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ドラゴンになってものんびり過ごしたい~動物達と気ままにスローライフ~  作者: かいものトカゲ
一章 サバイバルショッピング
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10.サハギンと接触しました

 コクリの案内によって、俺はサハギンがいると思われる所の近くまで来た。

 ザーッと川が流れるような音も聞こえてくる。


 音がする方へ歩いて行くと、木々の隙間から川を遠目に見る事ができた。



「そろそろ危ないわね……サハギンは水魔法で攻撃してくるから気を付けて」

「えっ? まだ川までは距離があると思うんだが……」

「そうね。でもこの辺りの木には所々に切り傷があるでしょ? あれはサハギンの魔法による傷跡なのよ」



 確かに周りを見渡すと、あちこちの木に傷が見受けられる。

 それはつまり、かつてこの付近でサハギンの攻撃があった事を示しているのだろう。



「……本当に危ないんだな。ただ、ここじゃまだ川まで距離があり過ぎる。もう少し近付かないと話し合いもできそうにないな」

「そうよね。だったらくれぐれも用心すること。ヤツら、急に攻撃してくる事も珍しくないみたいだから……」



 いきなり攻撃してくる、か。

 何でそんな事をしてくるんだろうな?

 強者ゆえの傲慢ってやつだろうか?

 それで話を聞いてくれないのなら、話し合いは厳しそうだよな。

 ともかく会ってみるしかないんだが。


 川のすぐそばの木に隠れて様子を伺う。

 辺りは川の流れる音だけが聞こえるだけで、何かが動くような音は聞こえない。

 本当にこの川にサハギンなどいるんだろうか?

 そう疑問に思い始めたその時だった!



「痛っ!?」

「どうした、コクリ!?」

「足に傷が……この傷はサハギンの魔法によるものね。エンラも気を付けて!」



 俺は一層警戒を強めて周囲を見渡す。

 すると川のある方向にはごくわずかではあるが気配が感じられる。

 でもツインヘッドの時のような強大な気配は感じないし、一体どうなっているんだろうか?


 俺はコクリにヒールをかけて回復させながら、動きがあるのを待った。

 するとシビレを切らしたのか、突如川から何かが出てくる音がし、そして塊になった気配が近づいて来る!



「オオカミめ。こそこそ隠れやがって全く面倒をかけさせてくれる……」

「さっさと終わらせるぞ。ここは二手に分かれて移動だ。お前達は左から回れ。オレ達は右から行く」

「へいへい。くれぐれもヘマはするなよ。この前のようにオオカミにしてやられるのは勘弁だからな」

「今回の相手はたった一匹だぞ。カモじゃねえか」



 うわぁ……相手は俺達を狩りの獲物としかみていないみたいだな。

 こりゃ話を聞いてくれるかどうかとかそんな問題じゃなさそうだ。



「コクリ、話し合いは無理そうだ。一旦退こう」

「ええ、分かったわ」



 俺とコクリはそう言葉を交わし、一気に川から逆方向へと走り去った!



「お、おい、逃げたぞ!?」

「逃がすな、追えー!!」



 ドタドタドタと走ってくるサハギン達。

 もはや気配を隠す様子もない。

 ちらりと後ろを振り向くと、そこには魚のような頭と小人のような体をした半魚人の群れが追ってくる様子が見えたのだ!

 そしてそんな姿をしたサハギン達が一斉に俺たちに向かって巨大な泡のようなものを投げつけてくる!



「エンラ、あれに当たってはダメ! あれは動きを鈍らせる効果があるヘビィシャボンという魔法なの。当たったら一巻の終わりよ!」

「そ、そうは言っても……」



 泡はそこら中に放たれている。

 複数体のサハギンが一斉に放ってくるので、俺達を包囲するように確実に泡が押し寄せてくるのだ!

 コクリは素早い動きによって泡の進行スピードを上回る速度で逃げる事が出来ている。

 一方俺は、コクリのスピードに全くついていくことが出来ていない。

 そして俺は今まさに押し寄せている泡に捕まろうとしていた。


 このままではまずい。

 何とかしなくては。


 俺は泡から逃げるのではなく、泡にファイアを当てて打ち消す事にした。

 振り返って放った俺のファイアは泡に命中し、泡を吹き消す。

 だが、それ以上の泡が押し寄せてきて、俺は為す術なく泡に取り込まれてしまった!



「おっ、なんかトカゲが捕まったぞ?」

「トカゲなんていたんだな。気付かなかったわ」

「へへっ、せっかくだし、サクッとやっちまいますか!」



 げっ、まずい。

 こいつら、俺を殺す気じゃないか!?

 何とかしてここの泡から抜け出さなくては!


