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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
三章 ビジネスショッピング
55/357

55.ネズミはおにぎりを気に入ったようです

 次の日、いつも通りキュビカ達の獲物を売却して、朝食をみんなでとってから開店の準備をした。

 まあ開店準備とはいっても、何かを仕入れたりする訳でもないから何をする訳でもないが。


 店にはだいぶ前に屋台風セット(木造)というものを買って設置している。

 カウンター用、お客さん用の机が一つずつと、椅子が三脚あるだけなんだけど。


 開店時間前から既に何匹かの動物達が列を作って並んでいる。

 だが営業時間になるまでは販売は始めない。

 営業時間前から販売するようにしてしまうと、それが当たり前になってしまって、労働時間が増えてしまうからな。

 ちなみに営業時間になるまでは先頭付近に並んでいる動物達と雑談をしたりして楽しんだりして時間を潰す事にしている。



「ドラゴンさん、タヌキを助けたっていうのは本当ですか?」

「えっ? 確かに助けたが、何でシカのお前が知っているんだ?」

「ドラゴンさんはこの森の中では目立ちますからね。なに、一部始終を見ていたぼくの仲間が出来事を教えてくれただけですよ」

「一部始終を見ていただと?」

「はい。その子はドラゴンさんの大ファンでして。ドラゴンさんの休みの日とかも、こっそりとのぞいていたりしているみたいですよ」



 大ファンか……

 何か遠くから絶えず視線を感じるような気がしていたのはそれが原因だったのか。

 脅威になるような存在ではないと思っていたから詮索はしていなかったんだけど。



「俺のファンだなんて物好きもいるものだな」

「いや、そんなに珍しいことでもないですよ? ぼくの仲間だけでもドラゴンさんのファンは三人以上いますし。タヌキ、キツネ、イノシシなど他の種族のファンもいるみたいですから」

「そ、そうなのか?」

「はい。ぼくの仲間の子は別種族のファンと一緒にドラゴンさん観察を楽しんでいて、言葉が通じなくても仲良くなっているみたいで。とても楽しそうにいつも話してくれますよ」



 そ、そうだったのか……

 言葉が通じないのに仲良くできているというのはすごい事だな。

 共通の趣味を持つもの同士、心が通じ合う所があるんだろうか?

 その趣味が俺の観察じゃなかったら応援していた所だったんだけど。


 俺の事を気に入ってくれるのは嬉しい。

 でもずっと行動を見られているっていうのはやっぱり嫌なんだよなぁ。

 テントじゃなくて、もうちょっとちゃんとした家をそろそろ建てた方がいいかもな。

 自分だけの空間ってやっぱり大事だ。


 さて、そうこうしているうちに開店時間を迎える事になったし、今日も張り切っていきますか!



