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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
三章 ビジネスショッピング
84/357

84.クマが店の常連客になったようです

 翌日。

 いつも通りキュビカ達の獲物を買い取ってから、みんなと朝食をとる。

 そしてその後で開店準備を始めようとすると――



「クマさん、随分と早起きなんだな」

「あっ、ドラゴンさん。やっと来てくれたんですね! 待ちくたびれましたよお」



 店の机に体をのせて休んでいるクマ。

 クマの体重は結構なものだからか、重みに耐えかねている机がギシギシ音をたてている。

 その音を聞く限り、今にも机が壊れてもおかしくない。



「えっと……頼むから、その机によりかかるのは止めてくれないか?」

「あっ、ああっ、すいません! ちょうどよい支えがあると思ってつい……!」



 そう言うと慌てて机から体をどけるクマ。

 素直に言う事を聞いていることからして、悪気があってやっていた訳ではないようだな。

 まあ机も壊れてはいないし、この件は不問とするか。



「すまないが、シチューはこれから作る所なんだ。その辺りで待っていてくれないか? あっ、ちなみにその辺りにある物に触るのは禁止な!」

「ひ、ひえっ、わ、分かりましたあ!?」



 今度は椅子によりかかろうとしたクマに注意をする俺。

 全く、油断も隙もあったもんじゃないな。

 悪気なくやろうとしている所が特に恐ろしい。


 注意されたクマは少しシュンとすると、今度は地面にぐたぁと寝っ転がり始めた。

 ……このクマ、全然警戒心ないな。

 俺を見ても何とも思わないんだろうか?

 別にそれでいいならいいけどさ。



 俺はいつものように鍋などを並べてシチュー作りの準備をする。

 その様子をクマは寝っ転がりながらじーっと見ているようだ。

 しばらくクマはそのままの態勢をとっていたが、シチューをあと煮込むだけという段階までくるとクマが動いた。

 シチューの香りが漂ってきたからだろうか、クマが立ち上ってシチューの様子をガン見してくるのだ。

 事情を知らない人が見たら、恐怖で震えあがる場面だろうな、これ。

 だけど相手は所詮、弱気なクマ。

 案の定、俺が軽く注意すると、クマはまたシュンとなって地面に寝っ転がるのだった。



 そうしてしばらく煮込むこと数十分。

 野菜の固さや味をチェックして、シチューが完成したことを確認する。



「待たせたな、ようやくシチューが完成したぞ!」

「ほ、本当ですか!? やったあ!」



 喜んでシチューの鍋に飛びつこうとするクマに対し、俺はグランドウォールを使って壁で防御。

 するとクマは土壁に思いっきり衝突した。

 だけどクマはそんな事をものともしない。

 それでもなお喜んでその場をぐるぐる回り始めて、ついには目が回ってその場で倒れこんだ。

 ……一体何がしたいだろう、このクマは。



 そんなクマをよそに、俺はシチューを鍋から一人分すくいだし、そして店の机へとのせた。



「さあ、今から一名様限定で特別にシチューを販売してやるぞー!」

「はいはーい、ぼくが買いまーす!」



 倒れていたクマはすくっと起き上がり、勢いよく俺の近くまで寄ってきた。

 本当、元気だな、このクマさんは。


 俺はクマから銀貨一枚を受け取って、代わりにシチューを渡す。

 するとクマは満面の笑みを浮かべながら、ふうふうしてシチューを食べるのだった。

 その姿を見ると、ちょっと愛くるしいなと思ってしまったり。



「ドラゴンさん、おかわり!」

「ダメ! シチューは一日一杯まで! また明後日な!」

「えー!? そんなあ!?」



 でもシチューは一日一杯までな所は譲らない。

 甘やかしすぎてはいけないのだ、このクマは。


 俺がそう言うと、残念そうにとぼとぼとクマは帰っていくのだった。





 それからはクマは開店日に合わせて必ず俺の店に訪れるようになっていた。

 しかも大体早めな時間に。


 先程みたいに開店前にもう待っている場合もあれば、開店一時間後辺りに来ることもあった。

 開店前に来てくれる場合は、営業時間に支障がでないからいいんだが、開店後に来られた時は少し困りものだ。

 何て言っても、クマが来ると他の動物のお客さんがみんないなくなってしまうからな。

 営業妨害もはなはだしいのである。

 でもそんな状況も時間をかけるとともに変化していった。



 きっかけはある動物。

 以前タヌキの石を持っていた傲慢なネズミの存在である。

 彼はすっかり俺の店の常連客になっていたのだが、その日はとても冷える日で、みんな今か今かとシチューを待っていた時の事であった。



「みんなシチューが出来たぞー!」



 俺がそう言うと、みんなが一斉に店の前に行列を作る。

 そして列の先頭に並ぶ動物達にシチューを配り始め、ようやくネズミの順番が回ってきた頃――



「ドラゴンさーん、シチューちょうだーい!」



 来た。

 いつもの弱気な食いしん坊クマさんが。


 クマが来た事に気付いた動物達は一目散に茂みに隠れたり、どこかへ逃げ去っていく。

 いつもはそうやってこの場には俺とクマの二人だけになるのだが、今回は違った。

 俺の目の前には並んでいたネズミがその場から動いていなかったのだ!



「あれれー? ドラゴンさんの前にネズミさんがいるよお?」

「次の順番はオレだ。シチューが食べたいなら後ろに並ぶ。それがこの店の鉄則だ」



 ネズミはどうやらクマに対して断固として順番を譲る様子はないようだ。

 クマはいつも来たらすぐにシチューを買えていたので、不思議そうな顔をして首をかしげている。


 ネズミの言葉はクマには伝わらないから、何をネズミが話しているかも理解してないからな、このクマは。



「ああ、クマさん。悪いな。シチューを食べたいならこのネズミさんの後ろに並んでくれ。ネズミさんの方が早くからシチューを食べる為に待っているからな」

「へぇ、そうなんだあ。分かった。並んで待てばいいんだよねえ?」



 そう言ったクマはネズミの後ろの辺りでゴロンと横になり始めた。

 どうやら待つことに対してはクマは寛容のようだな。


 くつろいでいるクマに対し、ネズミは全身に冷や汗を流している。

 恐らく余程無理しているんだろう。

 早く楽にさせてあげないとな。



「はい、これがネズミさんの分のシチューだ。お代を頂いてもいいか?」



 俺がそう言うと、ネズミは銀貨一枚を俺に差し出し、シチューを受けると、そそくさと遠くに去っていく。

 ちなみにクマはそんなネズミの事を気にすることなくいつも通りシチューを食べて帰っていった。



 この日をきっかけに、動物達の間で、列に並んでいる時にクマが来ても逃げなくてもいいという認識が広がったようだ。

 クマが営業時間中に来ても逃げない動物が少しずつではあるが、増え、最終的にはクマが来ても誰も逃げないようになる。

 そして一方クマの方も列に並ぶという決まりをしっかりと守り、どんなに列が長くてもその最後尾でゴロリと横になりながら待つのだった。


 ちなみにクマが列に並ぶようになってから、俺はクマに対しても列を並び直せばシチューをもう一杯頼んでも良いことにした。

 するとクマは大層その事に喜び、どんなに待っても、一日に三、四杯はシチューを平らげるまで列に並び続けることに。

 一体どれだけの暇人なんだかなぁと呆れつつも、喜んでシチューを平らげては列の最後尾に並ぶクマを俺は微笑ましく思っているのだった。



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六十三日目:残金5182050B

収入:キュビカの獲物(十五日分)1086000B

支出:食料など312000B

収支;+774000B

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