3.安全に休める寝床を用意してみました
俺は植物から離れ、薄い茶色をしている乾燥気味の地面を歩いていく。
俺の身体の色はカーキ色なので、植物や地面にいても保護色になって比較的目立たなくなっていそうだ。
だからといって天敵はそれを見抜いてくるだろうし、油断はできない。
今向かっている方向には大きな気配は感じないから恐らく大丈夫だとは思うのだが不安だな……
だって食べられたら一発アウトなんて、修羅場過ぎるだろ!
もうこの体に生まれてしまったんだから文句を言っても仕方がないんだけどさ。
とにかくやるべきことをやろうか。
しばらく地面を歩いていると、今度は自分より少し大きい程度の植物を見つけた。
これ位の大きさなら所有できなくはないし、売れたりしないかな……?
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”雑草”を売却しますか?
売却額 0B
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売却するか聞いてくるという事は所有はできるという扱いになっているようだ。
だけど売却額ゼロって意味ねえじゃん!?
まあ無料で処分してもらえるという点ではありがたいことなのかもしれないけどさ。
お金を稼ぐという今の俺の目的には合っていないな。
次行こうか。
もう少し歩くと今度はまた別の植物が見えてきた。
俺と同じ位のサイズで、小さな花を咲かせている。
これならどうだ?
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”雑草”と”雑草の花”を売却しますか?
売却額 1B
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これも雑草扱いか。
なかなか手厳しいな。
でも1Bでは売れるみたいだ。
多分花が1Bで売れるんだろうな。
少しでもお金が欲しいからこれは迷わず売却っと。
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”雑草”と”雑草の花”を売却しました。
残り所持金 14B
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売却した植物は以前売却した卵の殻と同じようにその場から消滅した。
あまりに急に消えてしまうから何度見てもビックリするよな。
消え去った物って女神の所に行くんだろうか?
女神ショッピングで売却しているんだしな。
まあ気にしても分かりようがないから次行こう、次!
”雑草の花”は他にもいくつか生えていたので、それらを全部売却して5Bゲット。
他には紫色をした植物”ムラサキソウ”が3Bで売れた。
価値があるという事は紫色の草に何かしらの効果があるんだろうけど、今の俺に確認する手段はないんだよな。
一体どんな効果があったのか気になるなあ。
まあもう売ってしまったから遅いんだけど。
多分【鑑定】能力的なものを取得できれば分かるんだろうか?
一応検索してみるか。
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どの鑑定道具や能力をお買い求めですか?
残り所持金 22B
おすすめ順 3件中3件表示
鑑定 17000000B
鑑定鏡 120000B
中古鑑定鏡 10000B
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やっぱり高いな……
転生したらステータス画面を表示させる物語を読んだことあるけど、あれってチートすぎるだろ。
使える人が本当に羨ましいわ。
残念ながら俺は当分そんな能力を身につけられそうにないな。
頑張れば身につけられるかもしれないっていう所はロマンがあって良いんだけどな。
きっと俺が望んだ現代社会の生活に関しても、こういった高い金額を払えば実現できるんだろう。
だからこそ女神はこの”ショッピング”能力について、”困難はあるが、実現する可能性のある能力”という表現をしたんだろうな。
チャンスがあるだけ儲けものっていう事かもしれない。
まあ正直この状況じゃ、現代社会の生活をするどころじゃないし、安全に生きられればそれだけで十分と思ってしまうんだけど。
……げっ、大きい気配のする奴がこっちの方に向かってきているな。
スピードも結構早い。
というか、今の俺の体があまりに小さすぎるから逃げようにも逃げ切れないか。
どこかに隠れてやり過ごすしかなさそうだが、どこがいいかな?
あっ、あの辺りはどうだ?
俺はカーキ色をした巨大植物を見つけ、そしてその葉の上でじっと待った。
すると近くに見えてきたのは……
(短剣を持って醜悪な顔をしたあの姿……オーガ、いやゴブリンか!?)
現れた魔物は全身緑色の体をしていて、手には短い剣が握られている。
短い剣といっても、単に魔物の体と比較しての話であって、俺にとっては巨大な剣に見えるのだが。
俺から見たら魔物があまりに巨大だったのでオーガかと思ったが、今の俺の大きさを考えればゴブリンの可能性が高いな。
売却しようとすれば名前が出たはずだから、それで確認してみるか。
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あの”ゴブリン”は所有できないので売却できません。
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おっ、やっぱりこいつ、ゴブリンだったのか。
一応売却を試してみて正解だったわ。
これからも未知の物や生物を見かけたら売却で名前を確認するといいかもな。
これでゴブリンとなればオーガとかだったらどんだけデカいんだろう?
あんまり想像したくないけど。
まあそもそもオーガがこの世界にいるかどうかも定かではないんだけどな。
それにしてもこの世界、魔物とかいるんだな。
ファンタジーに出てきそうな【鑑定】能力とか出てきたし、薄々そんな感じはしていたんだが。
まさか本当にいるとは。
そんな世界でただの小さいトカゲになった俺ってめっちゃ弱くね?
地球でも天敵が多いようなひ弱な生物なんだぞ、トカゲの幼少期って。
……なんか現実から目を背けたくなってきたわ。
そうやってあれこれ考えているうちに先程近くまで来ていたゴブリンはどこかへ立ち去っていったようだ。
つまり、命の危機はとりあえず脱したということだな。
うん、保護色様、万歳。
さて、危機も去ったことだし、引き続き売却する物を探したい所なんだが、空はもう橙色に染まっており、もうすぐ日没だ。
夜だと一層凶暴な生物がいそうだし、明かりがない分、視覚以外、例えば嗅覚とかに優れた魔物がいて、保護色が役に立たずにすぐに見つかってしまう可能性がある。
夜には外を出歩かない方がいいな。
……っていっても、どこに隠れればいいんだ?
