93.露天風呂を作ってみました
翌日。
キュビカ達の獲物を売却して朝食をとったら、家の中でぐーたらと過ごす。
うん、予定通りだ。
だけどやっぱり何もしないのって退屈だよな。
何かよい暇潰しになる事はないだろうか……?
「ふー、やっぱり暖まるのっていいわよね。ちょっと窮屈なのがたまにキズだけれど」
「まあ家の中だから仕方ないよな。狭い空間だからこそ熱気をとどめておくことが出来るわけだしさ」
そう。
暖かさを持続させるにはその空気を逃さない必要がある訳で。
故に外など外気にふれるような所で暖まる手段は存在しないのだ。
あれっ、でも何かひっかかるな。
本当にその手段は存在しないのか?
外にいながらにして暖まる方法、暖まる方法……
うーん、あっ、あれがあるじゃないか!
露天風呂!
露天風呂は外にあるものだ。
そして熱いお湯に浸かることで、寒い外にいながらにして暖まる事が出来るだろう。
いい事考えついたな、俺。
前々から風呂は作りたいと思っていたし、せっかく暇なんだからちょっくら作ってみるか。
まず作る場所を決めないと。
露天風呂はやっぱり気軽に入りたいから、出来れば家の近くに作りたいよな。
そしてさらに眺めの良い所に作っておきたい。
暖まる事も確かに露天風呂の良さの一つではあるが、外の景色を眺める事が出来るのも露天風呂の良さだよな。
この辺りで眺めの良い所といえば、あの辺りだろうな。
ちょっと高台になっている所があるから、そこに湯船を設置しよう。
まずは湯船が設置できるようにちょっと場を整えるとするか。
俺が家の外に出て行くと、気になったコクリやカトカ達が何するか聞いてきたので、露天風呂というものを作ると伝えた。
するとみんな手伝ってくれるというのでお言葉に甘える事に。
多分みんなも暇していたんだろうな、きっと。
ということで、地面を軽く掘ったり、平らにしたりする事をみんなと協力して行う事にした。
ちなみに昨日の雪だるまとかまくら作りでこの周囲の雪を使い切ってしまっているので、雪かきの手間はなかった。
遊びながらにして雪かき出来るのって素晴らしいよな。
大人になるとそんな余裕はなくなるものだが。
20年も生きてない俺でさえ、そうだったのだからさ。
時間に追われる現代人って大変だ。
今は時間が有り余っているから、のほほんと暮らさせて頂いてますけど。
はい、ドラゴン生活楽しいです。
色々考えている間に土地の整備は完了していた。
さすがにみんなで協力してやると早く終わるな。
さて、後は湯船を設置するだけなんだが、材質はどうしたもんかな?
せっかくの露天風呂だし、やっぱり天然材質な湯船の方が風情があっていいよな。
なら、ここは……
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以下の物を購入しました。
残り所持金 5308850B
アレノスヒノキ風呂 60000B
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うん、ヒノキ風呂なら天然材質だから良さそうだろう。
ちなみに最高級ヒノキ風呂というのもあったんだが、そのお値段はなんと6000000B!
あまりの値段に俺も驚いたわ。
普通のヒノキ風呂は600000B。
これも結構な高さだったので、一番割安なアレノスヒノキ風呂にしたという訳だ。
一応安さには理由があるんじゃないかという事で、小さいサイズの60Bの浴槽を買ってみた所、特に問題なさそうだったので、購入を決めたのだ。
一応みんなが一緒に入れるように、あと、重さに耐えられるようにということで、だいぶ大きさと厚みに余裕を持ったものを指定している。
だからこそ、普通の人間サイズの浴槽よりも高めのお値段になってはいたりするのだ。
それでも6万の出費で済むのは結構ありがたい。
アレノスヒノキさまさまだよな。
さて、早速浴槽も購入した事だし、お湯を張るとしますか。
露天風呂といえば温泉で、お湯が湧き出るイメージがあるかもしれない。
だが俺が住んでいるこの場所の近くには火山がないのだ。
つまり、自然に湧き出るお湯がないのである。
そういう状況にあるので天然露天風呂の実現は出来ないのだが、贅沢言っていてもしょうがない。
イタチのエリアのさらに北東に行けば火山があるから、その周辺なら天然露天風呂も作れそうだけどな。
でもそんな所までわざわざ風呂に入りに行くのも面倒だし、現実的ではなさそうだったりするという訳だ。
そんな事情があるので、お湯はもちろん自分で持ってくるしかない。
川まで汲みに行くのもバカバカしいので、水はスプラッシュの魔法で調達。
そしてその水をファイアの魔法で温めて完成という訳だ。
魔法熱湯製造器というものを購入して、俺のファイアの魔力をそこにつぎ込み、設定を40度にして、浴槽に入れておく。
するとその機械がお湯を常に40度に保つように温めてくれるという訳だ。
魔力が切れたらまた補充するだけでいい訳だし、便利な道具もあるもんだな。
「よし、これで完成だな」
「これで完成なのか? ただ入れ物に熱湯が張られただけに見えるのじゃが……」
「そうだ。これが露天風呂なんだ。だが、たかがお湯と侮る事なかれ。これには様々な魅力が詰まっているのさ!」
ふーんと興味なさそうな顔をするキュビカ。
ふん、分かってもらえないのなら自分だけが楽しめればいいもんね。
まずは体をサイズチェンジで小さくしてから、続いてウェイトチェンジで体を軽くするっと。
それから助走をつけて……とりゃっ!
