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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
二章 ライフショッピング
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34.ユニコーンが仲間になりました

 しばらくユニコーンに至福の一時を味わってもらってから、俺は幻術魔法を解いた。

 するとユニコーンの目に光がともる。



「いい夢は見れたか?」

「……ハッ!? た、楽しんでしまってすまないのだ。オイラが全て悪かったのだ、寂しかったからついやってしまったのだ! 本当に申し訳ないのだ!」

「そんなに怯えるなよ。俺は怒ってないんだから。もし怒っていたらさっきのような夢なんて見せる訳ないだろう?」

「あっ……そういえば確かにそうなのだ……」



 恐怖に怯えていたユニコーンは俺をじっと見つめてきた。

 すると俺は体にちょっとした異変を感じる。

 鑑定鏡によれば、どうやらわずかながら幻視状態にかかっているらしい。

 俺はすぐさま自ら幻術魔法をかけ、そして解いて正常に戻す。


 態度とは裏腹にユニコーンの奴、頻繁に俺に幻術魔法をかけてくるな。



「ひどく俺を恐れている割にはよく幻術魔法を俺にかけようと思うな?」

「ひ、ひぃぃぃ、申し訳ないのだ! か、かけるつもりはないのに、でも勝手にかかってしまって……」

「勝手にかかる? もしかして、お前、自分で意識して幻術魔法を使っている訳ではないのか?」

「そ、そうなのだ……正直オイラ、この力が憎いのだ。こんな力がなかったらみんなと仲良くなれるのに……」



 はぁ……とため息をつくユニコーン。

 自分の意志とは関係なく発動する幻術魔法か。

 確かにそれは厄介だな。



「もしかしてリスに幻術魔法がかかったのも、お前にただ近付いたからっていう理由なのか?」

「そうなのだ。オイラがウトウトしている間にリスが近付いてきたのだ。オイラは慌ててその場から逃げ出したんだけど、多分あれだけ近付かれたら、きっと幻術魔法の影響は受けてしまっているのだ……」



 なるほど。

 コリスはユニコーンを見つけてそのユニコーンに近付こうとする。

 そしてユニコーンはコリスが近付いてきている事に気付いて逃げ出した。

 だが、ユニコーンが逃げ出すタイミングが遅く、コリスがユニコーンに近付いた結果、コリスに幻術魔法がかかってしまったと。

 そういう経緯があったんだな。



「ようやく事情が読み込めたよ。お前はリスが幻術魔法にかからないように逃げ出そうとしてくれたんだな?」

「そ、そうなのだ。でもあの距離だと、多分魔法の影響を受けてしまっているんだな……」

「ああ、確かに受けていたな。だが、心配はいらない。もう俺が治しておいたからな」

「や、やっぱりそうだったんだな。オイラに語りかける声が元気なうちに一つ少なくなったのはそういう事だったんだな……」



 ホッとするユニコーン。

 やっぱりということは、コリスが治った事にユニコーンは気付いていたのか。



「コリスにかかった幻術魔法が解けた事をまるで分かっているかのような言い方だな」

「な、何となくは分かっていたのだ。オイラの魔法の影響を受けた者はオイラに優しい言葉をかけてくれるから……」



 優しい言葉をかけてくれる、か。

 それがコリスの言っていた「おうまさんと遊んでいた」という事なのかもな。

 元気なうちに言葉をかけてくれなくなる。

 それは息絶えたのではなく、その他の理由、例えば何者かの影響によって治されたから幻術魔法の影響を受けなくなったということだろう。



「そんな経験は初めてだったんだな。だからこそ、逆にすぐに分かったのだ。その者自身が幻術魔法に打ち勝ったか、もしくはその者の周囲に幻術魔法に対抗できる者がいると。だからオイラはその者がいそうな所の近くまでやってきたのだ」

「幻術魔法に打ち勝てる者を感じ取ったのは分かった。だが、どうしてわざわざそんな奴の近くに来ようとするんだ?」

「オイラには望みがあるのだ。そして誠に勝手で申し訳ないのだが、その望みをドラゴンさんに叶えてほしいのだ」

「望みをかなえてほしい? その望みっていうのはどんな事なんだ?」

「オイラの望み―――それは、ドラゴンさんにオイラを殺してほしいということなのだ」



 えっ!?

 何でそんな事になってしまうんだよ!?

 というか、先程まで俺をひどく恐れていたじゃねえかよ。

 それって死にたくないってことじゃねえのか!?

 訳が分からないんだけど!



