表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
二章 ライフショッピング
19/357

19.怪我をした鷹を助けてみました

 鷹が飛び去った方向へ移動を始める俺。

 だがなかなか鷹の姿は見えてこない。


 相手は飛んで、こちらは徒歩での移動だもんな。

 そりゃなかなか追いつく訳ないか。

 むしろ離される一方だろう。


 俺も飛べばいい話と思われるかもしれないが、飛ぶ事に慣れない俺がいきなり飛ぼうとするのは危ない。

 重力をゼロにすれば体は浮くし、飛べなくはないんだろうが、それは速く移動するという目的にはあってないしな。

 むしろ余計に時間がかかるだろう。

 どれ位の重さに調整して、どのように飛べばいいのか。

 色々と分からない事が多すぎる。

 いつか飛ばないといけない場面が来るかもしれないから、少しずつ練習しないとな……


 考え事をしながら進んでいると、前方に生物の気配を感じた。

 何だか弱々しい気配だが、どんな奴なんだろうな?


 気になった俺は前に進みながらも、気配がする方に注視する。

 するとそこにいたのは、逃げていたはずの鷹が一羽。

 なんで一羽だけこんな所に、しかも地面にいるのか疑問に思っていたのだが、すぐに事情を理解できた。


 あの鷹、翼に傷がついているのだ。

 つまり、怪我によって飛べなくなってしまったから、一羽だけあそこに取り残されているということらしい。

 足手まといになるからということで、お荷物になった鷹は置き去りにされたんだろう。

 確かに自然界では食うか食われるかの世界だから、そういう鷹の選択は一理ある。

 だけどそれじゃかわいそうじゃないか。

 救える命があるのに、それを見捨てるなんてさ。


 まだあの鷹は生きている。

 だがあのまま放っておけば、いつか他の生物によって為す術なく殺されてしまうだろう。

 ……ならば俺のする事は決まっているよな。



「ひっ……!?」



 俺を見て思わず後ずさる傷ついた鷹。

 だが、傷ついた体では逃げる事はかなわない。

 俺はあっさりと鷹を取り押さえ、そして鷹の傷ついた翼にヒールをかけ始めた。



「へっ……? く、食わないのか、おれを……?」

「早まるなよ。安心しろ。俺はお前をとって食ったりなんてしないからさ」

「ど、どうしておれを助けてくれるんだ? おれは飛べない時点で死んだも同然。放っておけばよかったのに」

「お前はまだ死んでないだろ? ただ飛べないだけじゃないか。しかも俺が今治しているから、時期に飛べるようにもなるだろう」



 俺の言葉を聞いてもきょとんとする鷹。

 まあ襲われると思っていた相手からいきなり治療をされたら誰でも戸惑うわな。



「でもおれ達は通りすがりのあんたに攻撃を当ててしまって……」

「ああ、あれはな。俺が当たりに行ったんだわ」

「へっ!? そ、そうだったのか!?」



 驚きを隠せない鷹。

 自分から攻撃を当たりに行くドラゴンなんて聞いたこともないだろうし、驚くのも当然だろう。



「だから別に俺はお前達を恨んじゃいない。ただ、リスを攻撃するお前達が許せなかっただけだ」

「リス……もしかしてあんたはリス達をかばって……」

「まあ、そういう事になるな。実は俺、こうみえてもリスとちょっとした交流があるんだわ。だから黙って見ていられなくなったって訳だ」

「そ、そうなのか……って事は、リスを襲うことはすなわちあんたに敵対する事になるんだよな? ああ、どうしよう……」



 鷹は頭を抱えている。

 どうやら鷹にはリスを襲わないといけない何かの理由がありそうだな。

 ちょっと聞いてみるか。



「何か事情があるみたいだが、どうしてお前達はリスに執着するんだ? そんなにリスを食いたいのか?」

「別におれ達が食いたい訳ではないんだ。実際、おれ達はリス以外のやつを狩って生きてるし」

「そうなのか。ならば何故?」

「おれ達の住処のエリアボス、九尾の姉御の要望だからだよ。九尾の姉御には逆らえないからな」



 エリアボス?

 九尾?

 九尾って確か、九つの尾を持つキツネみたいなやつだったよな?

 なんで鷹と九尾が関係あるんだろう?

