表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
二章 ライフショッピング
13/357

13.見晴らしの良い丘にたどり着きました

 時計が10時59分を指している。

 俺はラストスパートをかけた。

 おかわりできないものは既に食べ尽くし、後はおかわりできるご飯とみそ汁に食らいつく俺。

 結構な量を食べ、それなりに腹も一杯になったが、貴重なお金を使ったんだ。

 ギリギリまで粘らなければ。


 そしてそんな思いで食べ進めていると、ある時フッと食器や食べ物が全て消え去ってしまった。

 時計を見れば、時刻はちょうど11時。

 どうやらこの時計の時刻は正確だったらしい。

 これからも時計は頼りにしていくことにしよう。



「ぷはぁ! 食った食った!」

「本当にすごい食べっぷりだったわね……それだけ大きな体をしていれば当然なのかもしれないけど」

「ああ、俺もこんなに食べる事になるなんてビックリだよ。これからもこの食べ放題メニューには世話になりそうだな」

「食べ放題……? ああ、そういう事なのね。どうしてエンラが延々と食べ続けられているのか不思議だったんだけど、何かしらの方法で食べ物が湧いて出てくるということでしょ?」

「まあそういう事だな。おにぎりと同じ理屈で突然現れるんだ。そうする為に本来はお金が必要なのだが、この食べ放題を使えば、最初に一定額を払ったらそれ以降はどれだけ頼もうがお金を払う必要がない。ただし、ご飯とみそ汁限定なんだけどな」

「ふうん。なら今度、ご飯というものは私もおかわりしてみようかしら。食べやすくて美味しかったし」

「みそ汁はいいのか?」

「みそ汁……あんな食べられる事を拒絶してくる食べ物なんていらないわ」



 食べられる事を拒絶って……物凄い表現だな、おいっ!?

 ただ単に熱すぎて食べられなかったというだけなんだろうに。

 まあ当人にとってはそれだけみそ汁にストレスを感じたんだろう。

 みそ汁、味はとっても美味しいんだけどな……

 今度食べる時はフウフウして冷ましたり、みそ汁を食べやすくする方法を教えてやるとするか。



「お腹もいっぱいになった事だし、ちょっと散歩しない? 景色の良い所があるんだけど、そこでゆっくりできたらなって」

「おっ、それはいいな! 是非そうしよう!」



 景色の良い所か……

 そういえばこの世界で生きてからはずっと森の中や穴の中で過ごしている事になるから、景色の見渡せる所には行った事がないな。

 一体どんな景色が俺達を待っているのか、楽しみだ。


 俺は移動し始めたコクリについていく。

 ちなみに目的地までの移動は快調に進んだ。

 行く先行く先全く生き物の姿が見当たらず、移動を妨害されようがないのだから当たり前だよな。

 これだけ歩いても全く他の生き物と遭遇さえしないのは偶然ではないだろう。

 というのも、周囲から感じられる生物の気配が俺達の側から次々と離れていくことが感じられるのだ。



「みんな、俺を避けて逃げて行っているんだろうな……」

「……で、でも、快適にお散歩出来て、気持ち良いわよ、私は!」

「いや、そんなに気遣ってくれなくてもいいんだ。それよりもみんなどうして俺を視認する前に避ける事ができるんだろうな? 感知の能力を持っているのかもしれないが、みんながそういう能力を持っているとは思えないし……」



 確かに常に命の危険が伴う野生の生物は、人間よりはるかに危機察知能力が高いのは想像がつく。

 だからといってどの生物も俺の事を目で見なくても認識できて逃げる事が出来るのはおかしくないか?

 足音もほとんどしないんだぞ、今の俺は。

 気配を感じ取るにしても、感知系スキルを取る前の俺は全く分からなかった訳だしさ。

 生物によってはその時の俺のように、感知を不得意とする奴らがいてもおかしくないはず。



「とても言いにくいんだけど……言ってもいい?」

「ん? どうしたんだ、コクリ? 言ってみてくれ」

「エンラ、あなた、周囲に殺気を放ち続けているわよ……?」



 えっ、殺気を放っているだって!?

