64.キュビカと勝負することになりました
「また呼び出しよって。今度は一体何用じゃ?」
「何度もすまないな、キュビカさん。ちょっとまた聞きたいことができてしまってな」
キュビカはむっとした顔をしている。
食後のタイミングだったし、あまり動きたくなかったんだろうな。
キュビカって食べた後はその場から動かない事が多いし。
「それで? わらわに何を聞きたいんじゃ?」
「えっとな、キュビカさんは効率が良いから狩りは自分一人でやっているみたいな事を言っていたよな?」
「そうじゃ。わらわはわらわで狩り、鷹は鷹で別の獲物を狩る。その方が効率が良いからの」
「なるほどな。ちなみにキュビカさんと鷹が一緒になって獲物を狩った方が早いとは思わなかったのか?」
「……いや、そんな事をしても変わらんじゃろ。むしろ遅くなると思っておるからやってはおらん」
「そうなのか? 実際にやってみた事は?」
「ない。というよりも連携して戦うなんてよほどの強敵でなければわざわざやらんわ」
ふーん。
キュビカさんはどうやら獲物を狩る程度では連携する必要がないと考えているのか。
獲物を狩る時も連携した方が良い結果が得られると思うんだけどなぁ……
「鷹達は優秀だ。鷹の力を知り尽くすキュビカさんがうまく指揮してくれれば、よりその力は輝くとは思わないか?」
「そうかもしれんが、そうする労力が惜しい、というか面倒じゃからやりとうない」
「そう言わずに考えてくれないか? 俺が見ていて思ったんだが、今の鷹達って単なるキュビカの荷物持ちになっていて可哀想な気がするんだよ」
「嫌じゃ。連携した方が圧倒的に早く効率的に狩れるというのであれば考えないでもないが、そんな事は証明できまい。それに鷹達が荷物持ちになっているのは鷹達がわらわよりも早く獲物を狩れないのが悪いんじゃよ」
むむむっ……
キュビカの奴、単に面倒臭がっているだけじゃないか。
それにやってみようともしないで、それをダメと決め付けるのかよ。
しかも挙句の果てには能力の低い鷹達が悪いとまで言い始めた。
これはさすがに頭にくるな……
「なるほど、キュビカさんの言い分は分かった。ならさ、実際に鷹と連携して狩った方が早く狩れると分かったらどう思う?」
「そりゃあ連携をしようとは思うじゃろうな。じゃが、そんな事は証明できまい」
「できるさ。例えば鷹と連携した俺が狩りをするのとキュビカさん一人で狩りをするのではどちらが早いか勝負するというのはどうだ?」
「なるほど。じゃがそれでは不公平ではないか? お主はエリアの加護を受けたわらわ以上の力を持つ。お主が獲物に手を出せば、お主達の方が早く狩りができるにきまっておるじゃろうが」
うーん、本当は自分の力と鷹の力を組み合わせれば早く狩れるという所を見せたかったんだけどな。
鷹だけに任せるのなら現状とあまり変わらないんだし。
まあそこは指揮することによってどれだけ鷹の狩りが効率化するかを見せれば良い話か。
「分かった。そういう事なら俺は獲物に一切手出しをしない。それで文句ないか?」
「それならば文句あるまい。で、勝負の条件はどうするのじゃ? お主が勝ったらわらわは鷹と連携して狩りを行うといった所じゃろうが、もしわらわが勝ったら―――」
「その時はキュビカさんにおにぎり1000個をあげるとしよう」
「ふふっ、1000個か。決まりじゃな。対決日時はどうする?」
「そうだな……鷹達の事をよく知る必要があるから10日後はどうだ?」
「なんじゃ、随分と遅いんじゃのう……」
「仕方ないだろ。俺は鷹の事を全然知らないんだからさ!」
「分かった。それなら10日後で構わぬ。ふふっ、おにぎり1000個、楽しみじゃな……あっ、味はもちろん色々な物を頼むぞ!」
「分かってるさ。まあそんな心配しなくてもキュビカにおにぎり1000個を渡すことはないだろうがな」
「随分と余裕があるんじゃな。まあいいわい。10日後を楽しみにしておるぞ」