 だが、どんなに必死にもがいても泡はさらに絡みつくばかりでビクともしない。

 そしてもたついている間に周りをサハギン達に囲まれてしまう。



「お、お前達はなんでこんな事をするんだ……?」



 俺はサハギン達に慈悲の心がある事に賭けて話しかけることにした。

 だが返ってきた反応は―――



「ははっ、このトカゲ、喋ってやがる!」

「どんな小細工使ってんだ? 本当目障りだな、こいつ!」

「さっさとやっちまおうぜ!」



 駄目だ。

 薄々気付いてはいたが、やはり話し合いになりそうもない。

 こんな奴らにやられて死ぬのか、俺は。

 なんか情けないな……



 後悔の念を感じつつも、迫り来る水魔法が自らに当たるのを待つ。

 だが、その水の刃は俺に届く事はなかった。



「させないっ!!」

「こ、コクリッ!?」



 水の刃と俺の間にはコクリが立ち塞がり、そしてコクリが全ての水の刃を受け、遠くに吹き飛ばされて倒れたのだ……



「こ、コクリィィィー!?」



 コクリはあの複数体のサハギンが放った魔法攻撃を一身に受けてしまった。

 ダメージは相当なはず……

 早く治さなくては。



「へへっ、なんかオオカミが飛び込んで来たぞ! ラッキーだな! というか間抜けか!」

「普通あんな所に飛び込むかっつーの! アホじゃねえの!?」



 ブチンッ……

 この時、俺の心の中にある何かの堤防が崩れ落ちた。

 命を賭して助けてくれたコクリ。

 それに対して、そのコクリを傷つけただけでなく、挙句の果てには勇敢なコクリを馬鹿にするサハギン。

 俺は我慢の限界だった。


 ふとみると、辺り一面が炎で覆われていた。

 そしてその炎の中には真っ黒に燃え焦げた魚の破片があちこちに散乱している。

 魔法の火は燃え広がらないにも関わらず、辺り一面炎に包まれているという事からして、いかに激しい炎が使われたか想像できるだろう。

 そんな風景を背に、倒れていたオオカミを背負って俺はどこかへ移動しているようだった。



 ハッと意識を取り戻した時には目の前にひどい傷を負ったオオカミ、コクリが倒れている様子が見えた。

 俺は急いでヒールを使い、コクリを治療する。

 コクリの傷は酷かったが、俺が頑張って治療を続けたおかげで、コクリは何とか一命を取り留めた。

 その後も治療を続けた結果、出血を完全に抑える事ができ、コクリを生活に支障なさそうな程まで回復させることが出来た。


 一段落ついた所で俺は先程の事を思い返していた。

 一面の炎、そして真っ黒に焼け焦げていた魚の破片……

 どうやら俺はサハギンを皆殺しにしてしまったらしい。


 その間の記憶はあまりない。

 だが、サハギンに襲われていたはずの俺が無事であること、それにコクリが傷付いていた事からして、先程の事は夢ではないだろう。


 強き者は生き残り、弱き者は死に絶える。

 それが弱肉強食の世界。

 今回は俺がたまたま強者だったからサハギンに勝つ事が出来た。

 あのまま俺もコクリも死んでしまう結末だってあったのだ。

 今回の弱者がただサハギンだったというだけなのだ。


 ……でもなんか嫌なんだよな。

 サハギンがどうしてあんな事をしていたのか。

 結局聞けずじまいだった。

 それもやはり俺に力がないせいなのかもしれないな。

 終始なめられていて、話すらさせてもらえなかった。


 力が欲しい。

 コクリを守る力。

 サハギンをはじめ、他の生物と対等に話ができるような力が。


 中途半端な力では今回のようにあまり良くない結末になってしまうだろう。

 だからこそ、俺は力が欲しい。

 みんなを守るための圧倒的な力。

 俺の望む世界、みんなが分かり合い、理解し合える世界にするための力が。


 ……なんだか疲れて眠くなってきた。

 それに体がなんだかムズムズする。

 これって進化の予兆だろうか。

 とにかく気分も良くないし、早い所寝ることにしようかな。


 俺は安全な大穴を購入する。

 そしてコクリを大穴に連れ込もうとしたが、緑色の結界のような膜に弾かれて俺しか入れない。

 仕方ないので俺は一人で大穴の中で眠ることにした。


 周囲に強い気配も感じないからコクリをこの場に置いておいても大丈夫だろう。

 怪我が治ったコクリなら、危険を感じたら一人でも逃げ出せるだろうし。

 下手に俺がコクリと一緒にいて足手まといになる事だけは避けたいからな。


 こうして俺は安全な大穴に入ると、安心してすぐに眠り込んでしまった。



********

三日目:残金2490B

収入:なし

支出:安全な大穴30B

収支:ー30B

********

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