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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
十章 ヒューマンショッピング
251/357

251.メイリスの思いを受け取りました

 魔物の部位は、ギルドで買い取ってもらえるのは、見た事がある。

 という事で、メイリスにギルドの場所を教えてもらい、ギルドへと向かう事にした。



「……これらを全て換金すると、3200マルナになるな」

「分かりました。換金をお願いします」

「毎度あり。次回もよろしく頼むな」



 ギルドの素材屋にて無事に換金が完了。

 これで3200マルナが手に入ったし、メイリスが欲しがっていた服を買う事ができる。



「あ、あの、え、エンラ……?」

「どうしたんですか、メイリスさん、浮かない顔をして?」

「いや、その、やっぱりあの服、買わなくて良いわ……」



 メイリスはうつむきながら、そう言っていた。

 欲しがっていた服を諦めるなんて、何か思う所があったんだろうな。



「欲しがっていたのに、どうして諦めるんですか?」

「あっ、いや、買ってくださるのはありがたいのよ? でもそれを買ってしまったら、エンラとお別れなんでしょ? そんなの嫌なのよ!」



 あー、やっぱりそういう事を思っていたか。

 メイリスは自分一人では生きていけないもんな。

 服を買う事が突き放す条件なら、そりゃ服は買わなくて良いと言ってくるか。



「別に服を買う買わないは関係ないですよ? 元々俺はメイリスさんを安全な近くの町まで送り届けるつもりでしたし。メイリスさんは素直じゃなかったですけど」

「えっ、そうなの……?」

「はい。俺は危険な旅をする旅人。メイリスさんをそんな旅に巻き込みたくはないと常々思っていたのです。正直ここまで来るのもヒヤヒヤものでした」



 メイリスをここまで連れてくるのは、普通の人ならなかなか厳しいだろう。

 どうしても戦闘経験のないお嬢様を一緒に連れて行くとなると、どうしても足かせになってしまう。

 ここは厳しいが、突き放さないといけない所なのだ。



「それならばわたくしは危険な目にあっても構わないわ! エンラを信じているから!」

「あっ、えーと……。あまり言いたくはないのですが、メイリスさんを守りながらでは旅がしにくいんですよ」

「あっ、そ、それならば、私が強くなるわよ! だ、だからどうかエンラと一緒にいさせて! お願いだから!」

「うーん……」



 メイリスはお嬢様育ちだからか、人の事を考えた発言はなかなかできないみたいだな。

 でも、気持ち自体はとても純粋で、頑張る意欲があるといった所か。

 さて、どうしたものかな。



『ワルデス、メイリスの様子を見守るもう一人の俺を作りたい。どうしたら良いと思う?』

『なるほど、そうきたか。それなら二つ方法はあるぜ』



 ワルデスはそう言うとニヤリとした。

 ワルデスの中ではある程度俺がどうするのか予想していたんだろうな。


 俺は本来の目的を果たすために、旅は続けたい。

 でもメイリスをただ見捨てるのも嫌。

 となれば、メイリスの面倒を見る自分と、旅を続ける自分が必要になるんだよな。

 そうなると、俺が先程ワルデスに相談したことが必要になってくる。



『二つあるのか、教えてくれ』

『一つは俺様がエンラを再現した人形を作り、それを俺様が操る。その場合はその様子を俺様が遠くからエンラに見せる事ができるぞ』

『つまり、俺がキュビカさん達の様子を見ているのと似た感じになるという訳だな?』

『そういう事だ。あともう一つは、エンラがその俺様がやっている事をやるという訳さ』

『俺が? でも俺はそんな技は使えないぞ?』



 人形を作る力、またその人形を自らの意思で操るなんて技は今の俺には使えない。

 人形をショッピング能力で買う事はできるが、そんな事をわざわざするのもどうかと思うし。

 あと、人形を操る力ももちろん持っていない。


 ショッピングの検索機能で調べた所、ドールメイカーという能力が500万Bという価格で購入できるようだが、ちょっと高すぎる。

 600万Bほどの残金はあるから変えなくはないが、ちょっともったいない気がするんだよな。



『使えないなら覚えれば良い話だぞ、エンラ』

『それはそうかもしれないが、技を覚えるなんてそう簡単に――』

『できるさ。俺様とエンラは一心同体。俺様が使えるならば、エンラも使えないはずがない』

『俺とワルデスの記憶自体は全く別だから、そう言われてもな。もしワルデスが技を使っている具体的な記憶があれば話は別だけどさ』

『え? だから俺様はそうするつもりだったんだが?』

『え? できるのか?』

『え? できないと思ったのか?』



 ……えっ、まさかな。

 というか、記憶の共有ができるなら、なぜ今までそれをしなかった?

