4.トカゲ生活二日目になりました
穴の入口から光が差し込んできて思わず目が覚める。
うーん、やっぱりこれって夢じゃないのか。
寝て起きたらこれは夢でしたという夢落ち展開を期待したんだけど……
まあ人間としての俺はもう死んじゃったらしいし、割り切るしかないんだがな。
さて、今日も一日頑張りますか。
俺は周囲に大きな気配を感じないことを確認してから、そっと穴から出て行く。
すると俺が穴から出終わった瞬間、穴は一瞬にして塞がってしまった!
そういえばこの穴は一泊限定のものだったんだよな。
でも確かに安全に眠る事もできたし、また近いうちに世話になるだろう。
その時はよろしく頼んだぞ、俺の小さな寝床さん。
気を取り直して、今日はどこを探索しようか?
っていっても、俺に選択肢はほとんどないんだけどな。
天敵のいない所を探索する。
それしかないのだから。
大きな気配は後ろから感じる。
なら前に進むしかないな。
もちろん移動は慎重に。
ゆっくりと進んでいくと、小さくて怪しげな黒い瓶を見つけた。
金色のツタの模様みたいな絵柄が描かれていてちょっと高級感のある瓶だ。
何でこんなものがこんな道端に置かれているんだろうか?
明らかに怪しいだろ、これ。
売却できれば儲けものだが、果たして売れる物なのかな?
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この”黒い瓶”は所有できないので売却できません。
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所有できないだと!?
ますます怪しいな、この瓶。
俺が持てなくもないサイズだし、大きさ的には所有できるはずなんだけどな。
何かがあるに違いない。
触らぬ神に祟りなしとはいうし、見なかった事にして、ここから立ち去ろうっと。
俺は瓶のある方向とは違う方向に進み始める。
すると、ある時ピタッとひんやりと冷たい感覚が右前足に。
そしてそこには―――先程の黒い瓶がくっついていた。
俺は慌てて瓶を引き離そうとするが、瓶は足に接着剤でつけられたかのように全く外れる様子がない。
だが努力の甲斐あってか、しばらくもがいていると瓶がようやく足から外れたのだった。
全く、何なんだよ、この瓶。
どうして瓶のない方向に進んだのに、いつの間にか足に瓶がくっついているんだ?
訳が分からねえよ……
それにこの瓶、いつの間にか白く変色しているんですけど。
何で白く変色したのかさっぱり分からないんだが。
ちなみに瓶の見た目が変わったから、女神ショッピングでも白い瓶という扱いになるんだろうか?
ちょっと試してみよう。
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”白い瓶”を売却しますか?
売却額 0B
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えっ?
売却できるの?
さっきまで売却できなかったのになんで?
……まあよく分からないが、売れるのなら売ることにするか。
下手にこのまま残しておいて、また不思議現象が起きたらたまったものじゃないからな。
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”白い瓶”を売却しました。
残り所持金 10B
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これで怪しげな瓶も処分できた事だし、気を取り直して先へ進むとするか。
さっきの事は忘れよう。
気味が悪いからな。
俺は気を取り直して先へ進んでいくと、植物を見つけた。
その植物は赤い花を咲かしていて、甘い香りがする。
これはさすがに雑草じゃないだろう。
早速売却だな。
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この”ヒトクイアカバナ”は所有できないので売却できません。
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人食いってことはこれ、肉食植物なのか!?
身の危険を感じた俺は急いで後ずさりをした。
するとグワァァっと赤い花が襲い掛かろうとキバをあらわにしたが、俺は何とかギリギリの所でかわすことができた。
そしてその赤い花の怪物、ヒトクイアカバナが地面から抜け出ようとその場でもたついている間に俺は全速力で逃げていった。
ハァ、ハァ……
何とかまいたか。
一体どうなっているんだよ。
全然俺の感知に引っかからなかったんだが、あのヒトクイアカバナって奴。
本当心臓に悪すぎるわ。
いつか目に物を見せてやる。
もしかして身を潜めている奴に対しては気配を感じ取れなかったりするんだろうか?
それって相当厄介だろ……
そういう奴らも認識できる能力は女神ショッピングで売っていたりしないかな?
後、売っていたとしたらどれ位するんだろう?
安かったら買っちゃった方がいいんだが……
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どの隠れた生物を暴く能力をお買い求めですか?
残り所持金 10B
安い順 3件中3件表示
虚偽看破 100B
隠密看破 200B
真理の眼 190000000B
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看破する魔法があるってことは、【虚偽】や【隠密】のスキルがあるっていうことだろうな。
そして多分これらを使っている奴らは俺の感知じゃ見破れないという訳か。
ってことは今の俺って全然安全じゃねーじゃねえかよ、これ!?
こういったスキルを使っていた奴らのすぐそばを俺が通ることになっていたかもしれないって事だろ!?
一体どうすればいいんだよ……
いや、することは分かってる。
こういった事に警戒をしながらお金を貯めながら生き延び、これらのスキルを取得するという事だ。
そうするしかないって分かってはいるんだけど、危険すぎるだろ……。
だが、全く予防する手がない訳ではない。
実際現時点でも有効なのが、女神ショッピングの売却アナウンスの正確さだ。
【虚偽】だか【隠密】だかは知らないが、何かしら欺く能力を使っているであろう”ヒトクイアカバナ”をいとも簡単に指摘してみせた。
だから女神ショッピングの売却コマンドを活用しながら慎重に行動するというのが今の俺の最適解だろう。
それなりに離れていても女神ショッピングの売却アナウンスはしてくれるみたいだし、今後も積極的に活用していこうか。
俺は先程のヒトクイアカバナを避けて別の道を進んでいくと、またヒトクイアカバナらしき赤い花が見えた。
またヒトクイアカバナかよ……、本当に勘弁してくれ。
ただ一応アナウンスはお願いします。
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あの”スイート・レッド”を売却しますか?