 しばらく販売して、お客さんと話していると、どうやら皆さん俺がタヌキを助けた事を知っていたようで。

 森の生き物の情報網って半端ねえんだな。


 そしてそのお客さんの中には……



「よう、きてやったぞ」

「え? お前は―――昨日のネズミか?」

「そうだ。……か、勘違いするなよ!? 決してお前のくれた物が予想以上に美味かったから来たとか、そういう訳じゃないんだからな!?」



 昨日、俺がちょっと脅したネズミの姿がそこにはあったのだ。

 あれだけ怯えていたのによくまた俺の前に来ようと思えたな。

 まあその度胸は買ってやるけど。



「じゃあ何しにここに来たのさ?」

「えっ? そ、それは……ひやかし。そうっ、ひやかしに来ただけさ!」

「ふーん。じゃあさよなら。次の方どうぞー」

「へっ!? ちょっと待てよ!? せっかく並んで待っていたのにその仕打ちはないだろ!?」

「後ろにも待っている人がいるんだ。商売の邪魔をしにきたのなら帰ってくれ」

「わ、分かった! 分かったから、あの白い食べ物を一個くれー!」



 結局ネズミは小さなチーズの欠片みたいなものとおにぎりを交換して帰っていった。

 おにぎりが欲しいのならそう言えばいいのに。

 全く、素直じゃないんだな、あいつは。



 それからは順調に取引を続けて17時になり、今日の営業時間は終了。

 俺はテントに戻ってゆっくりと体を休める事にした。


 今日の商売は順調に終わったが、悩み事が一つ増えてしまっていた。

 実は、タヌキの件を聞いた動物達から様々な依頼を頼まれてしまったのだ。


 頼まれた内容は様々である。

 タヌキの時と似た、なくしてしまった物の捜索。

 特定の物が欲しいという依頼。

 喧嘩してしまった二人を仲直りさせてほしいという依頼などなど。


 俺一人で一度にできる依頼は限られているので、最初に頼んできた動物以外は願いを叶えるのは時間的に厳しいと断る事に。

 出来もしない依頼を安請け合いすると信用に関わるからな。

 確実にできそうな範囲で頑張った方が良いのだ。


 でも動物達は多少待ってもいいから俺に是非お願いしたいと言ってきたりしていた。

 力になってやりたいのはやまやまだが、どうしても人手が足りないんだよなぁ。

 うーん、何か良い手はないものか。



「どうしたのエンラ? 難しい顔をして?」



 声をかけてきたのはコクリだ。

 首をかしげてこちらの方を心配そうに見てきている。



「ああ、ちょっと悩みがあってな」

「悩みがあるのね? どんな悩みなのか言ってみて。もしかしたら力になれるかもしれないから」

「ありがとう。実はな―――」



 俺は動物達からたくさんの依頼をお願いされ、でもどうしたら良いのか悩んでいる事を伝えた。

 するとコクリから返ってきた言葉は―――



「なるほどね。そういえばちょっと聞きたいんだけど、その依頼ってエンラじゃないとできない事なの?」

「うーん、そうとも限らないかな」

「それなら、そういう依頼はエンラだけじゃなくて私達みんなでやればいいのよ! 動物達の言葉は分からないけど、依頼内容をエンラから伝えてくれれば特に依頼をこなすには問題ないはず!」

「みんなでやる、か。確かに言葉が分からなくても、依頼内容さえ分かれば何とかなりそうだな」



 動物達と話せるのは俺しかいない。

 だから動物達の依頼をこなせるのは俺だけだって思いこんでしまっていた。


 でもそんな事はないじゃないか。

 昨日タヌキが探していた石の場所を見つけたのだって俺ではなくコクリだ。

 物の場所を探す依頼であれば、俺よりもコクリの方が適任だろう。

 それに物を手に入れたいという依頼であれば、空を高速で飛べ、この世界の物に関する知識がある鷹に任せても良さそうだし。

 キュビカに至っては俺と同様、動物と会話をする事ができるしさ。


 となれば、後はみんなが動物達の依頼を受ける気があるかが問題だな。

 やりたくない仕事を押し付ける訳にもいかないし、やっぱり意欲のある人が依頼を受けるべきだろう。



「コクリは動物達の依頼を受ける気はあるか?」

「ええ、もちろんよ。ただ、植物の水やりが終わってからでもいいかしら? それからはだいぶ暇だし」

「分かった。ありがとうな、コクリ」



 コクリ、やっぱり頼りになるな。

 というか、コクリの奴、暇していたんだな。

 薄々そんな気はしていたけど。


 俺が店で物の販売をしている時に、ちょくちょくお客さんに混じって物を買いに来たり、俺の様子を遠くからじーっと眺めていたりしたもんな。

 まあ食べ物は全部俺がコクリにあげているし、やる事といえば植物の世話くらいだもんな、現状は。

 暇になるのも当然って訳だ。


 それからコクリ以外のみんなにも意見を募ることに。

 するとみんなも良い暇つぶしになるということで好意的な意見が目立った。

 特にキュビカの食いつきは凄まじかった。

 キュビカは金になる話―――いや、食べ物になる話になるとすぐに食いついてくるからな。

 暇もつぶれて、お金も手に入って一石二鳥だって言っていた。


 最近キュビカ達が狩ってくる獲物の中で高く売れる生物はことごとく狩り禁止になっているからな。

 価値の高い生物というものはやはり生息数が少ないみたいで、なかなか狩れなくなってしまうのだとか。

 だからこそ、キュビカはなかなか狩りでお金を稼げなくなってきているし、お金になる話への食いつきは凄まじいのだ。


 何はともあれ、みんなの意欲も十分そうだし、みんなが動物達の依頼をこなせるような仕組みを作っていくとするか。



********

二十八日目:残金7089126B

収入:キュビカ達の獲物73000B

支出:食事など32000B

収支;+41000B

********

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