 ワルデスが俺に対してわざわざ言葉で説明しなくても良かっただろうに。



『それならもっと早く教えてくれよ。……まあ、いい。あまり黙っているのも何だし、早速お願いしても良いか?』

『ああ、了解だ』



 ワルデスがそう言うと、周囲に黒いもやみたいなものを出し、それが俺の体に入ってくる。

 すると、ワルデスの記憶の一部が入ってきた。


 ……うん、そういう事か。

 技の使い方はよく分かった。

 あと技を使った場合、どうなるのかなど、その効果についても。


 ワルデスがいかに酷い事を喜んでやっていたのかという余計な事も分かってしまったが……。



『ワルデス、後でお仕置きな』

『え!? 俺様、何も悪い事してねえだろ、訳わかんねえよ!?』



 そう必死に訴えかけてくるワルデス。

 まあ、本人からしたら、とっくに終わった事なんだろうし、本当に訳分かんないんだろうな。

 とにかく、やるべき事を済ませてしまうとするか。



「分かりました。一緒にいてもらっても構いません。ですがその代わり、俺を頼らずに生きていくこと。それを約束できますか?」

「頼らずに、一人で生きる?」

「はい。最初はうまくいかないでしょう。ですから、その部分は俺が支援します。でも、基本的にはメイリスさんが自力で生きていこうとする事が条件です。それでも頑張れますか?」



 俺がそうたずねると、メイリスはうーんとうなっていた。

 そして少しすると、まっすぐこちらの方を向いて、話し始める。



「分かりましたわ。それで結構よ。あと、一人で生きるだけじゃなくて、エンラと一緒に旅を出来る状態を目指したいのだけれど、可能かしら?」

「別にそれ以上を目指す分には構いませんよ」



 俺はそう言ってニッコリと微笑むと、メイリスはほっとしたような表情になった。

 メイリスは、俺と旅をできるようになるまでを目標に見据えたようだな。

 なかなかやる気がありそうで、何よりだ。



 さて、そんなこんなで結局この日は大きな出費なく終了。

 ちなみにあの後、服屋には行った。

 だがメイリスが欲しがっていた高いドレスは買わず、俺が良さそうだと言った一般的な服を買う事になった。


 先程の言葉でメイリスの思いの何かが変わったのだろうか?

 でも、その買った一般的な服をメイリスが来てくれたおかげで、メイリスの服に幻術をかける必要もなくなって、少しほっとした。

 メイリスが協力的な姿勢になってくれたのはだいぶ大きいな。



 さて、その後はというと、軽く町の散策をした後、宿を借り、そこで休む事に。

 メイリスとは別々の部屋を用意してもらった。


 部屋には自分とワルデスしかいないので、部屋の中で例の技を発動。

 自分と瓜二つの人形を作成し、自分の魂の一部をそこに宿す。

 すると、その人形にも自分の意識が薄らと感じられる奇妙な感覚が発生した。


 ワルデスの記憶でそうなる事は分かっていたが、実際にそうなると不思議な気分だな。

 まあ、この状態もいつかは慣れるんだろうけど。


 ちなみにワルデスも同じタイミングでリスのぬいぐるみのコピーを技で作成し、俺が作った人形のバッグの中にぬいぐるみを入れてくれた。

 俺が作った人形には俺の魂が宿っているし、その人形が持つリスのぬいぐるみにもワルデスの魂が宿っている。

 そういう意味では、本物の俺達は大差ないのかもな。



 こうして人形作りを終えた俺達は、ワルデスの幻術を使って、姿をくらましながら、この宿を去る事にした。

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