売却額 100B
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えっ、ヒトクイアカバナじゃないのかよ!?
しかも売れるみたいだから魔物でもなく、ただの植物なんじゃないか、これ!?
それに売却額100Bとか高すぎだろ!?
こりゃ売るしかないでしょ!
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”スイート・レッド”を売却しました。
現在の所持金 110B
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所持金110Bもあるのかぁ。
急に懐が潤った気分。
辺りを見渡せば、まだスイート・レッドらしき植物がたくさん生えている。
ただ、あの中にはきっとヒトクイアカバナも混じっているんだよな。
何とかして見分けて、スイート・レッドだけを回収できればいいんだけど……
あっ、そうか!
良い事思いついたぞ!
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以下の物を購入しました。
残り所持金 10B
虚偽看破 100B
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すると周囲に新しくいくつかの気配を感じ取る!
前から感じ取った気配とはまた違ったモヤっとしたこの気配……
それが【虚偽】を使って身を潜めている奴らの気配に違いない。
俺は周囲にある赤い花を見つめた。
そしてそこには【虚偽】に反応するもの、しないものが混在していた。
一応女神ショッピングの売却アナウンスによって確認したが、やはり【虚偽】に反応するものがヒトクイアカバナ、しないものがスイート・レッドだった。
というわけで、簡単に見極めることが出来るようになった俺はスイート・レッドをさらに10個売り、所持金を1010Bまで増やすことができた!
まだスイート・レッドは残ってはいるのだが、下手に全部売ってしまって残りをヒトクイアカバナだけにしてしまうと、異変に気付いた奴らが襲い掛かってこないとも限らないので、ほどほどにしておいた。
とりあえず1010Bもあれば十分だろう。
女神ショッピングの売却アナウンスを使えば、【虚偽看破】を取得しなくてもスイート・レッドだけを売却することも可能だった。
ただヒトクイアカバナとスイート・レッドがどの程度の割合でいるのか、また【虚偽看破】は本当に効果があるのかを確かめるためにあえて取ることに。
それに【虚偽】を使うのはヒトクイアカバナだけじゃないだろうし、今後の備えにもなるだろうしな。
備えあれば憂いなしってことだ。
今日は十分稼いだし、早い所安全な穴の中に潜ってゆっくり過ごすとしようかな。
俺は女神ショッピングで再び”安全な穴(一泊)”を購入し、できた穴に潜り込んだ。
ふう、これで一安心だな。
さて、この所持金どうやって使うべきか……
安全な穴に10B使ったから、残り所持金はちょうど1000B。
食べ物や飲み物も昨日の残りがあるから問題ない。
実際に玄米も水も出現させて摂取することもできたし、問題なさそうだった。
たった1Bしか使ってないのに数日分の食料になるって優秀すぎるよな。
まあ俺の体が小さすぎるってだけなんだけど。
だから食料にお金を使わなくても良い訳だし、今日の寝床も確保してあるからそこにもお金は使わなくてもいい。
なら何に使えばいいんだろうか?
まず隠れた生物を暴く残り一つの能力は確定だな。
あっ、もちろん【真理の眼】じゃない方ね。
ヒトクイアカバナの時もそうだが、自分が気付かないうちにすぐそばに天敵がいるというのは想像しただけで恐ろしいからな。
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以下の物を購入しました。
残り所持金 800B
隠密看破 200B
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さて、これで残りは800B。
俺はこの800Bを使って攻勢に出るための何かを購入しようと思っている。
だってずっと逃げ回っているだけというのはやっぱり嫌じゃん?
一応隠れた生物を恐らく全て暴けるようになるとはいえ、逃げ場所がなくなるという可能性もあり得なくはない。
どうしても戦うべき時というのはいつか来ると思うのだ。
だが、果たして何を買えばいいのだろうか?
今の俺は想像するに数センチほどしかないトカゲの赤ん坊にすぎない。
米粒一粒があんなに大きく感じるほどの大きさなんだ。
だから敵を倒すための武器なんて重たくて扱えるはずがない。
ならどうすればいいか。
それは武器以外で倒す方法を考えればいいのだ。
ここはゴブリンが存在するようなファンタジー世界なんだ。
それならきっとアレも存在するはず―――
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どの攻撃魔法をお買い求めですか?
残り所持金 800B
安い順 698件中5件表示
ファイア 500B
サンダー 1000B
ウィンド 1000B
グランドウォール 1000B
アイスニードル 1500B
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やっぱりあったな。
ファンタジー世界といえばやっぱり魔法だろ。
魔法を使うんだったら、物を持つ必要もないだろうし、俺でも使えるよな、きっと。
ファイアだけ安いのには何か意味あるんだろうか?
ファイア、つまり炎魔法はこの世界では弱いとか?
まあそういう問題じゃなくて、単純に俺の才能の問題なのかもしれないけど。
自分に向いているスキルは低価格で使えるようになるし、向いていないスキルは高いお金を払わないと使えるようにならない。
いかにもありそうな話だよな。
とにかく俺は攻撃手段が手に入れば何でもいいから、ファイアを買うことにしよう。
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以下の物を購入しました。
残り所持金 300B
ファイア 500B
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その表示が出た瞬間、自分の体に熱く燃えたぎる感覚が宿った。
もしかしてこの感じがファイアの力なのか!?
何となくだが、この感じる力を凝縮して放てば炎魔法が使えるような気がするな。
まだ日没まで時間があるし、少し試してみるか。
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二日目・残金300B
収入:スイート・レッド1100B
支出:安全な穴10B、虚偽看破100B、隠密看破200B、ファイア500B
収支:+290B
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