37.鷹達には不満がたまっていたようです
夜を迎えたので、サンドイッチをみんなで食べて、そしてまた交代制で眠りにつくことに。
水はカトカとターガが頑張って川の水を運んできてくれたようだ。
二人ともご苦労様。
交代制の見張りはもう慣れてきて、特に何事もなく朝を迎える事ができた。
そういえば交代制の時にカトカに日本語を話せるか試してもらったのだが、やはり日本語を発声できないようだ。
ちょっと残念だが、できないものは仕方ない。
カトカが進化したらまた変わるかもしれないし、ゆっくりと待つことにしよう。
そして迎える朝八時。
昨日と同様に鷹達がまた俺達の近くまで舞い降りてきた。
「毎日ご苦労さん。今日の要望は何だ?」
「今日の要望は色んな種類のおにぎりが50個、サンドイッチが50個だそうです」
「ほう、複合技で来たか。で、今回の獲物はどんな感じだ?」
俺がそう言うと、鷹達は俺の目の前に獲物を山積みにしていった。
ちなみに獲物はフォレストラビットが三体、リトルヘッドが四体、ツインヘッドが五体、リトルベアーが三体だ。
売却額は―――615000B!
鷹達、よく頑張ったな。
「今日はみんな頑張ってくれたようだな」
「ふふっ、そうでしょう? 私達、早起きして頑張りましたから!」
フフンと胸を張る鷹。
うん、あのツインヘッドを五体も倒すなんてすごすぎるよな。
俺は鷹の獲物を売却し、そして九尾から要望されたものを大きな袋に包んで、ひもをつけておいた。
今回はかなり売却額が高いので何かしらプレゼントした方が良さそうだな。
さて、今回は何にしようか。
せっかくだし、おにぎりとサンドイッチ以外である程度保存のきくものがいいよな。
それなら、パンでもプレゼントするか!
俺は女神ショッピングでメロンパン、カレーパンなど様々なパンを購入して、また別の袋につめておいた。
「おおっ、何かまた新しい食べ物が出てきましたね!」
「ああ、これはパンっていうんだ。色んな種類があって美味くてたまらない味だぞ?」
「そ、そうなんですか……えっと、それを少し私達に分けてもらう訳には……?」
ゴクリとつばをのむ鷹達。
せっかく頑張って獲物を狩ってきてくれたんだもんな。
なら、もちろん返事は―――
「ああ、みんな頑張ったもんな。今すぐ渡すから、ちょっと待ってろよ」
「「ありがとうございます!」」
俺は今回十五個のパンを購入し、鷹達に手渡した。
それぞれ違う味のパンを渡したからか、鷹達の間でちょこちょこ分け合ったりして色んな味を楽しんでいるようだ。
分けあう際、鷹達には手がないからパンを一旦地面に置く事にはなるが、食べ物を地面におくことは気にしないらしい。
まあ味が大きく変わる訳でもないもんな。
体に悪影響があるかもだが。
パンを味わった鷹達は幸せそうな顔をして、俺の住処を去っていった。
喜んでもらえたようで何よりだな。
それから数日。
毎日のように鷹達は俺の所へ来て、九尾の依頼の物を交換しにきた。
さすがに雨の日はこなかったけど。
あの日から不思議と価値の低いフォレストラビットをあまり持ってこなくなり、ツインヘッドやリトルベアーなど価値の高い獲物を持ってくるようになった。
そうした方が鷹達も食べ物がありつけるということに気付いたからなのかもしれないな。
違う味のおにぎり、サンドイッチ、パンなど色々と鷹に味わってもらう事になったのだが、みんなとても喜んでいた。
帰り際もとても幸せそうにしていたのが印象的だったな。
ただちょっと気になるのが、最近ちょこちょこターガの方に鷹達の視線がいったり、鷹達が俺の住処から去っていく時間が遅くなってきているんだよな。
何か嫌な予感がする。
そしてある日の朝。
いつも通り鷹が持ってきた獲物を売却し、九尾の依頼の物を袋につめる俺。
それから俺は鷹に食べ物をプレゼントし、そして鷹達はその食べ物をその場で食べる。
鷹達がゆっくりとその食べ物を満喫して、今にも帰ろうとしたその時だった。
「なあ、何であいつだけ九尾様の所で働かなくてもいいんだ?」
鷹達の中の一羽がターガのことを羽根で指しながら言った。
「よくよく考えれば不公平だよな。九尾様にこき使われて大変な俺達はこの時間しか美味しい物が食べられない。でもあいつはそんな苦労をしない上に、いつでもドラゴンさんがくれる美味しい物にありつけるんだぜ?」
「そう言われれば確かに……」
「あたしも薄々そうは感じてたわ……」
一羽の鷹が発した言葉によって、鷹達はざわつき始めた。
どうやらターガだけが優遇されていて不公平だという思いはどの鷹にも少なからず持っていたらしい。
これはまずいことになったな……
「なあ、ドラゴンさん、どうしてそいつはドラゴンさんの所にいるんだ?」
「それは……俺の仲間にしてほしいと頼まれたからだ。そしてその申し出を俺は受け入れたんだ」
「な、なら、オレもドラゴンさんの仲間にしてくれよ!? 九尾様に付き従うのはもううんざりなんだよ!」
「そうだ、そうだ!」
「わたしも仲間にして!」
「ボクも仲間にしてくれ!」
仲間にしてほしいって……
そんな数、面倒みれる訳ないだろ。
第一、万が一みんな仲間として受け入れたとして、九尾はどう思う?
