113.スナハからお土産をもらいました
スナハは空にある入口から地面に降り立つと、足で掴んでいる獲物を地面に置いた。
どうやらその獲物は巨大なのっぺりとした顔をしたトカゲのようだ!
見た感じだと、もうトカゲの息は絶えている。
……トカゲ?
これを食べろというのか?
トカゲを食べる事にも驚きだが、これって共食いにならないか?
「なあ、スナハさん。もしかしてこれを食べるのか?」
「ああ、そうだよ。このトカゲ、見た目に反して結構食べ応えがあって美味いんだよー! あれっ、その反応はもしかして、エンラさんはトカゲを食べた事ないのかい?」
「……えっと、元々俺はトカゲだったんですけど」
「ええっ!? そうだったのかい!? てっきりエンラさんは最初からドラゴンなんだと思っていたよぉ!? あぁ、どうしよう、アタイのバカ!」
そう言うとスナハは壁の方に近付いて、壁にゴンッゴンッと頭をぶつけ始めた。
おいおい、何もそこまで責めなくても……
「スナハさん、そんなに自分を傷つけるのはやめなって! 俺、別に怒ったりなんてしてないから! ただ食べるのはどうなのかなと思ってさ!」
「うっ……そうなのかい? こんな失礼なアタイを許してくれるのかい、エンラさん?」
「ああ、許すよ。というか元々怒ってないしさ。だからそんなに自分を責めるのはやめよう、な?」
俺のその言葉を聞くと、涙目になりながらもスナハは俺達の方に戻ってきた。
シロカもシロカだが、スナハもそれに負けず劣らず濃いキャラしてるよな。
エリアボスにはまともな奴はいないんだろうか?
食に目がないキュビカ。
戦闘狂の水刃。
二面性のあるシロカ。
そして過剰なまでに自分を責めるスナハ。
……うん、やっぱり濃いキャラしてるわ。
スナハが落ち着いた所で、とりあえずスナハが狩ってきたトカゲを食べる事に。
何度もスナハに本当に大丈夫かと心配されたが、別にそんなに心配されなくてもいいんだけどな。
だって俺にはトカゲに対してそんなに仲間意識を持っていないもん。
生まれた時から一人だったし、俺以外に知っているトカゲといえばカトカのみ。
トカゲとして過ごした期間も少ないから、そんなに食べる事自体に抵抗はないのだ。
カトカを食べろと言われたら断固として拒否するが、そういう訳でもないからな。
問題なのは味だ。
トカゲなんて食べた事ないから、正直味は想像がつかないんだよな。
果たしてどうなることやら。
スナハがトカゲをついばんで最初に食べ始めている。
そしてそれを見たコクリやキュビカも食べ始めていた。
俺もみんなと同じようにトカゲを食べてみると――――意外と美味い。
もちろん味付けはされてないから味気ないものにはなるのだが、食感は牛肉を食べている感覚とさほど変わらないのだ。
トカゲってそんなに美味かったっけ……?
「このトカゲ美味いな。もしかしてトカゲってみんなそんなに美味いものなのか?」
「いや、このデザートリザードが美味いだけだろう。他のトカゲ類も食べてはみたが、どれもいまいちだった。コイツだけが特別なんだろう」
へぇ、そういうものなのか。
デザートという名前の割には全然甘くないからデザートにならないけどな。
まあ、食べたら甘さを感じる動物なんてまず存在しないか、普通。
それからもデザートリザードを食べ続けて、そして完食。
ごちそうさまでした。
「昼食ありがとな。新しい食感が楽しめて良かったよ。あまり長居するのもアレだし、そろそろ俺は自分の家に帰るとするよ」
「おや、もう帰っちゃうのかい? それならちょっと待ってて。まだ魔物討伐のお礼が出来ていないからさ!」
「ああ、そういえばそうだったな。それで何かくれるのか?」
「もちろん。とっておきのものをプレゼントするよ! ちょっと下がっててもらってもいいかい?」
下がる?
なんで動く必要があるのかよく分からないが、とりあえずスナハの言う通りに動くことに。
それからもうちょっと細かく位置の移動を指示されたので、言われるがままに俺達は移動した。
「うん、これでいい。ちょっとそのままの位置でじっとしておいてくれよ!」
そうスナハが言うと、地面に羽根をつけ、ぶつぶつと何かを言い始めた。
すると茶色の巨大な魔法陣が床に出現し、そして俺やコクリ、キュビカさんの足元にも小型の魔法陣が出現する!?
「あっ、攻撃する訳じゃないんだ。だからそのままでお願いね!」
慌てる俺達を見て、そう一言だけ言い、またぶつぶつと唱え始めるスナハ。
まあお礼をするといってから攻撃するなんて真似をするとは思えないし、ここはスナハの言う通りじっとしていることにした。
しばらくその状態が続き、経つことおよそ二十分。
「待たせたね! もう楽にしていいよ!」
どうやら謎の儀式みたいなものは終わったようだ。
緊張感漂う状態から解放された俺達はふうと息をついてその場に横になる。
一体スナハはこの長時間何をやっていたんだろう?
何やら三つの砂の塊のようなものが用意されているようだが。
「スナハさん、何を作っていたんだ?」
「ふふっ、それは見てのお楽しみだよ。ほらっ、そろそろできそうだ」
スナハがそう言うと、三つの砂の塊はサーッと一部の砂が床に落ち始める。
床に流れる砂がある一方で、そのまま塊になったままの砂もあるようだ。
そして砂が一通り落ちきった時、そこに現れたのは――
「えっ、これってもしかして俺達の模型なのか?」
「ああ、そうさ。アタイが全力で作ったエンラさん達の模型。それがアタイからのプレゼントだよ!」
スナハの前に置かれた三つの塊は、俺の姿、コクリの姿、キュビカの姿をした砂の模型に変わっていた。
かなり精巧に作られているようで、俺の翼の質感、コクリやキュビカの顔、また凹凸などもしっかりと再現されているようだ。
「すごい模型だな、これ。細かい所まで再現されている」
「そりゃそうだよ。何て言っても魔法でエンラさん達の体を読み取って、それを砂で再現したものだからね。模型の正確性には自信があるよ!」
へえ。
これっていわゆる魔法版3Dプリンターってやつかな?
俺は前の世界では実物を見た事はないけど。
でも本当にすごいな、この模型。
実によくできてる。
サイズは実物の二十分の一ほどといった所か。
人間の頃の俺を写した模型だったら絶対にいらないが、ドラゴンになった今の俺の模型はなかなか様になっているじゃないか。
鏡がある訳でもないから、自分の全体像を自分の目で見たことがないし、自分の模型だって言われてもピンとこない所があるんだよな。
だからドラゴンの自分を写した模型を見ても、ただのドラゴンの模型だとしか思えないのだ。
「ありがとな、スナハさん。これ、持って帰ってもいいんだよな?」
「ああ、もちろんだ。アタイの渾身の力作、是非家に飾ってくれると嬉しいよ」
「そうさせてもらうよ。まさかこういうものをもらえるとは思わなかった。ありがとなスナハさん、大事にするよ!」
俺は女神倉庫に砂の模型を収納してから、自分の家へと帰ることにした。
なかなか良いお土産ができたもんだな、これ。
家に飾ってゆっくりと模型の鑑賞でもすることにしようかな。
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