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冬の章・2話



「レイン姉様、お荷物がとっても沢山届きました!!」


コンコンと控えめなノックと共にレインの執務室のドアから顔を出したクリスは、挨拶の後そう言って影の民達が運び込んだ大量の荷物をレインに見せた



領主交代を間近に控え、かつ、秋にあった塩虫対策の礼のようだと桐藍が一礼し伝えるとレインは苦笑してその荷の山を見る



「あら本当。凄いわねぇ。



クリス、疲れているところ本当に申し訳ないんだけれど、桐藍と花蓮と荷解きして中を確認してくれる??



華南はその荷の中身と送り主を紙に控えていってくれるかしら??」



「全然疲れていませんので、大丈夫ですよ!!お任せください!!」



「あら、頼もしいわクリス」



身長も伸び、まだまだ少年ではあるが随分頼もしくなったとレインは目を細める



「(子供の成長は早いわねぇ・・・)」



祖母心で弟の成長を喜びつつ、レインは領主交代の儀の出欠の確認をしていく



「やはり、注目の的だなレイン。



東は蓮から北はアベル南はカラクサ、大中小様々な国から出席の返事が来ているじゃないか」



「あら兄様。クリスといい、休憩ですの?」



クリスに続いて物音を立てず入って来たキリクは、レインの確認する文の差出人を見て感心したように声を上げた



レインはキリクの格好が訓練服であるのに気付き首を傾げる



「今は交代の儀の為の警備訓練をしているんだが、雪が降ってきてな。



朝からやって身体も冷えたから、今日は止めにしたんだよ。



病気になるような軟な奴はいないが、寒冷地域だと雪が結構降っているだろうからな。



早めに解散させた。



雪掻きの為には体力を多分に残さなきゃならんしな。



薪と温石をそれぞれ持たせたぞ」



「あらあら。まあこの辺りは雪も多少マシですけど、寒冷地域は凄まじく積もりますものね。



今年はまだ風邪の患者はいないけれど、これから寒くなるにつれて流行ってくるし、温石は領民の数も増えた分、沢山必要ね」



「当然、もうそれなりの数を準備しているんだろ?」



「ええ、当然ね」



温石というのは、アベルから電光石と同じく輸入している魔石である



名の通り温かい石で、薪や石炭のように燃やす事なくその場にあるだけで一定の広さを暖める優れものだ


・・・ただし、太陽光を吸収し夜間に発光することで半永久的に使える電光石とは異なり、温石は半年ほどしか温かさがもたない



温かさを失った温石はアベルに戻され再び力を宿しリサイクルされるのだ・・・



「寒冷地域にはひとまずの量を秋から順次配っているわ」



「流石、毎年の事ながら準備万端だ」



「毎年だからこそ、ね。



慣れたものだから普段より多い仕事でもこなせるのよ」



ふふふ、と笑ったレインの頭を、キリクは目を細めて不意に撫でた



「あら」



「ははは、珍しく驚いた顔を見れた。



頑張っている妹を少しでも労わってやろうかな、と思ってね。



むしろ俺がイイモノ見たな。



じゃ、代わりになんか飲み物でも持ってくるか。何がいい?」



「・・・有難う兄様。緑茶をお願いできる?」



「承知した。クリスは何が良い??」



「ボクも緑茶がいいですー!」



笑いながら荷解きを頑張るクリスに聞いたキリクは、はーいと元気よく手を挙げたクリスの回答に渋いな、と笑うと、頷き部屋を後にした



「レイン様、頬が赤くなって御座いますヨ」



「・・・不意打ちには弱いわぁ」



桐藍の微笑み混じりの指摘にレインは頬を赤く染めつつくすくす笑った



「さ、兄様がお茶を持って来て下さったら休憩するからもう一頑張りしましょうか」



「はい!!


・・・あ、姉様」



「うん??どうしたのクリス」



「赤龍様から、お手紙が届いていますよ」



「赤龍様から??」



荷物に紛れていたシンプルな封筒をクリスは目を輝かせながらレインに渡す



仕事の手を止め、丁寧に封をきったレインは、文を取り出し、最初から最後までしっかり見て、目を丸くした



「なんて書いてあるんですか!!??」



「あら・・・」



「姉様??」



「ふふ、近いうちにウチにお越し下さるそうよ。



態々、その手紙を下さったみたい」



「わぁ!!本当ですか!!」



嬉しそうに瞳を輝かせたクリスにレインも微笑む



「(こういう年相応なところがやっぱり可愛いのよね。



それにしても赤龍様はどういう御用かしら??)」



内心で首を傾げたレインは、それでも秋の領主会議以来久しぶりに会うことを素直に喜んだ



「返事を書いて、すぐ琥珀に運んでもらおうわ」



「ボク、その日は赤龍様にご挨拶をしても良いでしょうか?」



「きっと、喜んで下さると思うわ。きちんとご挨拶なさい」



「はい!」



にっこり笑うクリスに、レインは微笑んで赤龍宛ての手紙を書き終えると、すぐ近くの止まり木で待つ琥珀の脚に文を括り付ける



「龍山の赤龍様まで、お願いできる?」



レインの言葉に任せろ!とその指を甘噛みした琥珀は、猛スピードで飛んで行ったのだった



「レインー、クリスー、茶が入ったぞ」

キリクの言葉に、レインとクリスは顔を見合わせ笑って返事をしたのだった














「青龍、青龍」



「あら、赤龍どうしたの?ソワソワして。


あ、レインから返事が返ってきたの??」



贈り物をどうしようかと悩む赤龍に、ひとまずレインに会って来たら?と提案したのは青龍だった



緊急の用事や公務以外は春の祭りでしか会っていないのだ



普段のレインを知る事も、レインの好みを知るチャンスだと力説した青龍に、アメリアや黄龍は確かにそうだと頷き三人に背を押される形でレインに手紙を送った



「あ、あぁ。レインからすぐに返事が返ってきた。



もし良ければ来週の頭にいらっしゃいませんか?と」



「あら、良いじゃない。じゃあ、完全に私用で行く事を文に書いたのよね?」



「ああ。公務ではなく、純粋に私用だと」



「なら!」



「!?」



「早速訪問の衣装を見繕いましょう!!」



勢いよく言う青龍に、赤龍はタジタジになる



「は、早くないか・・・?」


「何言ってるの!!



早いうちに準備しておかないと、直前で慌てるなんて論外よ論外」



「わ、わかった。そうなのか・・・」



コクコクと頷いた赤龍に、青龍はそうなのよ!と笑って、行くわよ!と赤龍の手を引いた



「ど、どこに」



「決まってるじゃない。まずは赤龍の宮の衣裳部屋!



そこになければ、新調よ!」



「(目が怖いぞ青龍・・・)」



赤龍が頬を引きつらせても関係ない・・・むしろ気付いていない





千年単位の付き合いのある同胞が、赤龍に対し強引に接したのは初めてだった

青龍は恋愛ごとになると肉食女子になります。それで番をゲットしたという裏話があったり無かったり・・・←。


強引に接したのが初めて、というのはそもそも赤龍が頑なだったせいで強引にする以前の話だったんですよね・・・。青龍、恋話にテンションマックスです。

初恋を実らせるために、頑張ってサポートしてくれますw

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