239.旅立つ時がやってきました
そしてその翌日。
ついに旅立ちの日がやってきた。
「エンラ、本当に行ってしまうのじゃな?」
「ああ、すまないな、キュビカさん。食料は用意しておくから、しばらくはそれで食べていってくれ。ただ、それでも足りないだろうから、その分は自分達で――」
「エンラ、そんなに心配しなくてもよい。別にわらわ達はエンラに頼らなくても生きていける。そもそもエンラに出会う前まで何年自力で生きてきていると思っておるのじゃ?」
「それもそうだよな。すまない、心配し過ぎたようだ」
「謝らなくても良い。もちろんしばらくエンラが出してくれる食べ物を食べられないのは辛い事には変わりないのじゃ。……何よりエンラがいないと寂しいしの。できるだけ早く帰ってくるのじゃぞ?」
「ああ、分かってる。できるだけ早く用事を済ませて、戻れるように努めるさ」
女神ショッピングである程度日持ちするような食料を買って、ここに置いておいた。
だが、それでも数日分位にしかならないだろう。
俺がここに戻ってくるまでには数日どころか数十日、いや、下手したら数年かかるかもしれないのだ。
それを考えれば、残していく食料など気休めにしかならない。
ただ、キュビカの言う通り、俺の仲間達は元々俺がいなくても生活できていた奴らばかりだ。
カトカだけは俺が世話をしてきた事になるだろうが、もう十分カトカは自力で生きていけるほど強くなったし、そんなに心配しなくても良いだろう。
「お父さん……しばらく会えないんだね」
「そういう事になるな。だけどカトカなら俺がいなくても十分生きていけるだろ。それにいつかは帰ってくる。それまでに俺を驚かせるほど成長してみせろよ?」
「……うん、分かった! でも僕、結構成長スピード早いんだからね? 僕だって分かるうちに早く帰ってきてよ?」
「ハハ、それは随分と自信のある発言だな。でも分かった。それまでには帰れるように努めよう」
自分だと分かるうちに帰って来てとは、なかなか不思議な事を言うもんだな、カトカは。
……いや、あながち嘘でもないのかもしれないな。
何しろ、俺だって元々は小さなトカゲに過ぎなかったのに、今や巨大なドラゴンな訳だし。
カトカもそのようにして、現時点でリザードマンにまで進化している。
俺がしばらく帰らないうちに、今とは全然違う容姿になっていてもおかしくない訳だ。
そう考えるとちょっと恐ろしいな……。
「カトカの事なら心配いらないわよ。それにいざとなったらカトカは私が守るから。安心して行ってきて!」
「そうだな。コクリがいるからそこは心配ないか」
「お父さん、僕はもうそんな心配されるほど弱くないよ! いざとなったら僕がお姉ちゃんの事を守ってあげるんだ!」
「うんうん、頼もしいものだ。それじゃカトカにコクリの事は任せようか」
「うん! 任せておいて!」
特に心配はいらないと自信を持って言うコクリとカトカ。
本当にみんな、たくましいものだな。
今までの俺が過保護すぎただけなのかもしれない。
とにかく、俺がいなくてもみんなしっかりと生きていけそうで何よりだ。
ただやっぱり本当に大丈夫なのか心配にはなるよな……。
「そろそろ出発するんだろ、エンラ?」
「ああ、そうだな……」
「口ではああ言っても、やっぱり仲間の事が心配なんだな。なら俺様がこうすればどうだ?」
そう言ってワルデスは右手に黒いもやをまとわせる。
すると住処の中に置かれている俺の形をした砂の模型が動き始めた。
「エンラがここを留守にしている間、俺様がこの模型を通してここの状況を確認する。そして俺様がその状況をエンラに報告する。それなら安心だろ?」
「ああ、確かにそうだが……その技って距離制限とかないのか? 何て言ったって俺達は違う大陸に行く訳だし、ここから相当離れた所に行く事になるんだぞ?」
「それ位問題ねえよ。俺様にかかればな」
「そういうものなのか。まあ、そんな事でウソをつく必要もないだろうし、ここはワルデスを信じよう。ありがとな、ワルデス」
「へへっ、これ位どうってことねえよ」
砂の模型を通して中の状況が分かる、か。
それなら遠くにいても、みんなの状況が分かるし、安心だな。
「エンラ、そいつの事をそんなに信頼しても良いのか? そいつが嘘をつかぬという保証はないと思うのじゃが」
「むっ、失礼だな、お前! 俺様がエンラに対して嘘をつくだと!? そんな恐ろしい事をしたらどうなるか位俺様が一番知っているんだよっ!?」
「……その恐れに満ちた声からすれば、ワルデスは嘘をつけなさそうじゃの。余程ソウルパージが恐ろしいように見受けられる」
嘘はつかないと必死な思いで即答するワルデス。
ソウルパージはやはりワルデスにとって相当致命的なものになるようだな、やっぱり。
「だけど口頭の報告だけじゃ、いまいち状況を理解できない事もありそうだな。何か良い方法はないのか、ワルデス?」
「フッフッフッ……俺様を甘く見るなよ? これを見るがいい!」
ワルデスが再び右手に黒いもやをまとうと、空中に映像みたいなものが突如出現した。
そこに映っているのは俺達……?
「今砂の模型から見た景色をここに映し出しているのだ。これならば文句なしに状況が把握できるだろう!?」
「おお、確かにそう言われてみればそんな感じの映像だな。これも悪魔の魔法によるものなのか?」
「フッ、そうだ。俺様達、悪魔は伊達に長年生きてきていないという事だ。どうだ、驚いたか?」
そう言うとエッヘンとして偉ぶった態度をとるワルデス。
確かにすごい魔法に違いはないのだが、何故か素直に褒める気にはなれないんだよな。
「……とにかく、これで安心だな。それじゃみんな、俺、行ってくる。できるだけ早く帰ってくるからなー!」
「……って、おい!? ノーコメントかよ、エンラ!? 待てよー!?」
「エンラ、気を付けて行って来てねー!」
「お父さん、早く帰って来てねー」
「行ってくるのじゃ、エンラ。そして早く戻ってこい」
こうして仲間達に見送られつつ、俺はワルデスとともに隣の大陸、イリノス大陸目指して飛び立つのだった。
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三百三日目:残金6162050B
収入:獲物70000B
支出:食費70000B
収支:+0B
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