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2014年/短編まとめ

化物恋愛論

作者: 文崎 美生

「人間は嫌いよ」


彼女はいつも寂しそうなのだ。


同属嫌悪、彼女は人嫌い。


綺麗な眉の形を歪めている。


嫌い嫌い嫌い、大嫌い。


彼女は自分すらも嫌いなのだ。


「全部要らない、皆嫌い」


肩くらいに切りそろえられた黒髪を乱しながら、彼女は鬱陶しそうに告げる。


それが彼女の叫びだから。


黒い深い闇の中で、薄い笑みを湛えたのその顔は美しく歪んでいた。


死んじゃえばいいのに、と小さく呟く。


澱んだ瞳は感情を移すことなく反射する。


世界から人が消えれば幸せだと彼女は笑う。


自分も消えられると嬉々として言い自らの体を抱くのだ。


恐ろしいくらいに美しく、純粋なくらいに狂気的な彼女。


「でもね、アナタだけは愛してる」


クスクス笑いながら告げられる言葉。


俺も人間なんだけどなぁ、と擦り寄ってきた彼女の頭を撫でてやる。


サラサラの髪はひどく指通りが良かった。


感情のない澱んだ瞳に灯る一筋の光。


爛々と輝くそれは俺を殺すもの。


俺が化物みたいだ、と笑うと彼女は笑顔を消し去った。


ひどく傷ついたような顔をする。


整った顔を歪めて俺に縋りつく彼女。


愛してる愛してる愛してる…壊したいくらいに。


彼女の愛は異常だ。


壊したい壊したい壊したい…愛してるから。


そして俺が化物みたいなのではなく、彼女こそが人間の皮を被った化物なのだ。


そして俺はその化物に毒された人間。


毒された俺ももう、化物なのかもしれない。


彼女は人を嫌う。


それは自分が人間の皮を被っているから。


化物である自分を人間は認めようとしないから。


俺は人間でありながらその化物に魅せられたんだ。


毒された人間。


堕ちた先は奈落の底。


戻れない。


「俺も、愛してるよ」


彼女の額にキスを落とすと彼女は小さく吐息を漏らす。


そして彼女は俺のこめかみにキスを落とす。


首に絡みつく彼女の腕は冷たい。


愛を囁く化物、か。


俺は自嘲気味に笑う。


彼女はそれには気付かない。


俺も大概、化物だったのかもしれない。


化物同士、狂気じみた愛を紡ごう。


愛し合えるのは互いを人間と認識していないから。

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