87.雪が降ってきました
最近は日が経つにつれてますます冷え込みが強くなっていくように感じる。
氷点下を下回ることも珍しくなくなってきた。
そしてそんな状態だから、降水があれば当然――
「あっ、お父さん、見て! 何かがヒラヒラ落ちてくるよ!」
「ああ、それは雪っていうんだ。とっても寒い日に雨が降ると、そういう感じになるんだ」
「へぇーそうなんだぁ。何だかキレイだなぁ……」
雪を見て、目をキラキラ輝かせているカトカ。
うん、雪を見るのはいいよな。
雪が降っている時の静けさも風情があっていい。
ただ、積もりすぎるのだけは勘弁して欲しいけど。
「寒いから気が済んだら中に入れよ! 風邪ひいても知らないぞー?」
「うん、分かった。もうちょっと眺めてから家の中に入るね!」
カトカはヒラヒラと降っている雪に夢中のようだ。
そりゃ、初めて見る雪だもんな。
興味が湧くのも不思議ではないだろう。
俺はそんなカトカを少し眺めた後、自分の家の中に入っていった。
家の中はファイアで稼働する簡易暖炉みたいなものを購入して置くことにしている。
ちなみにこの簡易暖炉は女神ショッピングをウィンドウショッピングしている時に見つけたものだ。
この簡易暖炉は一定量の魔力をためこんでおくと、その暖炉がファイアを発動させて、暖房の役割を果たしてくれるんだそうだ。
ちなみにこれのお値段は50000B。
ちょっと高かった。
まあ、でも自分の魔力だけで暖房が使えるから、そこは便利なのかもしれない。
燃料とかがいらないから、追加で何かを買う必要もないしな。
長く使っていれば十分元は取れるだろう。
「お、お父さん……さ、さぶいよお……」
そう言いながらカクカクなぎこちない動きで入ってきたカトカ。
そりゃ寒いからそうなるだろうな、雪が降っている位だし。
カトカには寒さ耐性のスキルはないだろうから、寒さを防ぐ術はないだろうしさ。
でもだからといって寒さを防ぐために服を着せるっていうのもあまり効果は薄いんだろうな。
カトカも俺と同じく変温動物だろうし。
服を着た所で暖まることはできないだろう。
まあそれでもないよりはマシか。
「とりあえずこの家にしばらく暖まっておけ。あと、これを着るといい」
俺は女神ショッピングでカトカ用の服を買ってカトカに渡した。
「これは……?」
「服っていうやつだ。俺が人間の頃はそういう物を着て暖をとっていたんだ。せっかくだからカトカにもってな」
「あっ、でもお代は……」
「それはカレー作りの手伝い料って事にしておく。だから気にしなくていい」
「分かった……ありがとう、お父さん!」
そういうとカトカは俺が渡した服に着替え始めた。
カトカは人型の生物だから、人間の服がピッタリと合うこと。
翼がある訳でもないから、何か服に穴を開ける必要さえないもんな。
……ちょっと羨ましい。
カトカも俺と同じく変温動物だろうから、服による保温効果は薄いだろうが、ないよりはマシだろう。
カトカ自身も自分が着ている服に興味津々みたいだし、喜んでくれているのならそれでいいのだ。
それからもしばらくその場でみんなと暖まっていると、ガサガサと誰かが入ってくる音が。
「さ、さぶぃぃぃ……あっ、暖かい! エンラさん、どうしてここは暖かいんですか!?」
「あっ、イチガか。外は寒そうだよな。ここが暖かいのはそこの機械のおかげだ。ファイアの熱で部屋全体を温めてくれているのさ」
「へぇ、すごいですね……私もしばらくここにいてもいいですか?」
「ああ、構わないぞ」
俺からの許可をもらったイチガは暖炉の近くでぬくぬくと羽根を休ませていた。
イチガの体には雪が付着していたが、それもすぐ解け、だいぶ暖まる事ができているようだな。
「イチガさーん、どこにいるんすかー? あっ、いたっ! というか、ここ、暖かいな!」
「おっ、ターガか。ここは暖かいぞ、お前も来るか?」
「はい、イチガさん! ……ってあっ、イチガさん、勝手に決めていいんすか? ここ、エンラさんの家っすよ?」
「あっ、そうだった! ……エンラさん、ターガもここで休ませてもらってもいいでしょうか?」
「イチガもボケる事あるんだな。まあ、別に構わないぞ。外は寒いだろうしな」
「ありがとうございます、エンラさん!」
そんなこんなで普段外で寝泊まりをしている鷹達もさすがに寒いからか、俺の家へと集まること集まること。
結局十六羽の鷹達が全員家の中に入り込む事態となってしまった。
今の俺の家はだいぶ広いから、俺、カトカ、コクリ、キュビカ、ユニ、クータと鷹達を全員入れてもまだスペースはある。
だがやはり窮屈な事には変わりないんだよな……。
何とかこの窮屈さを解消できないものか……
そうだ!