「何で殺してほしいんだ?」

「……もう疲れたのだ。オイラに優しく話しかけてくれる数々の生き物達。そしてその生き物達が例外なく息絶えていく。オイラはその亡骸を泣きながら食う。そんな事の繰り返し、もう嫌になってきたのだ」



 疲れた顔をするユニコーン。

 確かに自分に仲良くしてくれる人物が例外なく死んでいくなんて残酷すぎるよな。

 そして生きるためにその亡骸を食う、と。

 この世界のユニコーン自体がそういう生き物なのかもしれないけど、確かに精神的にくるものはあるだろう。


 そういえばユニコーンの奴、優しい言葉をかけてくれると言っていたが、他の動物達の言葉が分かるんだろうか?



「お前は他の動物達と話せるのか?」

「……幻術魔法にかかった動物となら、気持ちを通じ合う事ができるんだな。……そういえば、今のドラゴンさんって幻術魔法にかかっていないのにどうしてオイラの言葉が分かるんだな?」

「あっ、まあちょっと物知りなものでな。ユニコーンの言葉もリスの言葉もなんでも分かるんだぞ!」



 ガハハと笑ってごまかす俺。

 まあ本当の事を言ったってきょとんとされるだけだし、あんまりそういう事は重要じゃないと思うんだ。



「そういえば殺してほしいっていう割には、俺の事を怖がっているように見えたが、どうしてだ?」

「……やっぱり死ぬのは怖いんだな。できればオイラだって死にたくはない。でもこのまま生きていても苦しいだけなんだな。だからこの苦しみを終わらせられる、幻術魔法に打ち勝てる者にオイラを殺してほしいんだな!」



 幻術魔法に打ち勝てる者に殺してほしい、か。

 まあ幻術魔法に打ち勝てないものはそもそも勝負にならないってことだもんな。

 己を殺し得る者を求めて、幻術魔法に打ち勝つのできる俺の所まで近付いてきたってことだよな、きっと。


 全く迷惑な話だ。

 死にゆく者を憐れむような優しい奴を殺せなんてなんつー拷問だよ。



「自殺願望を持つのは勝手だけどよ。言っておくが、俺はお前を殺すつもりはないぞ」

「ど、どうして!?」

「だってあんまりじゃないか。そんな一生はさ。このまま終わらせるなんてもったいないだろ?」

「で、でも、このまま生きていたってオイラはずっとこの苦しみを味わうだけなんだな……」



 そう言ってうつむくユニコーン。

 今までずっと、自分に優しさのぬくもりを与えてくれた生き物が例外なく死に、そしてその生き物を食らって生きていく。

 そんな過酷な生活をひたすら余儀なくされてきたんだから、生きる事を苦しく思うのも当然だろう。

 だけどこれから先もそんな生活しか送れないなんて誰が決めた? 



「なら、もしそんな苦しみを味わなくても生きていけるとしたら、お前はどうしたい?」

「そ、そりゃ生きたいのだ。でもそんなことは―――」

「できる。いや、俺がそういう生活をさせてみせるさ」

「えっ!? でもどうやって―――」



 俺は自分の考えを説明した。

 ユニコーンの住処や食べ物は俺が提供すること。

 その為にいくらかユニコーンには働いてもらうことがあること。

 ユニコーンに近付いてしまった生き物に対しては俺が幻術魔法で治してあげること。



「な、それだったらお前は優しく声をかけてくれる者を殺さずに済むだろ?」

「そ、それなら確かにそうなるけど、でもドラゴンさんにご迷惑を―――」

「だからその分働いてもらうって言ってるじゃねえか。もちろんサボったら許さないからな! 分かったか?」

「……わ、分かったんだな。でも、本当にいいんだな?」

「ああ。ただ、基本的にお前は俺の指定する定位置で過ごしてもらう。でないと、幻術魔法にかかってしまう生物が大量発生してしまって回復が追いつかないからな」

「も、もちろんそんな事は分かってるんだな!」

「なら、何の問題もないさ」



 俺はニヤッとユニコーンに対して笑みを浮かべる。

 するとユニコーンもつられて笑みを浮かべた。

 うん、やっぱり鬱々とした顔よりも笑顔の方が全然良い表情をしているな。  



「では俺達の仲間になる訳だし、今更だが自己紹介をさせてもらうぞ。俺はエンラっていうんだ、よろしくな」

「よ、よろしくお願いするのだ、エンラ」

「お前はユニコーンだから―――ユニって呼んでいいか? ちょっと女の子っぽい名前になってしまったが」

「別に構わないのだ。それにそもそもオイラは女なのだ」



 へっ?

 そ、そうだったの?

 てっきり口調からしてオスだとばかり―――



「そ、そうだったんだな……。とにかくよろしくな、ユニ!」



 動揺を隠しつつ、俺はユニと共に住処へと向かう事にした。



********

八日目:残金199298B

収入:なし

支出:なし

収支;+0B

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