隠れても匂いって分かるものだよな?
野生の生物ってどうやって天敵からやり過ごしてるんだろう?
もっとちゃんと勉強しておけば良かった……
泣き言を言っても仕方ない。
俺には”ショッピング”という能力があるじゃないか!
”ショッピング”ならこの状況を何とかしてくれるかもしれない。
だから早速検索っと。
あっ、もちろん安い順でお願いしますね。
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どの安全に過ごせる寝床をお買い求めですか?
残り所持金 22B
安い順 1252件中5件表示
安全な穴(一泊) 10B
安全な大穴(一泊) 30B
安全な穴(五泊) 30B
安全な大穴(五泊) 100B
安全な地下空間 100B
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おっ、安全な穴が10Bで販売しているぞ!
どれ位安全なのかは知らないが、でも何もできないよりは断然マシだろう。
今日の寝床はそれで決まりだな!
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以下の物を購入しました。
残り所持金 12B
安全な穴(一泊) 10B
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この表示が出た瞬間、俺の目の前にはボコッと穴が空く。
その穴の中に入ると、穴の中は自分の体がすっぽり入る程度で、あまり広さには余裕がない。
まあ意外と息苦しさも感じないし、あまり広すぎても落ち着かないからこれ位がいいのかな。
ちなみに俺が穴に入った時に使った入口は俺が入った瞬間に緑色の膜みたいなもので塞がれた。
これが結界みたいなものになっているのかもな。
だからこそ安全な穴という訳か。
全部憶測でしかないから実際はどうなっているのか分からないが。
さて、とりあえず安全は確保したということでちょっと腹が減ってきたな。
何か食べ物を頼めないかな?
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どの食べ物をお買い求めですか?
残り所持金 12B
安い順 152201252件中5件表示
米粒(100粒) 1B
水 (100滴) 1B
パンくず(1g) 1B
塩(1g) 1B
砂糖(1g) 1B
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おっ1Bで買える物がたくさんあるぞ!
これは助かった。
しかも水も頼めるみたいで助かるわ。
それにしても1億5220万件ってすごいな。
同じ食べ物でも量によって別メニューになったりしているからそんなすごい件数になるんだろうけど。
ともかくお金さえあれば食べ物には苦労しなさそうなのは朗報だ。
さて、何を頼もうかな?
今の俺の体は小さいし、あまり大きな物を頼むとこの寝床に入らなそうだ。
という事で無難に米粒から頼んでみるか。
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白米、玄米どちらがよろしいですか?
米粒は一度に何粒注文されますか?
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えっ、そんなのも選べるのかよ!?
てっきり決まったものが出てくるとばかり思っていたんだが、まさか選べるとは。
女神ショッピング、なかなかやるな。
食べなれたのは白米だが、栄養面から考えると玄米の方が良さそうだ。
確か玄米と水さえあれば生きられると聞いたことあるしな。
お金を節約したいことも考えると、玄米一択だろう。
ちなみに水に関しても硬水、軟水から選べ、分量も選べるみたいだ。
もちろん軟水を選んだけど。
量に関しては無難に一粒、一滴ずつにしよう。
どれ位の量がどのように現れるのかよく分からないしな。
これが女神ショッピングから購入する初めての食べ物になるから、慎重にいこう。
というわけで、玄米一粒ずつ、水一滴ずつでお願いします!
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以下の物を購入しました。
残り所持金 10B
米粒(100粒) 1B
水 (100滴) 1B
尚、米粒は玄米一粒ずつ、水は軟水一滴ずつ提供されます。
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その画面が表示された瞬間、上から茶色い米粒が落ちてきた!
そして俺の体にぴちゃんと水が一滴、滴り落ちる。
物を頼むとこうやって降ってくるのかよ!?
やっぱり一つずつにしていて正解だった。
間違えて100粒とか100滴全部頼んでいたらヤバいことになっていたな。
慎重な行動って大事だな、やっぱり。
俺にとっては巨大に見える米粒を平らげると、次の米粒を思い浮かべる。
するとまた上から米粒が一粒落ちてきた。
それからも繰り返して物を出現させて分かった事だが、どうやら俺の思考と連動されて物が出現されるようになっているらしい。
水を例えば二滴欲しいと思えば、二滴落ちてくる。
そして望まなければ米や水が勝手に降ってくることはなかった。
降ってくる場所は一定で、自分の体長を高さにしたような所から落ちてきていた。
何センチかどうかは物差しがある訳ではないので分からないし、曖昧な表現にはなってしまうが。
降ってくる水滴も最初はただ自分の体に降りかかるだけだったが、慣れれば一滴も外さずに飲むことができるようになった。
コツってやっぱりあるもんだな。
体が小さいからか、玄米100粒、及び水100滴を食べきらないまま満腹になった。
満腹にするのに2Bだけで済んだのはうれしい誤算だったな。
確かに味気なかったけど、生きるか死ぬかのこの状況ならそんな事も我慢できる。
腹も膨れたし、今日の所はもう寝るとしようかな。
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一日目・残金10B
収入:雑草の花6B、ムラサキソウ3B
支出:安全な穴10B、米粒1B、水1B
収支:ー3B
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