151.蛇の長と出会いました
しばらく二人の蛇についていくと、蛇の住処らしき場所までたどり着いた。
ちなみに姿を隠すこの状態を続けていると、他の二人の姿まで隠れてしまうことになるので、幻術魔法を解くことに。
ただ、それだと俺の姿が丸見えになってしまう訳で、ちょっとした騒ぎにもなりかねない。
ということで――
「ドラゴンさんって、こんなに小さくなれるものなんだな……」
そう言いながら自分の小さなバッグを見る隊長蛇。
俺は今、隊長蛇のバッグの中へと隠れている。
サイズチェンジで数センチほどまで体を縮めて、その状態で隊長蛇のバッグに隠れる事にしたって訳だな。
そうすれば他の蛇には見つからずに蛇の集落に侵入できるって訳だ。
「そういえば長にはどうやって会うつもりなんだ? いきなり会わせてもらうなんて事はできないだろう?」
「そうだな。でも考えはある。一定時間、できるだけ邪魔者がいない状態で長と話せればいいんだよな?」
「ああ、そういう環境があれば理想なのだが……」
「それなら隊長報告会の後で設けられている、特別報告の時間にドラゴンさんが姿を現してくれればいい」
「なるほど。確かに特別報告の時間なら、見張りの人もほとんどいないから、そういう環境が作れるね」
ふーん、そういうものなのか。
よく分からないが、そういう環境を隊長蛇に作ってもらえるみたいだから、そこはお言葉に甘える事にしよう。
そのままバッグに揺られること数十分。
何やら報告みたいな言葉が周囲から聞こえ始めた。
どうやら隊長報告会とやらが始まったのかもしれないな。
他の蛇達の目もあるので、集落に入ってからは俺はずっとバッグの中でひっそりとしている。
そのため周りの状況が全く見えないので、今どういう状況なのか分からないのだ。
バッグからこっそりと様子を覗こうとしてバレたら、今までの苦労が水の泡だからな。
おっ、どうやら隊長蛇の出番が回ってきたようで、話を始めたようだ。
少し聞き耳を立ててみるか。
「今日の損害状況は、負傷者3名、死者0名でございます。集団魔法を相手から放たれましたが、何とか凌ぐことができました」
「なるほど。集団魔法を受けて、そのような軽微な被害で済んだのは大したものだ」
「はい。実はその事に関連して、後で報告を申し上げたい事がございます」
「うむ。ならば、後ほど特別報告の場にて聞こう。では続いて第6魔法小隊長、報告を――」
ふーん。
この感じだと、別途報告する場が特別報告の場という事か。
そこで俺の事を話すつもりなんだろうな、隊長蛇は。
それからもしばらく隊長報告会が続き、10分ほど経ってから、ようやく終わりを迎えたようだ。
周りからぞろぞろと移動をするような音が聞こえてくる。
「ドラゴンさん、もうそろそろ出番が来るから、もう少しだけ辛抱してくれな」
そう小声で俺に伝えてくる隊長蛇。
うん、どうやら間もなく例の特別報告が始まるようだな。
蛇達が移動する音が聞こえなくなった頃、誰かの声が聞こえてきた。
「ではこれより特別報告を始める。第5魔法小隊長。用件を伝えてみよ」
「はっ。先程の報告会でお伝えしました通り、我らには相手の集団魔法が襲い掛かろうとしておりました」
「うむ。その件に関しては確かに聞いておる。そしてそれによる被害がほぼ皆無である事も」
「はい。その上、実は3名の負傷者に関しても、集団魔法による負傷ではないので、集団魔法による被害者はゼロと言う事になります」
「……ゼロだと!? 一体どのようにして被害をそこまで出さずにしたのか申してもみよ!」
「はい。ただ、正直我々としても一体どのように被害を抑えられたのか把握できていないのです」
「把握できていない? それはまた奇妙な話ではあるな」
「そう思われるのも無理はないです。実は今回の件は、我々ではなく、協力者の方のおかげで被害をなくすことができたのです」
「ほう、果たしてその協力者とは?」
そう言葉が交わされると、場には沈黙が訪れる。
どうやらそろそろ俺の出番のようだな。
「ドラゴンさん、ちょっと出てきてもらう事になるが、大丈夫か?」
「ああ、もちろん問題ない」
小声でそうやり取りをした後、隊長蛇はバッグを開けた。
「今回の戦いで協力してくれたのは――このドラゴンさんなのです!」
その隊長蛇がそう言うと同時に、俺はバッグの中から飛び出して、近くの地面に着地した。
すると俺の目の前には体長5メートルほどはあるのではないかという巨大蛇の姿が!