 訳が分からない。



「どうしてお前達、鷹が九尾の指示に従わないといけないんだ?」

「あんた、エリアボスを知らないのか?」

「エリアボス? 何のことだ?」

「……簡単に言えば、この地域を支配しているボスと言った所だな。そして運悪くおれ達はその補佐役に選ばれてしまった」

「補佐役に選ばれるとどうなるんだ?」

「一生をかけて、そのエリアボスの従者となる。エリアボスと従者が協力して初めて、その地域の安定が約束されるんだ」



 へぇ……

 そんな制度があったんだな。

 全く知らなかったわ。


 でもなんでそんな制度があるんだろうな?

 野生の世界なんだから、そんな制度関係なんて意味をなさない気がするんだが……

 別にエリアボスがそのエリアの生物を守る訳でもあるまいし。



「エリアボスってなんでいるんだ? 別に必要ないだろ?」

「いや、必要だ。もしエリアボスがいないとその地域には他のエリアの奴らが押し寄せてきて争いが起こる。つまり、そこは戦地となり、不毛な地と化す運命に見舞われるって事だな」



 ふうん。

 つまり、エリアボスっていうのは、その地域には強大な主がいるから、攻め込んではいけませんよという象徴みたいなものか。

 エリアボスがいるからこそ、他のエリアからの襲撃を受けずに済むと。

 今のこの状態でも全然平和な方って事なんだろうな、きっと。



「エリアボス制度を知らないなんて、あんたこの地の奴じゃないな? どこから来た?」

「うーん、一応この地の生まれではあるんだけどな。まだ生まれたばかりでよく分からないんだ」

「へっ、あんたが生まれたばかりだって? 冗談はよしてくれよ」

「本当だぞ? 俺、生まれてからたしか五日位しか経ってないからな」

「い、五日だと!? それでどうやってそんな大きな体してやがるんだ!?」



 あんまり日数経過をちゃんと数えてないから正確な日時は覚えていないが、大差はないはずだ。

 よくよく考えれば、たった五日ほどで小さい赤ちゃんトカゲが巨大なドラゴンになるって異常だよな。

 俺だって全然実感湧かねえわ。



「とにかく、お前達はエリアボスの九尾とやらの命令でリスを襲っているという事だよな?」

「そういうことになるな。そしてその要望にここ数ヶ月は応えられていないから、姉御はかなり不機嫌にはなっていて、おれ達鷹はピリピリしているのだ……」



 ここ数ヶ月。

 鷹がリス達を襲い始めた時期と重なるな。

 鷹がリスを襲う原因は九尾にあるという話はあながち嘘ではないのかもしれない。

 この話、信じてみてもいいのかもな。

 もしその話が本当なら、九尾を説得できれば鷹がリスを襲うことはなくなると。

 であれば、九尾を説得する方法を考えた方が良さそうだな。



「九尾はそもそもどうしてリスを食べたいと言いだしたんだ? 何かきっかけがあるんだろう?」

「ああ。きっかけはリスの比較的新しい死肉を姉御が食った事だな。その肉を食った姉御はそれを大層気に入り、生きているリスならどんなに美味いのかと絶えず言うようになったのさ……」



 なるほどな。

 だからリスを食べたいとひたすら言うようになったと。

 それならば……



「なあ、もしだけど、リスよりも断然美味い食べ物があったらどちらを食べたいと思う?」

「それはもちろん美味い食べ物の方―――ってまさか!?」

「ああ。リスよりも断然美味い食べ物のあてが俺にはあるんだ。それを九尾が気に入ってくれれば、お前達がリスを襲う必要はなくなるだろ? だから俺を九尾の所まで案内してくれないか?」

「……分かった。だが、まずは他のみんなと相談させてくれ。おれ一人で判断出来ることではないからな」

「ああ、それは別に構わない。よろしく頼むぞ」

「おれが仲間の所まで飛んでいくから、ついてきてくれ!」



 そう言った鷹はバサッと飛び立った。

 って、ちょっ!?

 俺には翼はついてるけど飛べないんだって!?



「おーい、待ってくれー!」



 俺はそう叫んだが、鷹が立ち止まる様子はない。

 多分距離が離れすぎて聞こえていないんだろう。


 あー、もう!?

 こりゃ頑張って飛んで追いつくしかないじゃないか。

 もうどうなっても知らないからな!?


 俺は力一杯翼で空を切ると、ブワッと空に舞い上がる。

 こうして俺の初めての空の旅が始まった。



********

五日目:残金67698B

収入:なし

支出:なし

収支;+0B

********

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