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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
二章 ライフショッピング
15/357

15.トカゲを育てることにしました

「こいつ、呑気だな。外敵が近くにいるかもしれないのにこんなにスヤスヤと寝てさ」

「本当にそうね。こんな近くにみんなが恐れる凶暴なドラゴンさんがいるというのにね!」

「コクリ!? 全く、酷いなぁ……。でも確かにこのトカゲ、俺に全く気付いている様子はなかったな」

「確かにそうよね。鈍感なのかしら?」

「そういえば俺も生まれたばかりの頃は外敵の探知はほとんど出来なかったっけ」



 俺は女神ショッピングでスキルを買ったから危険を感知する事ができた。

 でもこのトカゲが女神ショッピングを使える訳がない。

 野生のベビートカゲがどういうものかは分からないが、もしかすると全く外敵を認識出来ないまましばらく生きていく事になるのかもしれない。

 ……とっても恐ろしい話だな。



「ねえ、エンラ。しばらくこの子の事を見守ってみない?」

「見守る、か……確かに面白そうだな。普通のベビートカゲがどう生きていくのか興味あるし、観察してみるか」



 俺は結局ベビートカゲらしい生活を送っていなかったからな。

 穴作って寝たり、人食い花に魔法をぶつけて倒した位だしさ。

 ベビートカゲの生活も気になるし、せっかく関わったんだから、あんまり天敵に食べられてほしくないんだよな。


 という訳で、俺とコクリのトカゲを見守る生活が始まった。



 なかなかトカゲは目を覚まさないので、暇を持て余す俺達。

 その間、俺はコクリからもらった花を植えることにした。

 まあ茎の途中から切られてあるので、そこからの成長は望めないだろうが、バッグの中で枯れてしまうよりはずっといいだろう。

 何より、植えた花を見てみんなが楽しめるのが良いよな。


 花も植え終わったので、しばらくその花をコクリと一緒に眺めて時間をつぶす。

 その間に、俺達の方に近寄ってくる三つの小さな気配を感じた。

 遠ざかるのなら分かるが、近寄ってくるなんて珍しいなと思いつつ、その気配がする方向を向いてみる。

 すると俺の目に入ってきたのは―――



「えっと……あなたは、おにぎりをくれたトカゲさん……ですよね?」



 木に隠れながらこっそりと俺の方をのぞいているのは、以前俺がおにぎりをあげた三匹のリスだった。



「ああ、そうだぞ。見た目は随分と変わってしまったけどな! またおにぎりを食いたいのか?」

「は……はい! 交換する木の実もオレ達みんな持ってきました!」

「おっ、そうなのか! ならこっちに来い。おにぎりと交換してやるぞ!」



 俺の言葉を受け、三匹のリスは恐る恐る俺の近くまでやって来た。

 いくら威圧をしていない状態とはいえ、体格差があるし、俺の見た目はやっぱり恐ろしく思われるんだろうな。



「これが交換する木の実です」

「ふむふむ、ちょっと預からせてもらうぞ」



 俺はリスから木の実を受け取った。

 そしてそれを女神ショッピングの売却アナウンスにかけてみる。



@@@@@@@@


 この”アレノスナッツ”を売却しますか?


 売却額 120B


@@@@@@@@



 おっ、やっぱり思った通り、120Bで売れるみたいだな!

 ならおにぎりと交換しても全く問題ないだろう。

 俺は女神ショッピングでおにぎりを購入して、おにぎりをリスに手渡した。



「確かにこれはアレノスナッツだな。ならこのおにぎりと交換だ」

「やった! ありがとうございます!」

「えーずるいよ! ボクの木の実も交換してぇ……じゅるり」

「トカゲさん、わたしもおにぎり欲しいよぉ……」



 他の二匹のリスとも交換をして、三匹のリス全員と交換を終えることになった。

 おにぎりと交換をしたリスは早速おにぎりにかじりつく。

 とても満足そうに食べているし、喜んでもらえて何よりだ。

 俺としても60Bの利益がもらえた訳だし、良い取引だったな。



「クピャア……」

「あっ、小さなトカゲさん。ダメだよ、これはオレのだからな。あげられないぞ!」

「ぼ、ボクのもダメだからねぇ……じゅるり」

「わたしのものも食べないでぇ……」



 あれっ!?

 いつの間にベビートカゲが起きていたんだ!?