 俺には全くそのつもりはなかったんだが……



「そんな事をしているつもりはないんだが……」

「そうなの? でもエンラから殺気を感じるのは事実よ」

「そ、そうなのか。なんだかショックだな……どうしたら殺気って止まるんだろう?」

「もしかするとだけど、有り余った魔力が大量に放出されていて、それを私達が殺気として感じているのかも。濃い魔力を浴びると、殺気を感じるかのような不快感を覚えるらしいから……」



 無意識に行われている魔力の放出が原因か。

 魔力の放出が行われているということは俺の体内に魔力が有り余っているということだろうな。

 つまり、有り余った魔力を絶えず消費し続ければ大丈夫なんじゃないだろうか?


 絶えず魔力の消費をさせる方法。

 魔力を消費する方法と言えば魔法の使用が挙げられる。

 つまり、継続的に効果が続く魔法を使えば良いのでは?

 それでちょっと検索をかけてみよう。



@@@@@@@@ 


 どの継続的に魔力を消費する魔法をお買い求めですか?

 残り所持金 60820B


おすすめ順 32件中5件表示


 オートバリア      12000000B

 オートヒール      11000000B

 自然の恵み            100B

 ライフセーフティ    17000000B

 オートクイック     18000000B


@@@@@@@@



 おおっ、何かすごいラインナップだな。

 とても魅力的なのはいいんだけど、どれも俺にとっては高嶺の花だからなぁ……


 今の俺はとりあえず魔力を消費できればそれでいいんだから、魔法の効果はあまり問わない。

 特に害をもたらすものでなければな。

 だからとりあえずおすすめされている上に安い自然の恵みとやらを買ってみようか。

 安いからもしダメな魔法でもただ使わなければいい話だし。

 それに何か周囲に良い影響を及ぼしそうな名前だもんな。



@@@@@@@@


 以下の物を購入しました。

 残り所持金 60720B


 自然の恵み   100B


@@@@@@@@



 さて、早速使ってみるか。

 とはいってもどう使えばいいのやら。

 自然の恵みという名前なんだから、とりあえず周りの自然に元気になれとでも念じればいいのか?


 よく分からない俺は周りの自然が元気になるようにと念じた。

 すると……



「あっ、エンラから殺気を感じなくなったわ!」

「おっ、本当か!? つまり、うまく魔法にして魔力を消費できたという事だな!?」



 周囲を見渡しても、周りの自然に大して変化は見られない。

 一体何なんだろうな、この自然の恵みっていう魔法は?

 効果はよく分からないが、とりあえず魔力は無事消費しているみたいで何よりだ。

 魔力を消費して俺からの魔力放出を抑えるという目的は達成できそうだしな。



 魔力の無駄な放出がなくなったからか、道を進んでいくと、時折生き物の姿が見えるようになった。

 まあ、俺を一目見た瞬間に逃げ出す事には変わりないのだが。

 でもやっぱり魔力の無駄な放出をなくした事による効果は確実にあるようだな。


 そしてそのまましばらく歩いて行くと、周囲を覆っていた木々が徐々になくなっていき、ある時、一気に視界が開けた!



「着いたわ! ここが通称”大地の丘”という所よ!」

「おおーこれは凄いな……」



 木々を抜けて俺達は見晴らしの良い丘の上に到着した。

 今までとは違って一面に草原が広がっており、吹き抜ける涼しい風も相まって爽快感があるな。


 草原には馬や羊、牛や鹿など様々な動物達の様子が見られる。

 地球の動物とほとんど似た姿をしている者、だいぶ姿が異なる者などがいるようだ。

 例えばあそこに見える馬は体中に雷をまとっていて、全身黄色だし、明らかに地球の馬とは異なる。

 俺と同じように進化して魔物になったような存在なんだろう、きっと。


 あと気になるのは、遠くにうっすらと見える建物の存在だ。

 遠くてはっきりとは見えないが、明らかに自然にできたものとは言い難い、その形。

 木造の家とでもいうべきだろうか。

 とにかく、そんな家が密集しているように見える所が遠くに見えるのだ。

 あそこはきっと人間の町なんだろう。


 でも今の俺は近づかない方が良さそうだ。

 ドラゴンって大体のゲームでもそうだが、討伐される対象だもんな。

 分かり合えることに越したことはないのだが、あそこの町が人間達にとってどういう位置づけにあるのか、どういう関係性があるのか全く分からない。

 例えあそこの町の人と仲良くなれたとしても、他の町や国から攻撃を受けるなんてことになるのはまっぴらだ。

 不用意に近付かない方が良いのは間違いないだろう。



********

四日目:残金60720B

収入:なし

支出:自然の恵み100B

収支:ー100B

********

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