この家は横に広いだけでなく、縦にも広い。
つまり高さがあるのだ。
であれば、この家に止まり木みたいなものを天井に設置すれば、鷹達はそこで休めるのではないだろうか?
そうと決まったら早速設置だな。
俺は女神ショッピングで足場になるものや、止まり木みたいなものを次々と購入。
そしてそれを天井近くに設置していく。
ちなみに設置するときは空を飛びながらするのではなく、自分の体を無重力状態にしてから設置することに。
くるくる体が回って、結構大変だったが、意外と楽しかったり。
そんなこんなで何とか鷹達全員が休めるほどの空中空間が完成。
「ちょっとこのままじゃ狭いから、イチガ達は今俺が作った所で休んでくれないか?」
「あそこですね? 分かりました。みんな、あそこに移動するよ!」
バサバサっと一斉に移動し始める鷹達。
さすがに十六羽の一斉移動はちょっと騒々しかった。
でも鷹達が上の空間に移動したことにより、俺の家のスペースにはだいぶ余裕ができる。
これでゆったりと休む事ができそうで何よりだな。
こうしてこの日は一日中、家の中でくつろいでゴロゴロしながら過ごした。
そしてその翌日――
「お父さん、起きて起きてー!」
「んー? 何だカトカ? どうかしたのか?」
「外が凄い事になってるんだよー! 本当に凄いんだよー!?」
「あー、分かった分かった。今から起きるからちょっと待っててくれ」
俺はゆっくり起き上がる。
俺が起きた事を確認したカトカははしゃいで外へと駆け出していった。
俺はのっそりと外へと歩みを進めて行った。
入口のすだれをくぐって現れた光景に俺は思わず息を飲んだ。
一面の銀世界。
見渡す限りの白い雪。
日の光を浴びた雪は白銀に光り、まるで宝石のような輝きを連想させられる。
そして全ての音が聞こえずに静まり返った空間。
昨日とはまるで全然違う場所に来たみたいだよな。
グシャッ
俺がその景色に見とれていると何かが俺の顔めがけてぶつかってきた。
それが飛んできた方向を見ると――
「へへーん! お父さんに当たったー!」
「こ、この野郎! 雪玉ぶつけやがったな、コイツ!? 覚悟しろよー!?」
「うわー、逃げろー!」
いきなり雪合戦の勝負を挑まれた俺は、カトカとしばらく雪合戦で戯れるのだった。
カトカは雪合戦初めてのはずなのに、巧みに雪を避けたり当ててきたりする。
俺も最初は適当に流すつもりだったが、あまりに一方的にやられるのも癪なので、高速飛翔を使ったりグランドウォールを使ったりしてついついムキになってしまう。
でも恐るべきはカトカの対応力。
流石に最初は俺に対して為す術もなかったカトカだったが、次第に対応し始め、ついにはスキルを使った俺と互角な雪の投げ合いが出来るようにまでなっていたのだ。
「高速飛翔! ていっ!」
「そこだね、分かっていたよ! とりゃっ!」
くっ、また読まれた。
移動して放ったはずの俺の雪玉はカトカの雪玉と相殺され、カトカの所まで届かない。
それどころかもう一発俺に雪玉を放ってきていたようで、俺はあわててグランドウォールでその雪玉を防ぐ。
コイツ、本当にカトカなのか?
強すぎるだろ……
「エンラ! わらわは狩りに行ってくる! 遊ぶのも良いが、朝食の準備は忘れるでないぞー」
「分かってるよキュビカさん。気を付けて行ってこいよーってイテッ!? 卑怯だぞ、カトカ!?」
「へへーん、油断した方が悪いんだよーだ」
「コイツ……絶対に一発お見舞いしてやるからな!」
キュビカや鷹達から何か微笑ましいものを見ているような目線を感じる。
それを感じて少し恥ずかしく思わないでもないが、とりあえずは目の前にいるやんちゃなガキの相手が先だろう。
絶対に負けてやるものかよっ!
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六十八日目:残金5285050B
収入:なし
支出:鷹の足場など5000B、魔法暖炉50000B
収支;-55000B
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