28.カトカと散歩をしてみました
雨も上がったことだし、テントから出ることもできたので、俺は元の大きさに戻すことにした。
やっぱり等身大の大きさが一番体に優しいらしく、大きさを変えるほど体に疲労感があるんだよな。
重さはずっと変えっぱなしだから、重さを変えることにはもう慣れたけど。
「あっ、エンラさん目が覚めたのか?」
そう言って鷹のターガが俺の肩にスッと着地してきた。
着地音がしないから急に近くに現れた感じがしてちょっとビックリするんだよな……
「ターガはよく眠れたのか?」
「ああ、おかげさまでな! ……すまない。いつもおれ、見張りの途中で眠ってしまって」
「いや、無理しなくてもいいんだ。みんなそれぞれ得意な事、不得意な事があるもんな」
「本当にすまない……」
でも確かに今の現状、ターガが見張りをしている意味があんまりないんだよな。
頑張ってくれている気持ちはありがたいんだけど。
今はコクリが一人で頑張ってくれているから何とかなっているけど、このままじゃコクリの負担が大きすぎる。
何とか負担を分担できないかな?
「ターガ、夜中ずっと起きているのは厳しいかもしれないが、少しの間だったら起きていられるか?」
「えっ……そ、それはもちろんだとも!」
「ならさ、俺とコクリとターガの交代制で夜の見張りをしないか?」
「交代制……っすか?」
「ああ、それはな―――」
俺は自分の考えをターガに話した。
俺が考えた案はこうだ。
夜は基本的に二人体制にする。
例えば俺とコクリが見張り担当の時はターガが眠る。
そしてしばらく経ったら今度はターガと俺が交代し、今度は俺が眠る。
またしばらく経ったら俺とコクリが交代し、コクリが眠るという感じだ。
そうすれば夜の間にも睡眠がとれるし、コクリだけに負担をかけることはなくなる。
二人体制だから一人がもし寝てしまってもカバーがきくしな。
「おお、それは良い考えだな!」
「だろ? 今晩からそれでいこうと思うが、どうだ?」
「是非、そうしよう! それならおれでもやれそうっす!」
ターガは張り切りながらそう言った。
この喜びようから考えて、ターガとしても途中で見張りがうまくできなくなることはあまりよく思っていなかったんだろうな。
みんなが過ごしやすくするような仕組みというのはこうやって考えて少しずつ実行できるといいだろう。
「クピャッ!」
あれっ、カトカったらいつの間に俺のそばまで来ていたんだ?
てっきりコクリの体に隠れていると思っていたんだが……
「もしかしたらカトカさん、エンラさんと一緒に過ごしたいんじゃないか?」
「俺と? ああ、そういえば確かに最近カトカの事を見てやれなかったな。コクリに任せっきりになっていたかもしれない」
昨日はテントに籠りっきりでコクリと一緒にいてもらったし、一昨日は九尾との戦いでコクリに預けっぱなしだったもんな。
そういう所でもコクリに頼りっきりだったな、俺。
そりゃコクリも疲れるわ。
もうちょっと俺も頑張らないとな。
「分かった。今日は思う存分俺と遊ぼうか、カトカ!」
「クピャア!」
嬉しそうに返事をするカトカ。
やっぱり俺と遊びたかったみたいだな。
なら、その期待に応えてあげなくては!
「ターガ、コクリを頼んだぞ!」
「ああ、エンラさんなら心配いらないだろうが、一応気を付けてな!」
ターガは俺の肩から木の枝に移動する。
そして俺はカトカと一緒に少し散歩することにした。
カトカを手にのせながら森の中を歩いていく俺。
だが、相変わらず俺を避けているからか、生物の姿が見当たらない。
うーん、これじゃあんまり意味がないよな。
「クピャア……」
「ごめんな、カトカ。これじゃ退屈だよな」
せっかくだし、できればカトカを楽しませるというか、本来の動きをさせてあげたい。
そのためには今の俺はかなり邪魔になってしまう。
何故ならカトカの獲物になるような生物すらも逃げてしまうのだから。
きっと生物が逃げてしまう原因は、この大きな体にあるのだろう。
魔力は自然の恵みで消費しているから、周囲を威圧していることはないだろうしさ。
なら、解決方法は簡単だな。
俺はカトカを地面に置き、そしてサイズチェンジとウェイトチェンジを使う。
するとみるみるうちに俺の体が縮んでいき、カトカとほぼ同じサイズにまで変化した!
「クピャッ!?」
「はは、驚かせて悪かったな。でもこれでカトカと同じ目線で冒険できるだろう。きっと楽しくなるぞ!」
「クピャッ!」
俺が何か楽しくなる事をしたことを察したのか、カトカは嬉しそうな反応をした。
そしてそのままカトカは前へと進み出す。
俺はカトカにそっとついていくことにした。
「クピャッ」
「おっ、あれは、虫か。どれどれ……」
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あの”アレノスカマムシ”は所有できないので売却できません。
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アレノスカマムシ?
手が鎌のようになっているから鎌虫ってことか。
カマキリに似ている虫だな。
色は茶色だけど。
カトカと同じ位の大きさだし、まだ幼生なんだろう。
「クピャア!」
カトカは虫に向かって突撃した!