自分の補佐役となる鷹がごっそり俺に取られたことになるんだぞ?
絶対に黙っていてはくれないだろうな。
九尾には俺の攻撃は効かない。
ウェイトチェンジで九尾の攻撃を無効化できるとはいえ、それでは戦いの決着はつかないだろう。
前回九尾と戦った時は、取引をするという点で和解できたからおさまったようなものだ。
もし鷹達を全部九尾から奪うような事をしてしまったら、和解なんてできようがない。
つまり、九尾との対決は避けられなくなってしまうのだ。
そんな泥沼な戦いをしないといけないような事態は絶対に避けたい。
「お前達を仲間にする事はできない」
「ええっ、どうして!?」
「俺がお前達全ての面倒を見続けるなんてことはできないし、そもそもそんな事をしたら九尾さんが黙っていないだろう」
「くっ、それは確かに―――」
「だから申し訳ないが、俺にどうこうできる問題ではない。お前達、鷹達は九尾の補佐役なのだから」
「………………」
俺の言葉を受けて黙り込んでしまった鷹達。
するとゆっくりとではあるが、そのまま九尾用の食料を入れた袋を持って、鷹達は九尾のいる方向へと飛び去っていった。
……危なかったな。
反発されたらどうしようかと思ったが、何とか納得して帰ってくれたようだった。
九尾と対決するなんてことはしたくないからな。
ここでゆっくりと過ごしたいんだ、俺は。
しばらく俺はコクリ達とゆっくりと過ごしていると、何やらこちらに近付いてくる強大な気配が。
これってまさか……
俺は恐る恐る気配がする方向を見る。
そこにはたくさんの鷹と赤い団子、つまり九尾の姿が遠目に見えたのだった。
あー、まずい。
きっと鷹達が不平不満を九尾に言いつけた感じなんだろうな。
怒っているかな、九尾。
この場で戦うなんて事したくないんだが……
仕方ない。
こちらからも移動しよう。
コクリ達を巻き込む訳にはいかないもんな。
「あれは……九尾の姉御だな?」
「ああ、そうだ。ターガ、今回の話はお前にも関係ある事だから、一緒に来てくれるか?」
「……分かった。みんながおれに対して不満を持っているのは先ほど聞いていたから知っている」
「ありがとう。コクリ、カトカ、ユニ、留守を頼んだぞ」
「ええ、任せて」
「気を付けてね、お父さん」
「無理はしないようにするのだ」
「みんなありがとう。ターガ、行くぞ!」
「ああ!」
俺はこうしてターガと一緒に九尾のいる方向へと飛んで行った。
戦いになるかもしれないので、できれば住処とは離れた場所で話はしたいからな。
穏便に済めばいいんだが、果たしてどうなるか。
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十八日目:残金5003298B
収入:鷹の獲物4935000B、その他収入35000B
支出:九尾との取引、鷹への食料代238000B、エンラ達の生活費63000B
収支;+4669000B
九日経過。(鷹達は八回エンラと取引。一回は雨天の為取引せず)
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