 リスの近くまでいっておにぎりをおねだりしているみたいなんだが!?



「クピャア……」

「そ、そんなに見つめられても、ダメなものはダメなんだからな!」

「絶対あげないんだよぉ……じゅるり」

「かわいいけど、でもダメなんだよぉ……」



 リス達がたじろいでいるようだ。

 言葉とは裏腹に、明らかにどうしようか迷っているように見える。


 野生の動物にエサはやっちゃダメだからな、リス達。

 自力で食べ物をとれなくなっちゃうだろ。

 って、そんな事いったらリス達に対してもおにぎりをあげるべきじゃなかったか。

 リス達も野生の動物だしな。


 ……い、いや、交換したんだし!

 ただであげてないからきっとセーフだ、うん。

 リスと最初に出会った時は、おにぎりに興味を持つか実験しただけであって、餌付け目的じゃなかったもんね。

 ……苦しい言い訳だな、俺。 



「クピャア……」

「わ、分かったよ! ひ、一粒だけだぞ……?」

「仕方ないからボクも一粒だけぇ……」

「えっ、ならわたしも一粒あげちゃうんだよぉ……」



 あーあ、リス達、トカゲにエサをあげちゃってるよ。

 こりゃ、このトカゲ、野生の生活に戻れなくなるな。

 どうしたもんかな、これ。



「クピャ!」

「おっ、喜んでるぞ、トカゲさん! ほらっ、もう一粒食べるか?」

「ぱくぱく……うん、みんなで食べるのって楽しいよねぇ」

「トカゲさん、かわいいんだよぉ……」



 楽しそうな三匹のリスと米粒を美味しそうに食べるベビートカゲ。

 その様子を見ていると自然と笑みがこぼれるし、何だか癒されるな。

 もう今後どうするかとかどうでも良くなってきた。

 まあ、何とでもなるだろ、きっと。



「じゃあまたな、大きいトカゲさんと小さいトカゲさん! また来るからな!」

「おいしいおにぎり用意しておいてねぇ……じゅるり」

「トカゲさん、ばいばいだよぉ……」



 ベビートカゲとしばらくたわむれた後で、三匹のリスはどこかへ行ってしまった。

 三匹とも満足そうに帰っていったな。

 そしてこの場に残されたのは俺とコクリと―――



「クピャア!」



 俺の手の上にのっかっているベビートカゲだった。

 ベビートカゲは安心したようにその場でゆっくりとくつろいでいる。

 ……こいつ、完全に俺になついてやがるな。

 こりゃ、野生のベビートカゲ観察はもう無理か。



「かわいいわね、この子。これからこの子をどうするつもりなの?」

「……もう俺が責任持って育てるしかないだろ。おにぎりの味を覚えちまったみたいだしさ」

「ふふっ、エンラならそう言うと思ったわ。なら私も協力するわね」

「すまないな、コクリ。助かるよ」



 もう関わっちまったものは仕方がない。

 最後まで世話するしかないよな。

 一応薬草の葉っぱにベビートカゲを戻そうともしてみたのだが、すぐに俺の体にくっついてきたので、意味がなかった。

 こういう事があったので完全にあきらめがついたのだ。

 無理に放置してこのトカゲに餓死されたら気分が悪いもんな。


 あとこのトカゲを育てるんだったら、何か呼びやすい名前をつけてあげた方がいいよな。

 ベビートカゲと言い続けるのも何か言いにくいしさ。

 さて、どういう名前にしようか?



「せっかく育てるんだから、このトカゲに名前をつけないとな!」

「そういうものなの? まあどっちでもいいんだけど」

「名前があった方が便利だろ? 名前はそうだな―――カトカとかどうだ?」

「カトカトカという名前なの?」

「いや、カトカだ。紛らわしくてすまない」

「カトカね、分かったわ。今度からそう呼ぶことにするわね」



 だいぶ紛らわしいことになったが、とにかくこれで名前は決まったな。

 ちなみに名前の由来は”かわいい”の”か”と”トカゲ”の”トカ”から来ている。



「クピャ……」



 そう鳴くと、カトカは俺の体にしがみつきながら寝てしまった。

 本当、緊張感のない奴だよな、カトカって。

 まあ癒されるし、いいんだけどな。



********

四日目:残金60780B

収入:アレノスナッツ360B

支出:おにぎり300B

収支;+60B

********

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