意外とカトカの奴、動きが素早いんだな。
虫がこちらに気付いた時には既にカトカはもう虫の目の前に迫っていて、そのまま虫はカトカの胃袋におさまった。
虫を食べて満足そうなカトカ。
うん、確かトカゲって普通はこういう生きた虫を食べるらしいよな。
俺には人間の頃の感覚があるからむしろ食べる気がしないんだけど。
「クピャ」
「あっ、どこ行くんだ、カトカ?」
カトカがまたどこかへ移動していくので、俺は慌ててカトカを追いかける。
その途中で果物の実みたいなものがあったので、それをいくつか売却して1000B手に入れておいた。
そしてしばらく追いかけていると、次第にザーッという音が聞こえてきた。
「クピャッ」
「ああ、なるほどな。水を飲みに来たのか」
カトカがやってきたのは川だった。
川の中でも流れが比較的穏やかな所の水をカトカはペロペロなめている。
こうして水分を補給するもんなんだな、なるほど。
俺もカトカと一緒に川の水を飲んでみた。
うん、冷たくて美味しい。
川をじっと眺めると、底の方に大量の魚が上流に向かって遡上していく様子が見える。
あの魚、どういう魚なんだろうな?
ちょっと調べてみるか。
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あの”アレノスザケ”は所有できないので売却できません。
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おっ、サケなのか。
サケが上流に向かっていくということはサケの産卵時期、つまり秋にあたる訳か。
道理で木の実とか色々ととれる訳だな。
気温も程よくて過ごしやすいしさ。
……まあこの世界のサケも秋に産卵するとは限らないから絶対とは言えないけど。
周りを見渡すと、鹿やイノシシ、ウサギらしき動物も水を飲みに来ている様子が見える。
今の俺はとても小さい上に周囲に放出する魔力を自然の恵みに変化させているから、俺の事に気付かないんだろうな。
もし俺が元の大きさに戻ったり、自然の恵みの発動を切ったらみんな一斉に逃げ出す事間違いないしさ。
本来、川ってこんな感じで生物であふれているものなんだろうな、きっと。
「クピャア……」
水を飲み終えたカトカはウトウトし始めていて、とても眠そうにしている。
時刻は13時30分。
ちょっと早い気もするが、カトカにとってはお昼寝する時間なのかもしれないな。
カトカは移動をし、日陰になった所でスヤスヤと眠り始めた。
カトカったら呑気なものだな。
俺がベビートカゲの時は他の動物や魔物に食べられないか戦々恐々としていたというのに。
ベビートカゲって本来こういうもんなのかな?
それともカトカがちょっと大物なだけなんだろうか?
まあ考えた所で、他のベビートカゲを見てないから分からないんだけどさ。
さて、そろそろお昼だし、俺も昼食にしますか。
いつもおにぎりを食べるのはさすがに飽きてきたからたまには他の物を食べようかな。
例えばサンドイッチとかな。
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以下の物を購入しました。
残り所持金 318698B
ハムたまごサンド 200B
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そういう画面が出ると同時に、俺の目の前に巨大なサンドイッチが出現した!
おっ、やっぱりこういう物って大きさが決まっているのか。
女神ショッピングの操作画面は俺の大きさに合わせたサイズになっているんだけどな。
それはともかく、いただきますか。
俺は目の前のサンドイッチにかぶりつく。
うん、たくさん食べられるっていいね。
俺が小さくなった段階で腹いっぱい食べてから元の大きさに戻っても満腹感は持続するのが不思議なんだよな。
栄養面とか食べた物がどうなってるのかちょっと気になったり。
まあ生きていけるのならどうでもいいか。
ちょっと時間をかけてサンドイッチを完食する俺。
ふう、体の何倍もあるサンドイッチを完食できてしまうなんて、ドラゴンの胃袋ってすごいんだな。
元の大きさで腹一杯食べようとしたらどれだけの量の食料が必要になるんだろう?
いつも食べ放題でひたすら食べまくっていたから考えたこともなかったけどさ。
女神ショッピングがなかったら、きっと九尾と同じ位、多くの動物を狩る必要があったのかもしれない。
それをする必要がないって、なかなか恵まれているな、俺。
ショッピング能力をくれて本当にありがとう、女神様。
……ん?
でもサンドイッチを食べると余計に腹が減ってきたぞ?
それにさっきから何となく力も出ないし。
もしかしてこれって栄養不足の症状なのか?
そういえば俺って【飢餓耐性】のスキルをつけていたよな?
試しにそれを例えば発動を止めようと念じてみると……
き、気持ち悪ッ!?
強烈な脱力感に、めまいも感じ、まともに立つこともままならない。
は、早く【飢餓耐性】を発動させなくては!
ハア、ハア……
いや、焦った。
死ぬかと思ったわ、マジで。
いや、本来の俺であればあのような状態になるってことだよな?
それってまずいんじゃないか?
早く何かしら食べないと。
俺は身体を元の大きさに戻してからランチセットを注文し、カトカが寝ている間にひたすら食べ続けた。
もう食べきれないというほどおかわりを続けて、ご飯などを体の中に入れ続ける。
……ふう、これで多分大丈夫だろう。
そういえばあまりに栄養をとっていない状態で食べようとすると体が食べ物を受け付けないとか聞いたことがある。
飢餓耐性の発動をやめて無事かどうか確認したい所なんだが、飢餓耐性を切った途端に食べ物が逆流するなんてことは避けたいから、このままでいよう。
というか、俺、いつの間に栄養不足状態になっていたんだ?
ちゃんと食べていたはずなんだが。
最近食べた物といえば、おにぎり数個だけ。
自分の体を小さくしながら食べていたから満足感は得られていたが、もしかしてそれがまずかったのか?
相対的に大きくなった食べ物は食べ応えがあるが、栄養面は全く変わっていなかったと。
体が巨大なドラゴンである今の俺は人間の頃よりも消費エネルギーも多いだろうし、おにぎり数個じゃ体がもたないよな。
……こりゃ一日一回は食べ放題を活用していかないとやっていけなさそうだな。
これからは気を付けよう。
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七日目:残金318698B
収入:アレノスプチベリー1000B
支出:サンドイッチ200B、ランチセット1000B
収支;-200B
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