52.タヌキから頼まれ事をしました
「シカが持ってきていた橙色の花はありますか?」
「ああ、ちょっと待ってろよ……」
イノシシにそう聞かれた俺は、女神倉庫を起動させて、指定された花を一つ呼び出した。
早速ストックが役に立って何よりだな。
ちなみにこの花はアレノスベースといい、売却額は800Bである。
結構な価値があるから何かしらの用途はあるんだろうな、きっと。
受け渡す時にはもうちょっと高い値段設定をする必要があるな。
貴重な女神倉庫の保管スペースを使っていたこと、イノシシがシカと直接取引する必要ない分の手間賃を考えてもいいはずだからさ。
となれば、販売価格はというと……
「これは金貨10枚との交換になるが、どうする?」
「ひ、ひぇぇ、金貨10枚ですか……そんなに持っていないので、これとの交換ではどうですか?」
そう言ってイノシシが差し出してきたのは、牙だった。
見た感じ、今イノシシに生えている牙と似ているから、イノシシの抜けた牙を持ってきたという事かな。
さて、これの価値はというと……
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”イノシシの牙”を売却しますか?
売却額 1300B
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1300Bか。
対価としては申し分ないな。
なら、もちろん俺の答えは―――
「ああ、これなら交換してもいいぞ」
「やった! ありがとうございます!」
「それにしてもその花は何に使うんだ? そんなに大事なものなのか?」
「あっ、この花はですね……住処の香り付けに使うんです」
香り付け?
確かにこの花からほんのりとさわやかな香りがするような気がするな。
「これをいつも住処に置いておくのか?」
「いつもではないんですけどね。でもこの花の香りはみんな好きな香りなんです。なかなか取れないから持って行ってあげるとみんなすごく喜ぶだろうなぁ……」
みんな好きな香りか。
野生の動物が住処に香り付けの物を置くなんて初めて聞いたんだけど。
いや、この世界の動物は結構知能が高そうだから、こういう事も珍しくないんだろうか?
動物達が普段どういう生活をしているのか観察してみると面白いかもしれないな。
俺から花を受け取ったイノシシは嬉しそうな様子で去っていった。
そしてイノシシに代わって今度はタヌキが俺の元へと近付いてくる。
「今日は何が欲しいんだ?」
「あっ、えっと……実は今日は欲しいのではなくてですね……」
ん?
何か欲しい訳ではないのか?
このタヌキはいつもおにぎりを交換しにくる常連さんなのだが、どうしたんだろう?
「何かあったのか?」
「あっ、大した事がある訳ではないんです! ただ、ちょっとドラゴンさんに頼みたい事があって……」
「俺に頼み事? 内容を教えてくれ」
「あっ、はい! 実はですね―――」
タヌキによれば、大事にしていた物がどこかへいってしまったのだという。
結構頑張って探したものの、見つからなかったのだとか。
「もちろん報酬は払います! えっと……アレノスマロン3個でどうでしょう?」
「うーん……」
「あっ、足りませんでした!? ならアレノスマロン5個で……」
「いや、そういう訳じゃないんだ。事情は分かったが、まだ今は店の営業時間中だから、閉店後でもいいか?」
「あっ、それはもちろんです! 店が閉まる頃にまた来ますね!」
「ああ、よろしく頼むぞ」
そう言ってタヌキはそそくさと去っていった。
商売ではなく、依頼が来るなんて予想外だったな。
だけどそういう困った人を助けるっていうのもいいかもしれない。
今日の店の営業をそのまま順調に終えた俺。
するとタヌキがそのタイミングを見計らって近付いてきた。
「ドラゴンさん、お店の営業は終わりました?」
「ああ、終わったぞ」
「なら、オラの住処まで案内します。付いて来てもらってもいいですか?」
「あっ、ちょっとだけ待っててくれ。腹を空かせている仲間がいるものでな」
俺はテントまで戻って、キュビカやコクリなどに食べ物を貨幣と交換する事に。
店の営業中はそういう事ができないから、特にキュビカからは早く食べ物をよこせとうるさいのだ。
他の仲間達もキュビカほどではないが、お腹を空かせているようで、食べ物を欲しがっていた。
仲間達に食べ物を渡し、留守を任せた後で、俺は再びタヌキの近くへと戻ってくる。
「待たせたな。それじゃあ案内をよろしく頼む」
「はい、こっちですよ!」
タヌキの後に続いて進む俺。
森の中をしばらく歩いていく。
「あっ、この辺りです。歩いていたのは!」
「そうか。なら、ここからゆっくりと歩いて探せばいい訳だな?」
「はい、お願いします!」
俺はタヌキと一緒に周辺を調べていくことに。
ちなみにタヌキが落としたのは赤くキラキラ光る石みたいなものらしい。
珍しいからそれをお守りにしていて大切にしていたのだとか。
だが結局頑張って探しても見つからないうちに辺りが暗くなり始めてしまった。
探し始めた時間が遅かったから仕方ないんだけど……
「今日はここまでにしよう。明日は休みだから朝から探すのを手伝えるだろう」
「本当ですか! すいません、ご迷惑をおかけして……」
「いいんだよ。頼ってくれることが嬉しいんだしさ。それじゃ、また明日な」
「はい、また明日!」
俺はこうしてタヌキと別れ、住処へと戻った。
明日も石を探す約束をしたのはいいんだが、この森の中、たった一つの石を探すのは心が折れるよなぁ。
探す場所もとても広いだろうし……
その気苦労が顔に出てしまったのか、コクリが心配そうな目をしてこちらを見てくる。
「エンラ、どうしたの? 浮かない顔をして?」
「えっ、いや、ちょっとな……」
「何か悩みがあるのなら言ってみて。力になれるかもしれないから」
「ありがとう、コクリ。実はな―――」
俺はタヌキが石をなくして困っていること、その石を探す手伝いをしていることを伝えた。
するとコクリは……
「なるほどね。なら私も探すの手伝うわ。二人で探すよりも三人で探した方がみつかるでしょう?」
「ほ、本当か!? でも―――」
「あっ、報酬とかそういうのはもちろんいらないわよ。私が手伝いたくて手伝うだけなんだから」
コクリはそう言うとニッコリと微笑んだ。
コクリ、本当に頼りになるなぁ。
報酬なんていらないとは言ってくれたけど、後で何か食べ物とかあげることにしよう。
手伝ってくれたのに何もあげないなんてこちらとしても気分が悪いからな。
こうして夜が明け、早朝はいつもの獲物売却から始まる。
獲物売却を終えた後、みんなで朝食をとってから、俺はコクリと一緒にタヌキの元へ向かう事に。
ちなみにタヌキは俺達の住処の近くで待っていてくれたのですぐに合流することができた。
「このオオカミさんも手伝ってくれるんですか!? なんと心強い!」
「ああ、俺も驚いたよ。コクリも加わった事だし、さっさと探し物を見つけちまおうぜ!」
「はい、頑張りましょう!」
「ふふっ、二人とも元気がいいわね。その調子で私も頑張っちゃおうかしら!」
こうして意気揚々と俺達は石探しを始めたのだった。
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二十七日目:残金7048226B
収入:キュビカ達の獲物(五日分。一日は雨でお休み)290000B、取引で得て売却した物3000B
支出:取引及び生活用食料など120000B
収支;+173000B
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