そう言ってキュビカは住処の方へと戻っていった。
あーあ、言っちまったよ、俺。
勝手に勝負を吹っかけちまったが、肝心の鷹達にはどう説明したら良いものか。
この勝負、鷹達が協力してくれないと俺の不戦敗になっちまうんだよな……
とにかく何とか頼み込んでみるしかないか。
俺は鷹のリーダーであるイチガを呼び出した。
そして先程のキュビカとのやり取りの一部始終を話した所―――
「エンラさん、随分と思い切った事を言いましたね!? いや、私達の力を買ってくれたのは嬉しいんですけど!」
「そういう訳だからさ、イチガ達の力を俺に貸してくれないか!? キュビカにイチガ達と連携をしようと考えさせるにはそれが手っ取り早いと思ったんだ!」
「……エンラさんが私達の思いを汲んでそう行動して下さっているのは分かっています。私から他の鷹に話しておきましょう。私個人としてはもちろん協力させていただきますが、他の鷹もみんな協力してくれるとは限らないので、そこは大目にみて下さいね?」
「ああ、ありがとな、イチガ。助かるよ」
イチガはそう言ってから他の鷹の所へ行き、話を始める。
するとイチガから話を聞いた鷹達は様々な反応をみせた。
キュビカを打ち負かそうと燃える者、キュビカに勝てるのか不安な表情をする者、輝くような目で俺をじっとみつめてくる者……
とにかく鷹達にとってもかなりのインパクトを与える事だったようだな。
そんな鷹達をよそに、家の中に入ろうとする俺だったが、俺を呼び止める声があった。
「エンラさん、キュビカの姉御と勝負するって話は本当なのか!?」
「ターガか。その様子だとイチガから話を聞いたようだな。ああ、そのつもりだぞ」
「そうなのか。いやぁ、思い切ったことをしたもんだ。でも勝負を受けたからにはそれなりの勝算はあるんだろ?」
「うーん、正直まだお前達がどういう狩りの仕方をしているのかとか全然分からないし、何とも言えないな」
「なるほど。確かにおれ達が狩りをしている様子をエンラさんはほとんど見てないもんな」
勝算があるのかないのか。
それは鷹の能力をしっかり把握できていない現状では何とも言えない。
まあ勝算が全くなければ勝負を受けるワケもないので、あるといった方がいいのかもしれないが。
先程キュビカと鷹の狩りについて行ったとき、鷹の動きにはだいぶ無駄な動きがあったのだ。
三体ほど獲物を見つけても一体に過剰な数の鷹が攻めてしまい、他の二体を取りのがすということもあった。
もう少し誰がどの獲物を攻めるか配分をうまくすれば、もっとうまく狩りができるような気がするんだよな。
「そもそもターガ達が協力してくれなければ俺の不戦敗になってしまうんだけどな。ハハハ……」
「そ、そんな事はさせないっすよ! 少なくともおれはエンラさんに協力しますから!」
「ありがとな、ターガ。ちなみに他の鷹達の様子はどんな感じか分かるか?」
「そうっすね……正直反応はまちまちと言った所だな。おれみたいに積極的な奴もいれば、恐れおののいている奴もいる」
「なるほどな……できるだけ多くの鷹が協力してくれると嬉しいんだがな」
「きっと大丈夫さ! イチガさんだって頑張ってみんなを説得してくれているし、きっとみんな協力してくれるだろ!」
「ああ、そうなると嬉しいな」
ターガとそう言葉を交わした後、俺は自分の家の中に入ってくつろぐ。
うーん、それにしても残された時間は十日か。
しかも俺には店の営業があるからその半分は時間がとれないから、実質五日しか使えない。
そのたった五日でどこまでやれるかは腕の見せ所だな。
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三十四日目:残金1108326B
収入:なし
支出:なし
収支;+0B
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