ざっぱーん!
俺が浴槽に飛びこんだ事により、お湯が宙へと舞い上がる。
うん、こういうの一度やってみたかったんだよ。
大きい浴槽に思いっきり飛び込むって事をさ!
ちなみに元の世界では一度もやった事ないです。
だって恥ずかしいじゃない。
人目が集まる大浴場でそんな事やるなんてさ。
この世界の動物達にはそもそも風呂に入る習慣がないからこそ、俺もこういった事を思い切ってできるのだ。
俺が浴槽に飛び込む様子をみんな呆然と眺めているようだ。
ちなみにその飛び跳ねたお湯が何羽かの鷹達にかかったようで、体をぶるぶる振って水気を払っている。
すまないな、鷹達。
ちょっとやってみたかっただけなんだ。
今度からはしないからさ、許して?
俺はそう内心思いながら、そのまま浴槽に入ってくつろぐ事に。
やっぱり風呂って気持ち良いよな。
湯加減もちょうどいい。
風呂に入ったのって人間の時以来だから、もう二ヶ月ぶり位になるんだよな。
そりゃ久しぶりの風呂は気持ち良い訳だ。
体を小さくした事により、体を水面にプカプカ浮かせてもまだ浴槽のスペースには全然余裕がある。
大きな浴槽だから熱量も大きいし、大量放出される湯気が体を包み込んで気持ちが良いんだよな。
体があたたまるぅ。
「エンラったらずいぶんと気持ち良さそうね。ちょっと私も入ってみようかしら?」
そういうとコクリは助走をつけて、そして浴槽へと飛び込んでくる!
ざっぱーん!
そしてコクリが飛び込んだ事によって俺はバランスを崩し、危うく溺れそうになる!
「こ、コクリッ!?」
「ごめん、ごめん。つい私もやってみたくなっちゃって。でも本当に爽快感あるわね、これ。それにこのお湯、とっても気持ち良いわ。エンラがとても穏やかな顔をしてくつろぐ気持ちも分かるわね」
コクリも風呂の良さを分かってもらえて何よりだ。
だがもう少し浴槽に既に入っている俺への配慮ってやつをな……
「それではイチガ隊、行かせて頂きます!」
そう言うとイチガを先頭にして四羽の鷹が助走をつけて思いっきり浴槽に向かって飛んで突っ込んでくる!
ざっぱーん!
「続いてニーガ隊。漆黒の翼が湯煙に舞う……!」
ざっぱーん!
「ウチらサンガ隊も行かせてもらうでー!」
ざっぱーん!
「ターガ隊、最速で主の元へ向かうぜ!」
ざっぱーん!
「ではキュビカ指揮隊長、お願いします!」
「ふふふ、ついにわらわの出番が回ってきたようじゃな……」
えっ?
何だよ、このノリ?
それに、何で急に乗り気なんだよ、キュビカさん?
おいおい、今のまま飛び込んだらまずいって。
入るつもりならその前にサイズと重さを変えてだな!
しかし、あまりの湯煙にキュビカの姿がよく見えない。
くそっ、このままじゃキュビカに干渉できないじゃないか!
「キュビカさん、ストップ! ストーップ!」
「ではキュビカ指揮隊長、いざ、参るのじゃ!」
ドスドスドスと響くキュビカが走ってくる音。
ワクワクする鷹達対し、これから起こるであろう事を想像して焦る俺。
そしてついに――
ざっぱーーーん!!!
キュビカが飛び込んだ事により、浴槽にあったありとあらゆるものが全て空中へと投げ出される。
そして浴槽にあったはずのお湯がなくなり、残されたのは空の浴槽に入った俺とコクリ、キュビカ、鷹達だけになってしまったのだった。
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七十日目:残金5288850B
収入:なし
支出:アレノスヒノキ風呂60000B、魔法熱湯製造器19940B、ミニ浴槽60B
収支;ー80000B
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