぇ……それで劣化しないものなのか?」

「全くしていない訳ではないでしょうね。でも実感するほどの差はないですし、特に使う分には支障はないはずですわ」



 なるほど。

 確かに使ってみて特に支障がないレベルの劣化なら誤差と言ってしまえば済むだろう。

 それなら複製して作りまくっても問題ないように思えるな。



「ドラゴン様、せっかくいらっしゃったのですから、一つ瓶を試しにお持ち帰りになりませんか?」

「えっ、いいのか、貰っちゃって?」

「ええ、もちろんです! むしろこれ位であんな美味しいものをご馳走になったお礼になるとはとても思えないのですが……」

「いや、もう十分だよ。その感謝の気持ちを伝えてくれる事が一番俺にとっては嬉しいんだからさ。でもせっかくだからこの瓶はもらっておくことにしようか」

「分かりました。ではこちらをお持ち下さい!」



 そうカモメが言うと、一つの白い瓶を渡してきた。

 うーん、やっぱりこの白い瓶、見た事あるんだよな。

 近くで見ると一層既視感を覚える。

 いつ見たんだっけか……?


 しばらく白い瓶をじーっと俺が見つめていると、シロカが声をかけてきた。



「エンラさん、どうしましたの? そんなに瓶をずっとご覧になって?」

「いや、何かこの瓶を昔、どこかで見た事があると思ってな……」

「どこかで、ですか。そういえばエンラさんはキュビカさんのエリアで誕生されたのですよね?」

「ああ、そうだが、それがどうかしたのか?」

「わたくし、だいぶ前からキュビカさんとは文通しておりますの。その関係でちょくちょく使いのカモメがキュビカさんのエリアに手紙入りの瓶を運んでいましたわ」

「ああ、確かにキュビカが手紙を受け取った時もそんな感じの反応だったな」

「ですからあまり考えたくはないのですけれど……瓶配達をしていたカモメが誤って瓶をキュビカさんのエリアに落としてしまった可能性があると思うのですわ。そういう瓶のうちの一つをエンラさんがご覧になったのでは?」



 なるほどな。

 瓶配達のカモメが瓶を落としてしまう、か。

 あのカバンから瓶を落とすなんて余程の事がない限りはないと思うが……まあ有り得ない話ではないんだろう。

 でもそれで疑問に思う事がある。



「でもさ、シロカ。カモメが飛んでいる高さから瓶を落としたら普通、瓶って割れるんじゃないか?」



 そう、高い所から落としたら瓶は割れるのではないかという事だ。

 ここの世界が無重力というのであれば、もちろん高さなんて問題にならないだろうが、残念ながらここは地球と同じく重力がある。

 つまり、高い所から落とせば瓶は割れるのだ、普通は。



「あらっ、そういえば言ってなかったですわね。この瓶は高い所から落としても割れない素材でできていますのよ?」

「へっ? そ、そうなのか?」

「疑問に思われるなら一度試してみましょうか。えっと、あの辺りなら人気もなさそうで実験できそうですわね」



 シロカが示したのはちょっと集落の外れにある比較的平らな土地。

 カモメもいない場所だから、瓶を落としても問題なさそうだな。


 俺は瓶をくれたカモメに改めて一言お礼を言ってから、シロカと一緒に空き地へと向かう事にした。



 空き地に到着した後、俺とシロカはその上空へと飛び上がる。

 地上からおよそ二、三十メートルはあるだろうか。

 そのような位置まで来て滞空する俺達。



「ではエンラさん、遠慮なく持っている瓶を落としてみて下さいな」

「あ、ああ。何だか緊張するな……」



 地上近くにはカモメはもちろん、動物の姿も見当たらない。

 いくら落としても安全だと分かっていても、やはり緊張するものは緊張するな。

 でも意を決して、俺はそっと瓶を地上に落とした。


 瓶は地上に向かってものすごいスピードで落下していく。

 そしてついに瓶は地上へと到達し――そのまま割れる事なく静かに横たわった。



 へっ!?

 割れない事は想像出来なくもなかったが、まさかのノーバウンドだと!?

 てっきり跳ねて衝撃を緩和するものだと思っていたのに、それもないとは……

 まあ、瓶がバウンドするというのも奇妙な光景だとは思うけどさ。



「ふふっ、驚いてますわね。実はわたくし達の瓶は衝撃を吸収する素材で出来ていますの。ですから高い所から落下しても地上の生き物に影響を与える事はありませんのよ? ですから本当はわたくしが下に立って、そのわたくしに向かって瓶を落として頂いても全く問題ないのですわ!」



 ほ、ほう……

 それはスゴイな。

 あの瓶は思った以上にスゴいものだったみたいだ。

 ちょっと異世界の技術なめてたわ……



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