「本当にこのドラゴンが助けたのか? 見た感じ、赤ん坊ドラゴンに過ぎないようだが。根拠はあるのか?」
「根拠ですか……そんなものはないですね」
俺が大蛇に向かってそう言うと、大蛇はひどく驚いたような表情をした。
まあ、いきなり言葉を話すと思わないような奴が言葉を話したら誰でも驚くわな。
「ほう、蛇語を解すとはな。全く驚かせてくれる。して、その根拠がないとは?」
「俺は姿を隠した状態で相手の集団魔法を空中で撃ち落としました。ですから証拠も残らない上に、隊長さん達には何が起こったのかは分からなかったかと」
「集団魔法を空中で撃ち落とした? そなたがか?」
「はい。その通りです」
俺がそう言うと、大蛇は突如笑いをこらえきれない様子で、ガハハと笑い始めた。
一体何かおかしい事があったのだろうか?
「おい、第5魔法小隊長。これはどういうつもりだ? 確かに蛇語を解すドラゴンは非常に珍しいが、だからといって、根拠もなしに何故こいつが救世主だと言い切れる?」
「えっ……? それは……」
「こいつが何を企んでいるのかは分からぬが、こんな得体のしれないドラゴンをここまで連れ込むとは言語道断。おい、あいつを拘束しろ」
そう大蛇が言うと、そばに控えていた二人の蛇が隊長蛇を取り押さえた。
そして隊長蛇の体をロープのようなもので拘束する。
へっ?
一体何のつもりだ、これ?
何が起きているというんだ!?
「すいません、これは一体どういう事でしょうか? 我が主様?」
「……得体のしれない奴をこの場まで連れてきた罪。後ほど死をもって償ってもらう」
自らが投げかけた疑問に対する返答に戸惑う隊長蛇。
は?
もしかしてこの流れ、隊長蛇が死罪になるっていう事なのか!?
訳が分からないんだが!?
「大蛇さん、なんでこんな事で隊長さんが死罪にならないといけないのですか?」
「部外者であるお前には分からないだろうがな、我が主様はいずれ火山を背負われる立場になられるお方だ。それほどの方の命が脅かされるような真似をした奴には死罪がふさわしいのだ」
「……お前達、本気でそんな事言ってんのか? まだ話をしっかりと聞こうともしないでさ?」
「ここまで侵入を企むほどの奴だ。ろくでもない考えを持っているに違いない。お前も今すぐに殺してやる。我が主様、ご許可を!」
大蛇の護衛蛇二人は、大蛇の許可を受けると同時に俺に対して一斉に襲い掛かり始めた!
……仕方ない。
こうなってしまった以上、背に腹は代えられないな。
敵対しないようにできるだけしてきたつもりなのだが、相手に聞く耳がないのならばどうしようもない。
聞くつもりがないのならば、聞かせるまで!
俺はサイズチェンジ、及びウェイトチェンジの発動を止め、本来の体の大きさと体重に戻す。
その時、俺のあまりの大きさの変化に二人の護衛蛇は驚いたのか、一瞬動きを止めた。
しかし、その一瞬の隙が時には命取りになるのだ。
俺は高速飛翔を使って護衛蛇の背後に一瞬で到達し、そしてグラビティテイルで反重力をかけた尻尾のなぎ払いを二人の蛇にお見舞いした。
すると二人の蛇は容赦なく壁に叩き付けられ、そのまま気絶をしたようだ。
「……お前、あくまで我に逆らうというのだな?」
「本当はそんなつもりはなかったんだけどな。だけど隊長蛇さんへの扱いを見て、気が変わった。隊長蛇さんの死罪を取り消さないのならば、力ずくでも考えを変えさせてやろう」
「クク……面白い。まさかこんな突然に強敵に出会うとはな。いいぜ、のってやる。万が一、お前が我に勝った暁には隊長の死罪は取り消してやろう。だが我が勝った場合には――死をもって償ってもらうからな!」
そう言うと同時に大蛇は俺に尻尾のなぎ払いを繰り出してきた!
早い。
だが、高速飛翔で何とか俺は大蛇のなぎ払いを避けることに成功した。
「まだまだ甘いわ! ポイズンニードル!」
「くっ、アイスニードル!」
俺の動きを先読みして放たれた大蛇の攻撃だったが、何とかアイスニードルによって攻撃を相殺しきる事に成功。
くっ……、さすがは火山のエリアボス候補。
なかなか侮れないな……。
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